Sightsong

自縄自縛日記

世界のビーズ展@文化学園服飾博物館

2024-09-15 11:15:02 | もろもろ

新宿の文化学園服飾博物館にて「世界のビーズ展」。

権力の誇示や魔除けなど目的はいろいろだけど、どれにも魅せられる。琥珀の色もさまざまだし、紅い糸で結わえられているラピスラズリなんてじつにあざやか(アフガニスタンだけで採れるとあったが間違いで、自分もミャンマーのアウンサン市場で安物を買ったりした)。イエメンの銀もいい。20世紀の末にサナアで腰に付ける刀のジャンビアを買ったけれど、あれはどこに消えてしまったのだろう。

不思議なのはビーズが山間部で多く使われていたことだ。ちょっと前、ベトナムやミャンマーの北部に足を運ぶとカラフルな刺繡の入った少数民族の子たちをよく見たけれど、オカネがあればそれにビーズが散りばめられていたということ。宝貝だってガラス玉だって運び入れること自体が特別だったにちがいない。

照葉樹林文化・コメ文化はアッサム~雲南~東南アジア北部あたりを中心として広がっていた。梅棹忠夫『東南アジア紀行』には、1000mの等高線で切ってそれ以下の部分を地図で消し去ると残る「空中社会」が山の民(ミャオ族=モン族など)の国なのだと書かれている。ビーズ文化と重ねわせると想像が広がっておもしろい。


佐々木幹『リハビリ 生きる力を引き出す』

2019-08-25 10:27:17 | もろもろ

佐々木幹『リハビリ 生きる力を引き出す』(岩波新書、2019年)を読む。

生きていると病気を抱え込んでしまう人が周りに何人も。

自分も大きな病気をして、幸いリハビリが必要というものではなかったけれど、それは運がそのように転んだ結果に過ぎない。今後だってそうだし、誰だってそうである。年齢や生活環境にはあまり関係がない。親しくなってみると実はわたしも、と共有してくれる人も少なくない。

悲しさも不自由もすべて人生の親戚(大江健三郎の本をそのたびに思い出す)、リハビリも人生の親戚とともに生活する過程かもしれない。

本書を読んでいてあらためて思ったことは、病気とは単なる機能不全ではないということだ。機能不全を望ましくないことのように言うなら、誰しもそれを潜在的に抱えている。人間をそんなくだらぬ機能の比較によって評価してはならない。そして重要なことは、リハビリという過程そのものを「望ましい状況」への無駄な時間ととらえるべきではないこと、他者の認識も自分自身の思考も極めて重要であること。これを著者は主体性と呼んでいる。


木村聡『消えた赤線放浪記』

2018-11-23 09:12:59 | もろもろ

木村聡『消えた赤線放浪記 その色町の跡は…』(ちくま文庫、2005年/2016年)を読む。

「赤線」は戦後まもなく誕生し、売春防止法の施行とともに、1958年には姿を消した。もちろんそれは形を変えた風俗となった。風営法の規制にも左右されてきた。姿を変えたのは欲と商売だけではない。街の形もそれによって変貌した。

著者は、北海道から鹿児島まで、赤線跡を探し当て、そこがどのような街と化しているか、また近くの風俗街はどのような様子なのかを見て歩いている。毎回体験してもいる。読みながら、なんだ「歩いた、ヤッた」だけじゃないかと思っていたのだが、最後まで付き合ってみると、人のはかなさや情が沁みてくるような。


西村祐子『革をつくる人びと』

2017-09-30 10:59:10 | もろもろ

西村祐子『革をつくる人びと 被差別、客家、ムスリム、ユダヤ人たちと「革の道」』(解放出版社、2017年)を、クアラルンプールにいる間に読了。

わたしも革が人並み以上に好きである。しかし、日本において被差別の人びとが革を扱っていたことは知っていても、他国でどうなのかについては考えたこともなかった。また、なめしの方法についてもほとんど知らなかった。本書を読むと革のあれこれに興味がわいてくる。

