Sightsong

自縄自縛日記

伊藤志宏+岩川光『TUPANANCHISKAMA - Live Recording 22 Mar. 2019』

2020-04-29 09:51:01 | アヴァンギャルド・ジャズ

伊藤志宏+岩川光『TUPANANCHISKAMA - Live Recording 22 Mar. 2019』(Nomado、2019年)を聴く。

Shikou Ito 伊藤志宏 (p)
Hikaru Iwakawa 岩川光 (quenas)

静かなデュオなのかなと思ったらとんでもない。

伊藤さんは曲の世界の中にすごい加速力で踏み込み、ときに硬くて冷たい光を撒き散らしている。また岩川さんはケーナでこんな音が出せるのかという超絶技巧で暴れまくっている(2本吹きもあるのかな)。

曲はふたりのオリジナルで、それぞれの個性が出ているように思えた。エルメート・パスコアールをも思わせるような、無数の踊る気持ちが詰め込まれた岩川さんの曲。クールな伊藤さんの曲。・・・と思ってもみたが、その見立てを裏切る箇所も多々あって愉しい。

●伊藤志宏
audace@渋谷Bar Subterraneans(2019年)
伊藤志宏+瀬尾高志@稲毛Candy
(2018年)

●岩川光
岩川光『バロッケーナ』@木内ギャラリー(2020年)
岩川光+山崎阿弥@アートスペース.kiten(2018年)


アブ・バース『And She Speaks - A Collection of Ballads』

2020-04-29 09:16:50 | アヴァンギャルド・ジャズ

アブ・バース『And She Speaks - A Collection of Ballads』(catalytic sound、2017年)を聴く。

Ab Baars (ts, cl, shakhachi)

ソロ集。悠然というか、ほとんどワビサビである。時間の進み方が遅すぎて、「Naima」とか「Solitude」とか「Body and Soul」とかの断片が散りばめられているようなのだが、気づく前にいつの間にか他の考え事をしてしまっている。だから尺八もテナーもクラも似たようなものだ。

それにしてもヘンな人だな。去年ビムハウスでICPオーケストラを観たが、そのときもおもしろかった。ピアノの矢部優子さんによると人柄もおもしろいそうである。

●ICP
ICP+Waterlandse Harmonie@アムステルダムBimhuis(2019年)
ICPオーケストラ『Bospaadje Konijnehol』の2枚(1986-91年)


ティム・バーン『The Fantastic Mrs. 10』

2020-04-27 20:25:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

ティム・バーン『The Fantastic Mrs. 10』(Intakt、2019年)を聴く。

Tim Berne's Snakeoil:
Tim Berne (as)
Marc Ducret (g)
Matt Mitchell (p, tack p, modular synth)
Oscar Noriega (bcl, bb-cl)
Ches Smith (ds, vib, glockenspiel, Haitian tanbou, gongs)

待望のスネイクオイル新作。レーベルがこれまでのECMからIntaktとなり、またギターがライアン・フェレイラからマルク・デュクレに変わった。レーベルのことはともかく、ギタリストの違いによるサウンドへの影響はやはり大きい。フェレイラもデュクレもヤバい人だが、音がスマートからより捨て鉢なものにシフトしたような。

それよりも大きな変化として感じられることだが、サウンドの方向性を確信的に定めたように思える。

コンポジションに沿って共同作業で創り上げてゆくものは、従来型の各々が引き立つようなアンサンブルなどではまったくない。コンポジションという共通の参照先を持ちつつ、ユニゾンで近づいたり各自がブーストしたりして、5本の強靭な脈動を走らせている。その結果として、たとえば粘りうねるティム・バーンのアルトがオスカー・ノリエガのバスクラと強力に接続されているようなところもある。すなわち有機的な結合のさまがこれまでとはまた別次元に移行しているようである。同じコンポジションという言葉でもずいぶん適用の仕方が異なるものだ。

