Sightsong

自縄自縛日記

鉄道と美術の150年@東京ステーションギャラリー

2023-01-08 22:32:18 | アート・映画

もう終わってしまうのでかなり混んでおり、あまりじっくりと観ることができず、結局資料として図録を買うことになる。しかしあらためて紐解くとやっぱりおもしろい。

驚かされるのは、鉄道と美術が明治初期の同じ年に翻訳語として生まれ、ともに並走してきたという視点。はじめは近代化のために、ときに侵略を糊塗する手段として。たしかに満鉄の爆走するあじあ号のイメージは強烈な力を持っていただろう。引き揚げの際にも鉄道は美術作品に欠かせないモチーフだった。展示された美術作品のうちもっとも惹かれたのは松本竣介が描いた東京駅の裏側。この人の絵をまとめて観たらどきどきして気絶するのでは。


『沖縄の“眼”になった男 〜写真家・平良孝七とその時代〜』

2023-01-08 17:29:05 | 沖縄

NHKの『沖縄の“眼”になった男 〜写真家・平良孝七とその時代〜』は力作だった。

「武器としての写真」による社会的な告発をねらった平良孝七は、自身の職業スタンスとの矛盾に苦しんでもいた。その相克は、実は屋良朝苗琉球政府主席を背後から捉えた写真や、施政権返還時のかれらしくないアレ・ブレ・ボケ写真としてかたちになってもいたということが納得できる。 だから、告発に「むなしさ」を感じてから「ただ視る」ことを実践してきたということが実感できる写真群(番組にも登場する仲里効さんが『フォトネシア』で書いている)や、アイコンとして利用されてきた少女の写真などは、平良の世界のすべてではない。

番組の最後に、山城知佳子さんが自身と戦争体験者との顔を重ね合わせ、体験談を同じ口から語らしめる動画作品《あなたの声は私の喉を通った》について話している。現代のわたしたちは戦争体験者と同じ怒りや感情を持つことはできない。それを表現としたものでもあった、と。これは平良の感じた「むなしさ」と表裏一体のものかもしれない。ちょっと驚いた。 

沖縄の“眼”になった男 〜写真家・平良孝七とその時代〜 - ETV特集 - NHK

手元にある『沖縄カンカラ三線』(三一書房、1982年)

●参照
琉球弧の写真、石元泰博
コザ暴動プロジェクト in 東京
平良孝七『沖縄カンカラ三線』
『山城知佳子 リフレーミング』@東京都写真美術館
仲里効『フォトネシア』


池田千夏+本藤美咲@下北沢Apollo

2023-01-08 11:13:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のApollo(2023/1/7)。

Chinatsu Ikeda 池田千夏 (p)
Misaki Motofuji 本藤美咲 (bs, ss, electronics)

バリトンサックスは速度や重さのゆえかサウンド全体の雰囲気に貢献している。そのためコード楽器としてのピアノとの親和性が高く、序盤はふたりが近づいたり、重なったり、追いかけっこをしたり。ポータブルカセットやエレクトロニクスもそれに一役も二役も買っている。また、タンギング音を拾ってばら撒いたのか、まるで場が海の中のように感じられる。

この日本藤さんはソプラノを(あらためて)初めてパフォーマンスに使ったようで、こうなるとバリサクと異なって「全体性」よりも「運動性」。ところがそれだけでなく、管の共鳴を抑えて吹きすさぶ風のようなものを表現し、「全体性」へとシフトした。

池田さんのピアノはサックスが場に拡がろうと飛翔しようと物語の創出。セカンドセットでは曲も紛れ込ませたが、インプロとの境界はきわめて自然だった。

Fuji X-E2, XF35mmF1.4

●本藤美咲
People, Places and Things × Ex@小岩BUSHBASH(2022年)
本藤美咲+岡千穂@Ftarri(2022年)
本藤美咲+遠藤ふみ@Ftarri(2021年)
照内央晴+柳沢耕吉+あきおジェイムス+本藤美咲@なってるハウス(2021年)