Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

『藤田嗣治-「異邦人」の生涯』

2014年08月02日 22時30分01秒 | 読書
 本日の講座「旬なアートで楽しむ美術鑑賞 西洋美術編」の講師の三沢恵子氏から、『藤田嗣治-「異邦人」の生涯』(近藤史人、講談社文庫)、『腕一本・巴里の横顔 藤田嗣治エッセイ選』(近藤史人、講談社文芸文庫)の2冊を紹介してもらった。

 前回の講座の時、箱根のポーラ美術館で開催されている「モディリアーニを探して」展の解説をしてもらった。最後に私が「藤田嗣治はモディリアーニと交流があったが、何を学んだのか?」という質問をしたとき、このふたつの本の紹介を約束してくれていた。約束を忘れず早速正確なところを教えてもらい感謝である。

 早速これを求めてみたいと思っている。

 実は田淵安一は1968年に藤田嗣治をパリで看取っている。このことは昨日までの田淵安一の回顧展の感想で触れようと思っていたが、そこまで力量が無くて触れなかった。当初は題名は「フジタを看取った田淵安一」にしようと思ったが、それでは田淵安一という画家の個性を否定してしまうので、止めた。しかし田淵がフジタから学んだものは大きいと思う。同時にフジタが西洋から何を受容したのか、受容しなかったのかというのはとても大切な視点だと思っている。ただしこの本を読んだからといって、私が理解できるかどうかはまた別問題である。

 フジタがパリで異邦人としてその生涯を終えたといっていいか、私は今のところわからないが、少なくともフジタを語るときに「異邦人」ということは避けて通れない。田淵安一についても避けては通れないとも思っている。
 この2つの著作に期待してみようと思う。

ボストン美術館「華麗なるジャポニズム展」

2014年08月02日 21時53分41秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等
      

 本日は15時30分からの講座の前に世田谷美術館までおもむき「ボストン美術館華麗なるジャポニズム展」を見てきた。
 夏休みの土曜日ということで学生が多いかと思ったが、意外と私と同じような年齢の夫婦連れが多かった。子供は未就学児童が数人。しかしそれなりの人出であった。
 「ジャポニズム」そのものを総体として扱おうという企画はこれまでもあったのかもしれないが、私は初めての経験である。
 このブログでも触れて少しは勉強したつもりだが、まだまだ分からないこと、これもジャポニズムだったのか、というのはいろいろある。今年に入って神奈川県立歴史博物館で宮川香山の陶磁器の展覧会について触れたが、あれも日本の工芸品がもてはやされた時期のものである。今回はヨーロッパで清算されたり、作られた工芸品・美術品に焦点が当てられている。
 私が今回新たに知ったこととしては、「雪の描写」というものが浮世絵の影響といえるという指摘があったことだ。俯瞰した視点、手前のものの拡大による遠近法、樹木による画面分割‥技法上の新しい要素が貪欲に吸収されていたことが十分に理解できる展示である。
 ボストン美術館に所蔵されている浮世絵の保存状態の良さ、ならびに鮮明な発色に驚いた。東海道五拾参次、富嶽三十六景、名所江戸百景等々、これまで私が国内で見たものよりもいづれもずっと色が鮮やかであった。色が命の印象派の画家たちにあの鮮やかな色とそれを際立たせる構図が影響を与えたのだと感じた。
 カサットの「湯あみ」は事前に講座で画家の名前と作品を教えてもらっていたので、なるほどと思って見ることができた。当時のヨーロッパの人々から見る江戸時代末期・明治時代初期の日本の女性の社会的役割はかなり新鮮に見え、かつ女性が社会の中で果たす役割が大きく見えたらしい。これは浮世絵に現れる遊女などが普通の庶民の女性と誤解されていた面も多分にあるようだ。しかし家族の情愛の表現はとても新鮮であったらしい。
 今回の展示の絵では、ホイッスラーの「ノクターン」、ウィリアム・ノートンの「夜」が、静謐な夜の港の雰囲気をとらえていて、私はとても気に入った。またウェストン・ベンソンの「早朝」にも惹かれた。
 また陶器では、ニューカム・ボタリーのアヤメの模様の「花瓶」、ステューベン・ガラス工房の「ブルー・オリーン扇形花瓶」の落ち着いた色合いが気に入った。
 しかしいづれも例によってポストカードは用意されていなかった。図録2300円は残念ながら手が届かなかった。

 なお、会場は5つのセクションに割れられている。
1.日本趣味  2.女性  3.シティ・ライフ  4.自然  5.風景
 なかなか面白い設定と思った。女性と風景が大きなスペースと展示数を占めている。またシティ・ライフというセクションの設定も新鮮であったと思う。自然と風景についてはこれまでもいろいろ見聞きすることはあったが、女性(家族)、シティ・ライフという視点はジャポニズムの影響の大きさを窺う契機となった。


 この展覧会を見てから15時30分からみなとみらいで開かれている講座「旬なアートで楽しむ美術鑑賞 西洋美術編」を聞きに行った。
 暑いさ中をいってきて、休みも取れなかったので講座は少々眠かった。
講座では「オルセー美術館展-印象派の誕生-」(国立新美術館)の解説をしてもらった。この講義を反芻しながら展覧会をじっくりと鑑賞しようと思う。