イスラム圏では昔から皮の需要がとても高い。イベリア半島にもイスラム教時代にユダヤ人やムーア人の革職人たちが移り住み、イスラム教が去ったあとも文化として根付いた。また、東南アジアや南アジアには、中国華南地方の客家の人たちがディアスポラとして進出し、やはり革の仕事を手掛けていった。両者ともに、地域や同胞の横の関係がなければ成り立たなかった。ここには簡単でない歴史があるものの、日本のように政策的な差別構造があったわけではないことがわかる。

現在のなめしはクロムを使うことが一般的である。樹皮の渋から得られるタンニンを使う方法もあるが、工程が複雑で、時間がかかる。しかし、かつての日本ではそのいずれでもなかった。新しいクロムなめしは置いておいても、なぜ明治期に入ってきたタンニンなめしが広まらなかったのか。設備と場所をとることに加え、ここに登場する職人によれば、森林の国において大量の伐採につながることはできなかったのだという。検証されていることかどうかわからないのだが、面白い視点だ。

日本でかつて主流だった方法とは、白なめしである。川にしばらく漬けたあとに脱毛し、塩と菜種油をすりこみ、足で何百時間も踏んで柔らかく、また強靭にする。菜種油は虫が付かないようにするための選択でもあった。この中心地が姫路である。また、姫路は馬の尻から取れるコードヴァンで有名でもある。

本書には、こうした伝統を受け継ぎ新しいことを始めようとする人たちが何人も登場する。なるほど、それでこその文化なのだなと思える。

ところで長いこと使った長財布を新調しようかなと思っていたのだが、本書を読んだいま、買うべきか、年季がかなり入っていてもまだまだ使い続けるべきか、また別の悩みが出てきている。


片岡義男『万年筆インク紙』

2017-01-15 23:16:09 | もろもろ

片岡義男『万年筆インク紙』(晶文社、2016年)を読む。

中身は、タイトル通りである。つまり、万年筆とインクと紙。あえて言えば、あとはボールペンと、出たてのワープロ。

著者は、たとえば、万年筆で敢えて書くことが、その書かれたことにとって世界とのかかわりがどのようなものかといったことや、あるいは、ブルーブラックというインクの色がどのような意味を持つのかといったことについて、折に触れ、考察する。というよりも、印象を語る。

はっきり言って、そんなことはどうでもいいのだ。文房具愛好家が、自分自身の常軌を逸したさまに不安を抱き、あれこれと落としどころを見つけようとしているだけの話である。面白いのは文房具への具体的な執着という各論なのであり、わたし自身は常軌は逸してはいないと信じるものの、わかるわかると思いながら読んでしまう。

つまり、大事なのは、リーガルパッドに万年筆で書くと盛大に滲むことであり、ライフのノーブルノートはなかなか良いことであり、インク瓶の形が重要なことであり、エルバンのローラーボール(万年筆用のカートリッジを使う)の書き心地が渋いことであり、三菱鉛筆のジェットストリームの書き心地は最高だが軸がダメなことであり、万年筆とインクと紙の相性が永遠の課題ということであり、・・・・・・。

●参照
万年筆のペンクリニック
万年筆のペンクリニック(2)
万年筆のペンクリニック(3)
万年筆のペンクリニック(4)
万年筆のペンクリニック(5)
万年筆のペンクリニック(6)
万年筆のペンクリニック(7)
本八幡のぷんぷく堂と昭和の万年筆
沖縄の渡口万年筆店
鉄ペン
行定勲『クローズド・ノート』
モンゴルのペンケース
万年筆のインクを使うローラーボール
ほぼ日手帳とカキモリのトモエリバー
リーガルパッド
さようならスティピュラ、ようこそ笑暮屋
「万年筆の生活誌」展@国立歴史民俗博物館


