午後遅くなってから横浜駅傍の喫茶店で30分ほどの読書タイムで、岩波書店の「図書5月号」に目を通した。
わずかな時間だったので目を通したのは、以下の5編のみ。
★悪魔が見えるひとの夢 司 修
戦後74年、しかしながらその時の戦争の刻印は直接・間接を問わず多くの人に今もなお残っている。それは私たちが思いもよらなかった切り口で忘れ去られようとしている。鮮明に記憶していること自体が人の記憶装置とは相反することなのだ、というように。刻印が昇華ではなく風化で痕跡を残すことなく‥。
★「心見る」女 久保田淳
久保田淳という名を「西行全集」の編者として覚えた。今も広辞苑の次に分厚いその本はすぐに手に取れるような場所に置いてある。
また和泉式部のいくつかの歌が好きで、いつかはその歌全体を読みたいと思い、新潮社の羅本古典集成の「和泉式部日記・和泉式部集」は大事にしまってある。しかし未だに拾い読み鹿していない。
「かへるさ待ちこころみよかくながらよもだにては山科の里」(「後拾遺和歌集」雑五)を引用しながらの短文に接した。いつか和泉式部の千泰三を自分なりに見つけるために、この歌の解釈も試みたいものである。
★偽者と分身、そして永遠 --三島由紀夫をめぐって 安藤礼二
「(戯曲)『英霊の聲』は『豊穣の海』四部作に着手しはじめた直後に発表された。それゆえ、三島由紀夫が作家としての能力をすべて注ぎ込んで完成しようとした『豊穣の海』四部作の核心、さらにオリジナルとコピーの弁別不可能性を日本文化の基盤と喝破した同時期のエッセイ『文化防衛論』の核心を前もって、よりクリアに表現してくれているような思われる。三島由紀夫の作品世界の、いわばミニチュア模型である。」
「偽者と分身を無限に生み出し、偽者と分身とを完全に消滅させる舞台。三島由紀夫が、その最後に、われわれに突き付けた問いは、未だに充分に応えられていない。」
★同級生の語らい -佐世保からパレスチナへ 川上泰徳・佐藤正午
★大きな字でかくこと 私のこと その4 事故に合う
「母に愛されていることの幸福感と、父に対する齟齬の感覚が残った。」