加藤楸邨の最初の句集「寒雷」の「愛禽抄一」におさめられている「鵙(もず)」の句から。鵙は秋の季語であるが、本日取り上げてみた。
★かなしめば鵙金色の日を負ひ来
★目をほそめ没日(いりひ)の鵙をしかと見たり
★ひとの目に鵙群青の空を翔(か)く
★冬日没る金剛力に鵙なけり
山本健吉は「現代俳句」という著作の中で、第1句は「秋の夕べの輝きを負って、鵙が高音を張りながら一直線にこちらの樹へ飛翔してきたのである。‥(鵙の)乾いた高音は澄み切った秋の大気を感じさせる。‥何もかも茜色に染め出すような秋の入日の景にふさわしい。‥豪華な色彩と強烈な主観とに彩られ、厭離も大きく躍動して重々しい」と評している。
初期の加藤楸邨の句は色彩感覚に優れ、写実的で印象鮮明な句が多い。そして「かなしめば」「しかと」「金剛力に」など主観が強く打ち出されたことばがするどい。この主観的なことばを嫌う人も多いようだが、私はこの強い言い切りに惹かれる。そこに作者の表現意識を感じ取りたい。単に印象鮮明なだけではない抒情があるように思っている。抒情がなければ「詩」ではないが、安易な抒情は俳句から「抒情」を無くしてしまう。詩とは言えなくなる。
私は、これらの作品を読んで、琳派の作品、それも鈴木其一の作品などを思い浮かべてしまった。
★かなしめば鵙金色の日を負ひ来
★目をほそめ没日(いりひ)の鵙をしかと見たり
★ひとの目に鵙群青の空を翔(か)く
★冬日没る金剛力に鵙なけり
山本健吉は「現代俳句」という著作の中で、第1句は「秋の夕べの輝きを負って、鵙が高音を張りながら一直線にこちらの樹へ飛翔してきたのである。‥(鵙の)乾いた高音は澄み切った秋の大気を感じさせる。‥何もかも茜色に染め出すような秋の入日の景にふさわしい。‥豪華な色彩と強烈な主観とに彩られ、厭離も大きく躍動して重々しい」と評している。
初期の加藤楸邨の句は色彩感覚に優れ、写実的で印象鮮明な句が多い。そして「かなしめば」「しかと」「金剛力に」など主観が強く打ち出されたことばがするどい。この主観的なことばを嫌う人も多いようだが、私はこの強い言い切りに惹かれる。そこに作者の表現意識を感じ取りたい。単に印象鮮明なだけではない抒情があるように思っている。抒情がなければ「詩」ではないが、安易な抒情は俳句から「抒情」を無くしてしまう。詩とは言えなくなる。
私は、これらの作品を読んで、琳派の作品、それも鈴木其一の作品などを思い浮かべてしまった。