「万年筆の生活誌」展@国立歴史民俗博物館

2016-03-21 22:31:45 | もろもろ

佐倉市の国立歴史民俗博物館まで足を延ばし、「万年筆の生活誌 ― 筆記の近代 ―」展を観てきた。

「Fountain Pen」がなぜ「泉筆」でなく「万年筆」と意訳されたのか。そこには、おそらく、毛筆からの転換という意気込みがあった。やがて公的文書へのインクの使用が認められ、また、一般市民が記録するという近代ならではのことばのあり方も相まって、万年筆は日本において爆発的に広まっていく。

毛筆やつけペンよりも遥かに便利でモバイル的。しかし、単なる実用品としてだけではない。夏目漱石は依頼されて「余と万年筆」という面白いエッセイを書いているのだが、そこで「オノト」を使っていると書いたばかりに、後に続く文士たちにとって憧れのブランドとなった(だからこそ、いまだに丸善がオノトの形をした復刻版を出している)。

会場には、さまざまな文筆家たちが使った万年筆が展示されている。もはや漱石のことなど意識しなかったであろうが、文化的にはつながっているわけである。沖縄の施政権返還に関わった大濱信泉は、パーカーのシズレ。柳田國男は、プラチナのシンプルなもの。宮本常一は、パイロットのシンプルなもの。字がとても小さい。ブレヒトの翻訳で有名な岩淵達治は、モンブランのマイスターシュテュック。ただ胴軸が割れており、ガムテープをぐるぐる巻きにしている。こうして見ると、日本人には細字が合っていたのかなという気がしてくる。

近代は戦争の世紀でもあった。戦地から「内地」に出す葉書も万年筆で書かれることが多く、そうなるとやはり細字が好まれただろう。会場には、沖縄戦の犠牲者が持っていたものも展示されている。今なお、沖縄では遺骨とともに万年筆が掘り出されている(沖縄の渡口万年筆店)。

日本の三大万年筆メーカーといえば、セーラー、パイロット、プラチナである。実は、ほかにたくさんの中小の万年筆メーカーがあった。何だ、日本の二眼レフカメラと同じではないか(頭文字がAからZまで揃うと言われた)。大きなところも中小も、いま見ても実にハイセンスなものが少なくない。ほとんど眼福である。いいものを見せてもらった。

ところで、図録が非常に充実していて、我慢できずに買ってしまった。帰りの電車でぱらぱらとめくっていると、また夢中になってしまう。サブカルチャーにおける万年筆を論じたコラムまである。

●参照
万年筆のペンクリニック
万年筆のペンクリニック(2)
万年筆のペンクリニック(3)
万年筆のペンクリニック(4)
万年筆のペンクリニック(5)
万年筆のペンクリニック(6)
万年筆のペンクリニック(7)
本八幡のぷんぷく堂と昭和の万年筆
沖縄の渡口万年筆店
鉄ペン
行定勲『クローズド・ノート』
モンゴルのペンケース
万年筆のインクを使うローラーボール
ほぼ日手帳とカキモリのトモエリバー
リーガルパッド
さようならスティピュラ、ようこそ笑暮屋


さようならスティピュラ、ようこそ笑暮屋

2015-05-27 07:27:32 | もろもろ

イタリア・スティピュラの「エトルリア」という万年筆を使っていて、インクフローがいまひとつなので、ペンクリニックで何度か調整してもらった。その結果、ペン先は良くなったが、古いインクが残っているかもしれないとのドクターの言。そんなわけで、プラチナが出している万年筆クリーニングキットを買ってきてペン先を漬けておいたところ、今度は、インクの吸入機構がうまく働かなくなった。

ちょうど新宿のキングダムノートでペンクリニックを開催していたので、出かけて行って、仲谷ドクターに診ていただいた。なんと、壊れていた。エトルリアの初期型は、ペンのお尻をくるくると回してインクを吸い上げるのだが、ペン軸の途中で分解できず、また中の部品がプラスチック製ゆえ壊れやすいのだという。そして、もうメーカーでも補修部品を作っていない。

