本論に戻ろう。
イエスの夢の言葉(約束)にもどって、その解読を続けよう。
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「(Ⅰ)「諸君がわたしの言葉に留まり、(II)わたしの言葉が諸君の内に留まるなら、(III)求めるものはすべて与えられます」
(ヨハネによる福音書、15章7節)
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今回は(III)だ。
これは、(I)(II)が十分になれば、オートマチックに成るはずのものだ。
だが、ほとんどの場面で、これが現になっていないことを、われわれは観察してきている。
その結果、われわれは従来、この夢の約束は忘れることにしてきた。
だが、いま筆者はその境地から脱却せねばならない。
なんとしても、聖書の中にウツ病打破の論理を見出さねばならぬ。
こういう実践姿勢を強く抱いていたら、不思議に、(III)がオートマチックに実現しない理由を探す意欲が湧いてきた。
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やってみる。
問題は(I)と(II)以外にない。
そこでこのあたりに再びもどろう。
(I)は「イエスの言葉(ワールド)の中に住まう」だった。
(II)は「そのイエスの言葉が住まった人の意識のなかに住まう」だった。
おそらく、この中に、(III)に繋がっていかない原因が潜んでいるはずだ。
これを改めて吟味してみよう。
<「主の祈り」に核を予感した>
(I)については、筆者は~イエスの言葉(聖句)が極めて多いので~核とする聖句を探した。
そしていわゆる「主の祈り」にその核を予感した。
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イエスは「祈り方」を教える前に次のような趣旨を述べている。
~創造神は諸君の求めているものなどすべてわかっている。だから、それらをクドクド祈るな。ただ、これだけ祈れ~と。
そこまで言って教えたのが「主の祈り」だから、ともかくこれはイエスの言葉の中核とみるのが妥当だろう、とした。
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その祈りは「御国(天国)を来たらせてください(地上の私の周りに)」に始まった。
それに続いたのは、実質的に「御国が来れば次の三つが地上に実現します」という宣言だった。
・・・すなわち(御国の空間が来れば)~
~御心が天になっているように、地にも実現します。具体的には・・・
~①私たちに日常の糧が与えられます。
~②我らの罪は許され、我らも私たちに罪を犯すものを許せるようになります。
~③我らは試みに会わせられることはなく、すでに悪に誘い込まれているものは悪魔より救い出されます。
~だった。
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先回には、ここまで解読した。
だが、今あらためてみると、この三つにも共通して存在している基盤があるような予感が湧いてくる。
それは「平安」だ。英語でいうpeaceだ。
<経済成長による糧と天からの糧>
理由はたとえば①の日常の糧についてみると、こうだ~。
いまわれわれ日本人は、経済成長のおかげで上から解放されたように見える。
だが物質世界に生きているわれわれには、日常の糧が得られない可能性は常にある。
あるとき自分の所得がなくなることもあろう。飢饉も起きうる。
地上の物質世界での供給に頼って生きているわれわれには、日々の糧について不安は尽きない。不安の源はなくならない。
<「人の子」イエスが見せた「天からの糧」>
ところが、日々の糧が得られなくなったとき、波動が物質化してそれが出現するようになっていたらどうか。
イエスはそれをこの地上で実際に示した。
5,000人分の魚とパンを出現させて示した。
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量子論的にいうと、天国には創造の(周波数を持った)エネルギー波動(被造されたエネルギーではない)が満ちている。
御国(の性質を持った空気)が人の周囲にやってくると、このエネルギーが、波動を物質化する。
こうして、結果的に、望む物質が出現し与えられる。
こういう、地上を越えた天の力が、御国が来てくれたら、糧は常時与えられる。
これが「天からの糧」だ。
こういう信頼の中に住まっていたら我々の心理はどうなるか。
いまだかつて体験しなかったような深い安堵と平安に満たされているだろう。
<地上での物質意識による平安>
最近話題になっている日産のゴーン元会長の行動も、じつは、この平安の稀薄さで説明できる。
彼は年間何十億もの報酬を得ながら、なぜ、さらにあくなく十億単位のカネを求め続けるのか。
聞くところでは、貧しい者への寄付をしている気配もない。
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人間は豊かな貴族に生まれても、意識がこの物質世界にある限り、「食べられなくなる」という不安は、ゼロにならない。
そしてその不安は、成人するとともに「人間死んでおしまいかも」という恐れと混合する。
それはさらに他の恐れ(人間関係などでの)とも混合して、渾然一体とした「安息不全」の「恐れ」の意識体になる。
<ゴーン元会長の平安不全>
ゴーンさん生い立ちは貧しかった、という。日々の食べ物に事欠く貧しさだった。
そういうなかで育つと、食べられなくなることへの不安(恐怖心)は一層強くなると推定できる。
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だが、その不安は地上の物質的糧で生きる人間には基本的に内在する。
ゴーンさんの場合、それが比較的強かったということにすぎない。
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その根底的恐怖が、ルノー、日産からの所得が百億単位で蓄積されても、消滅しきらないのだ。
これが昨今のゴーン容疑者の心理を理解する鍵だ。
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彼は金銭感覚が飛び抜けて鋭く生まれついていたので、経営実践も天才的なものがあった。
だが同時にその感受性は、彼に、常人を遙かに超えた強さ、深さの「日ごとの糧」への不安をも形成しただろう。
<究極の平安体験者の涙>
実はそういう心理実体は、天国への信頼から来る完全平安、究極の平安という対極理念を知って、はじめて感知できるものだ。
筆者はこの平安、安堵感を体験した人の証言を一度ならず聞いている。
それは言葉では「もの凄い平安」としか表現できない。
むしろ、証言する人の姿の方が、それをよく表現している。
彼らはその静謐と愛に満ちた平安の体験を思い出して感動し、涙して語る
ついでながら、筆者も、その平安を一瞬体験したことがある。
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ともあれ、この平安を知った分析者には、ゴーンさんの平安の稀薄さが識別できる。
平安、安息の話はもう少し続けよう。