とりあえず最後まで目を通した。残念ながら私の問題意識とはすれ違う内容で、どこか大学・高校の教養としての仏教史の通史のような気がした。宗派の興亡という感じで、外来思想としての仏教が地域社会、とりわけ東アジアというひとくくりができると仮定したとして、その歴史や文化とどのように衝突し、拮抗し、上部構造として覆いかぶさっていったか、政治史とのかかわりだけでなく、社会の底辺とどのように拮抗したのか等々を期待したのだが、私の思い入れが違っていたようだ。
近代国家成立のところで日本の植民地支配について、日本の仏教がどのような役割を果たしたのか、これについては別な一冊を期待したいと感じた。
「おわりに」で「はじめはオルコットを大歓迎した日本仏教界は、宗派を超えて合同し、釈尊に回帰して仏教を盛んにしようとする運動もなされたが、神智学と仏教の違いが知られるにつれて、オルコットに冷淡になっていった。また、スリランカが西洋列強諸国の植民地となったのは小乗仏教のためだとして、日本の国家主義的な大乗仏教の優位を誇るようになった。日本はダルマパーラが願ったアジアの仏教国同士の連携をはからず、日英同盟を結んで西洋列強の一員となる道を選んだのだ。東アジアの近代仏教は、こうした西洋と東洋の相互影響、東アジア諸国間の相互影響を重ねながら展開していく。」と結んでいる。
わたしからすると問題把握は共有できるのだが、どうしてもかなりの消化不良の感を拭えない。この結論から論をはじめてほしかった。