毎日使うものである。困る。といって駄々をこねて騒いでも仕方がない。直らないものは直らない。古いタイプを使った自分が悪い。

そんなわけで、日本で唯一のエボナイト素材製造工場である「日興エボナイト製造所」が出している「笑暮屋」の万年筆を入手した。ちょうど谷中で出張販売をしていて、実際に触って確かめることができた。ろくろで削って作られた手作り万年筆である。エボナイトは固いゴムであり、何でも、黒檀(Ebony)に似ているためにその名が付けられたらしい。実際に、触っていて、独特の柔らかく軽い質感があって気持ちが良い。なお、エトルリアはセルロイドで作られており、こちらの質感も好きである。

中でもクリップが付いていないタイプ「萌芽」が個性的だったので、そのMサイズを選んだ。Sサイズとあまり値段が変わらないが、訊いてみると、「工作することは同じようなものだし、素材の量はさほど変わらない」からだという。また、中字が好きなので試し書きさせてもらっていると、ペン先(14K)を薄く研いだものもあると囁かれた。そちらの方が柔らかく好みであり、さらに、筆圧の弱いわたしでもインクがさらりと出るよう、調整していただいた。

いまのところ絶好調。


エトルリア(奥)と萌芽(手前)

●参照
万年筆のペンクリニック
万年筆のペンクリニック(2)
万年筆のペンクリニック(3)
万年筆のペンクリニック(4)
万年筆のペンクリニック(5)
万年筆のペンクリニック(6)
万年筆のペンクリニック(7)
本八幡のぷんぷく堂と昭和の万年筆
沖縄の渡口万年筆店
鉄ペン
行定勲『クローズド・ノート』
モンゴルのペンケース
万年筆のインクを使うローラーボール
ほぼ日手帳とカキモリのトモエリバー
リーガルパッド


リーガルパッド

2015-05-14 07:48:17 | もろもろ

普段の仕事用に、B5サイズ(182×257mm)のものを使うことが多い。ただ、コクヨの一般的な「キャンパスノート」は薄すぎてカバーに2冊入れなければ不安だし、万年筆で書くと滲んでしまう。何よりあの横罫が好きではない(勝手に字の向きや間隔を決めないでほしい)。最近では上質な紙のノートが多くなってきているのが嬉しいことで、わたしはライフの「ノーブルノート」や満寿屋の「MONOKAKIノート」をよく使っている。

一方、B5でも大きいと思うことが少なくない。鞄に入れて持ち歩くにも、狭い場所で開くにも、もう一回り小さいほうが便利である。A5サイズでも悪くないが、縦に開いて折り返すノートパッドならばどこでも書くことができる。

そんなわけで、米国ミードの「ケンブリッジ・リーガルパッド」がちょうど良いサイズだということに落ち着いた。海外でもA4サイズのものを使っている人をよく見る。わたしが使うのは5×8インチ(127×203mm)である。これを丸善の革製のノートパッドカバーに入れれば非常に便利。革製でなく合皮やビニール製だと、他の印刷物がべりべりとへばりついてしまうことがあって嫌なのだ。

しかし、これにも問題がある。独特の黄色はまあいいとして、やはり横罫が入っているし、万年筆ではどうしても滲む。他に良いものがないものかと探していて、ツバメノートの「ツバメ・リーガルパッド」を見つけた(ミードのものより若干薄い)。「OKフールス紙」が使われており、淡いクリーム色で方眼または無地、インクは滲まない。

なお問題がないわけではない。書き終わった紙を切り離すミシン目が不十分で、結局、すべてちぎらずに使うことになる。そうすると、最終頁あたりでは書き終えた分が厚すぎて、折り返す具合がよくない。

なかなか完璧ということはないものである。


ケンブリッジ・リーガルパッド、ツバメ・リーガルパッド、丸善のノートパッドカバー


ケンブリッジ・リーガルパッド。細字なのに結構滲む。


ツバメ・リーガルパッド。ほとんど滲まない。

●参照
ほぼ日手帳とカキモリのトモエリバー


FRAGILE考現学 ver.2

2015-05-10 09:38:06 | もろもろ

日本の国内線を除き、飛行機に乗るときには、かならずスーツケースに「FRAGILE」のラベルを貼ってもらっている。

荷物の扱いを視た人ならわかると思うが、大体の場合は何のためらいもなくブン投げていて、おいおい何をすると言いたくなる。中にパソコンなんかも入れているから、気休め程度とは知りつつ、せめてもの対策である。

これらのラベルは、似ているようでいて、各社各様で面白い。

シンガポール航空。角ばったワイングラスと、「FRAGILE」の文字そのものにヒビが入っている。(それともビールグラスか?)

ガルーダ・インドネシア航空。ワイングラスはまったくの無傷。

タイ国際航空。ワイングラスは2箇所も割れている。

その後変更され、ワイングラスが復旧した。

ミャンマーのエア・バガン。実際には難しそうな割れ方をしている。

インドのジェット・エアウェイズ。無傷のワイングラスがなぜか3つ。

インドのエア・インディア。カクテルグラスにオリーブと優雅。

インドのキングフィッシャー航空。ビール会社がはじめた航空会社のくせに、割れているのはワイングラス(いや、ビールグラスのつもりか?)。名前の通り、カワセミの絵が良い感じだ。ところで、最近の経営悪化はひどいようで、もう乗ることもないかもしれない。

モンゴルのミアット。タイ国際航空の旧タイプと同様に、ワイングラスの同時2か所割れ。

UAEのエミレーツ航空。縦長のシールがいかにもオシャレ。カクテルもオシャレ(何しろ、バーカウンターを備えた機種がある)。

全日空。タイ国際航空と同じく、2箇所が割れている。デザイン的にはつまらない。

なお日本航空の場合は、頼むと「FRAGILE」のラベルではなく、ゴム紐で結える厚紙のタグをつけられる。

以上、9対2と、ワイングラスがカクテルグラスに圧勝した。また、割れ有り7に対し、無し4。

ところで、向って左上が割れていることが多いのはなぜだろう。

(ver.1: 2012/9/27)


万年筆のペンクリニック(7)

2015-03-07 23:38:05 | もろもろ

待ちに待った、日本橋丸善での「世界の万年筆展」。いや特に新たな万年筆が欲しいというわけではなく、ペン先の調整である。大阪や神戸にはいいお店があって、頻繁にペンクリニックを開いているのに、東京ではあまりない。

そんなわけで、書き味が渋いことがある万年筆を2本握って駆けつけた。受付開始の9時半から10分も経っていないのに、もう16人も先客がいた。(もっとも、前日の残りかもしれないのだが、人気があることは確かだ。)

ドクターは、何度か診ていただいた、サンライズ貿易の宍倉潔子さんである。

■ マーレンの「サクソフォーン」

チャーリー・パーカーへのオマージュとして作られたペン。バードなのに書き味が渋くて何がバードか。

ペン先の開き具合が悪く、少し歪んでいたようだった。

■ スティピュラの「エトルリア」

ペン先が14Kの現行品と違い18K。ペン先とクリップに刻んである模様は、イタリアのアカントという葉であり、また、ペン軸のふくらみはトスカーナの大地だということである(受け売り)。イタリア物は洒落ている。

これもペン先の開きが今ひとつということで、調整していただいた。1年ほど前にも診てもらったのだが。

ところで、インクフローが渋いのには、ペン先の物理的な問題のほかに、変な角度で書いてしまうという書き手の癖や、インクとの相性も原因となっていることがあるのだという。

特に「ブレンド物」のインクは、粘性が高く、ペンを選んでしまうらしい。そういえば、マーレンにはパイロットの「色彩雫」、スティピュラには丸善のオリジナルインクを詰めていた。しばらくしたら、ペリカンのブルーブラックに戻すつもりだ。

まあ、当分はこれでストレスなし。

●参照
万年筆のペンクリニック
万年筆のペンクリニック(2)
万年筆のペンクリニック(3)
万年筆のペンクリニック(4)
万年筆のペンクリニック(5)
万年筆のペンクリニック(6)
本八幡のぷんぷく堂と昭和の万年筆
沖縄の渡口万年筆店
鉄ペン
行定勲『クローズド・ノート』
モンゴルのペンケース
万年筆のインクを使うローラーボール
ほぼ日手帳とカキモリのトモエリバー


ほぼ日手帳とカキモリのトモエリバー

2015-01-30 00:06:14 | もろもろ

仕事でも私用でもたくさん書くので、とにかく紙やノートは自分にとって大事である。

手帳は、去年までの2年間、レイメイ藤井のA5サイズのスケジュールノートを使っていた。見開きで左に1週間分の予定を記入でき、右にあれこれ書けるのがよかったのだが、書くスペースが足りず、また普通の紙では万年筆を使うと滲んでしまう欠点があった。

そんなわけで、今年から、同じA5サイズの「ほぼ日手帳カズン」を使っている。予定の記入に加え、毎朝開いて、思いつくことややるべきことをたくさん書き込めるのが良い。そして、万年筆を使ってみて感動した。ペラペラに薄いくせにインクが裏抜けせず、滲みもなく書きやすい。あえて難点を言えば、インクが乾くのに少々時間を要することくらいだ。

この紙は、巴川製紙所の「トモエリバー」。これは素晴らしいと思い調べてみると、蔵前の「カキモリ」でもこの紙を扱っている。さっそく訪ねて、ノートを作っていただいた。ここは面白いお店で、紙だけでなく、表紙、リング、留め具を選ぶことができる。同じ紙を選んだので当然ではあるが、書き心地抜群。他のパターンも試したくなるのが困りものである。

ヘルツのカバーに「ほぼ日手帳カズン」、カキモリのノート

ほぼ日手帳カズン

カキモリのノート

●参照
万年筆のインクを使うローラーボール


万年筆のインクを使うローラーボール

2014-11-09 15:39:40 | もろもろ

ペンをよく使う。

筆圧が強くないわたしにとって、素早くたくさん書くためには万年筆がベストだということに気付いたのは、割に最近のことだ。

一方、万年筆はそれなりに使い方に気をつかうため、ボールペンやローラーボールも持ち歩く。昔ながらの油性ボールペンは書き味が悪く手が疲れる(もっとも、最近では三菱鉛筆のジェットストリームなど素晴らしいものがある)。ローラーボールはすらすら書けて好みだが、日本では主流ではなく品数が多くない。

ローラーボールには、できれば万年筆のインクを使いたい。フランスのエルバンが廉価なものを出しており、試したこともあるが、書き味が硬く、インクフローが渋い。しかも、残念なことに、カートリッジ専用である。ヴィスコンティやオマスといったイタリアの万年筆メーカーが、このようなものを出していることは知っているが、あまり出回っておらず、値も張る。

ローラーボールを巡る悩みは以上のようなものだが、最近、蔵前にある「カキモリ」という手作りノートの店が、万年筆のインクを用いる廉価なローラーボールを出したと聞き、早速訪ねて2本手に入れた。コンバーターが付いて1700円ちょっと、良心的。なお、この界隈には、わたしが遠出用に愛用する鞄を作っている「エミピウ」もある。

せっかくの透明軸なので、普段よりも鮮やかな色を使おうと思って、パイロットの「色彩雫」シリーズの「月夜」を詰めた。なお、万年筆とは違い、ペン先からではなく、コンバーター単体でインクを吸入する。インクがペン先まで浸みるのを待って使ってみると、確かにインクフローが良くて快適。文字には万年筆のように濃淡がある。これは嬉しい。

明日からの実戦投入が楽しみである。


月夜とローラーボール2本


ペン先とキャップ


パイロットの透明軸万年筆「カスタムヘリテイジ92」と並べても違和感がない

●参照
万年筆のペンクリニック
万年筆のペンクリニック(2)
万年筆のペンクリニック(3)
万年筆のペンクリニック(4)
万年筆のペンクリニック(5)
万年筆のペンクリニック(6)
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行定勲『クローズド・ノート』
モンゴルのペンケース


モンゴルのペンケース

2014-10-29 00:13:40 | もろもろ

ウランバートルの旧国営「ノミンデパート」を物色していて、いい感じのペンケースを発見した。

革製で、ペンを4本ほど挿して、くるくる巻くタイプのものである。ステッチの色が微妙にオシャレで、なかなかよく出来ている。モンゴル製で、タグには「Hishge」と書かれている。それがメーカー名なのか、ブランド名なのか、一般名詞なのかまったくわからない。2万5千トゥグルグ、約1400円。本革製でこれは安い。

このタイプのペンケースを誰がつくりはじめたのか知らないのだが、今では結構多くのところが作っている。わたしの使っているものは、新宿のキングダムノートのオリジナル品である。比べてみると、モンゴル製のほうが少し大きく、ペンを挿すポケットは逆に浅い。さて使い心地はいかに。


手前:モンゴルHishge製、奥:キングダムノート製


手前:モンゴルHishge製、奥:キングダムノート製

●参照
万年筆のペンクリニック
万年筆のペンクリニック(2)
万年筆のペンクリニック(3)
万年筆のペンクリニック(4)
万年筆のペンクリニック(5)
万年筆のペンクリニック(6)
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大江戸骨董市とアルマイトのケース

2014-06-01 23:19:27 | もろもろ

有楽町の東京国際フォーラム前では、定期的に「大江戸骨董市」が開かれている。実はこれまでまったく知らなかったのだが、国分寺の上海リルさんが出店されているというので、ちょっとお邪魔した。

ずいぶん古い巨人・阪神のピンバッジやら、ベルモンドが表紙で威張っている『勝手にしやがれ』のパンフやら、妙なものがいろいろ。折角なので、アルマイトの丸いケースを購入した。負けていただいた(ありがとうございます)。職場の机に置いて、ドリンク購入用のコインを入れる予定である。アルマイトだけあって、ちょっとこすれると歯が振動するような感覚がある。

自分はこういうものに弱い。パリやロンドンやバンコクやミラノやシドニーやヤンゴンやバラナシや北京などの露店で買ったものがいろいろあって、何のためにあるのかよくわからないが、とにかく存在している。小さいモノは活動の残滓ではない。いや残滓かもしれないが、そこには時間とか手仕事の跡とかそれに接した人の揺らぎとかいったものが残っている。

●参照
うずくまる
中国の顔
樹木からコースターとカメラのグリップ
パルサーもどき


万年筆のペンクリニック(6)

2014-05-28 07:37:34 | もろもろ

新宿西口の「キングダムノート」は楽しい万年筆店で、売り物の半分が中古品。覗くと、大概は数人の先客がいて、ガラスケースの中を凝視している(中古カメラ店と同じ光景)。

先日、イタリア・スティピュラエトルリアという万年筆をここで入手した。ロングセラーだが、ペン先が14Kの現行品と違い18K。何でも、ペン先とクリップに刻んである模様は、イタリアのアカントという葉であり、また、ペン軸のふくらみはトスカーナの大地だということである。

謂れはともかく、欲しかったこともあって、使っていて気持ちがいい。ただ、書き出しが渋かったので、ここで開かれたペンクリニックを予約し、仲谷ドクターに診ていただいた。「ねじれを取り、角を落とした」結果、また快適になってしまった。

当日の様子がツイッターにアップされていた

●参照
万年筆のペンクリニック
万年筆のペンクリニック(2)
万年筆のペンクリニック(3)
万年筆のペンクリニック(4)
万年筆のペンクリニック(5)
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