粘りのバーンとノリエガ、糊のデュクレ、それから散発的な煌めきのマット・ミッチェルとチェス・スミス。これは凄い。華々しい悪夢のようだ。

●ティム・バーン
ティム・バーン Snakeoil@Jazz Standard(2017年)
ティム・バーン+マット・ミッチェル『Angel Dusk』(2017年)
イングリッド・ラブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
ティム・バーン『Incidentals』(2014年)
イングリッド・ラブロック『ubatuba』(2014年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)
ティム・バーン『Electric and Acoustic Hard Cell Live』(2004年)
ティム・バーン『The Sublime and. Science Fiction Live』(2003年)
ティム・バーン+マルク・デュクレ+トム・レイニー『Big Satan』(1996年)
ルイ・スクラヴィス+ティム・バーン+ノエル・アクショテ『Saalfelden '95』(1995年)
ジョン・ゾーン『Spy vs. Spy』(1988年)
ジュリアス・ヘンフィルのBlack Saintのボックスセット(1977-93年)


松平誠『東京のヤミ市』

2020-04-22 19:48:48 | 関東

松平誠『東京のヤミ市』(講談社学術文庫、原著1995年)を読む。

ヤミ市は戦後の焼け野原に拡がった。1940年代末期にGHQの意向のもと東京都などがヤミ市撤去命令を出し、そこから狭い横丁や高架下やビルに押し込められた場所が、今に残るヤミ市跡である。従ってこのふたつは土地に対する考え方が異なる。焼け跡を再興したのだと胸を張るテキ屋と、もともとその土地を所有していた者との土地に対する考え方が異なるとする指摘は興味深い。

台湾系華僑と組との抗争があった渋谷や新橋、東口の北と南とで棲み分けた新宿、電気屋が発展した神田(のちにかれらが秋葉原に移る)、食糧が入ってくる池袋や上野など、ヤミ市の性格が街によって違っていたとする説明には納得させられる。上野のアメ横は、引揚者たちの組合が買い上げたものだという歴史は知らなかった。テキ屋が跋扈するヤミ市とはいえ、最初のうちはほとんどが素人だったからこそ、多様な形成がなされた。

1947年6月には都内の料飲店営業が全面的に禁止される。そこからヤミ市は地下に潜り、商人たちも素人からプロへと化してゆく。それも生き抜くための必要があったからである。どうしてもコロナ禍の今と重ね合わせたくなってしまう。まともな現代社会でヤミ市でもあるまいに・・・。

●参照
藤木TDC、イシワタフミアキ、山崎三郎『消えゆく横丁』
藤木TDC『東京戦後地図 ヤミ市跡を歩く』
フリート横田『東京ヤミ市酒場』


松岡哲平『沖縄と核』

2020-04-22 07:52:19 | 沖縄

松岡哲平『沖縄と核』(新潮社、2019年)を読む。

施政権返還前の沖縄に核兵器が持ち込まれていたことは今ではよく知られている。しかし、ここまで大規模で、かつ広島・長崎後の核戦争を現実的に想定したものであったとは知らなかった。ピーク時の1967年には1,300発の核兵器が沖縄に置かれていたという。

朝鮮戦争が休戦となり、1953年ないし54年から、沖縄に核兵器が持ち込まれはじめた。たとえば小型のものであり、超低空からひょいとアクロバティックに放り投げるようにしてすぐに離脱する類のもの(LABS:低高度爆撃法)。つまり戦略核から戦術核へのシフトである。この訓練場として伊江島が選ばれた。戦後強制的に米軍に多くの土地が奪い取られた場所だが、それはここまで直接的に核戦争という文脈の中に置かれていたのだ。難しい爆撃方法であり、的から外れるため、広い場所を必要としたわけである。

沖縄本島の米軍基地面積が急に増えたのは1950年代後半である。日本の「本土」より置きやすいために海兵隊が移駐してきたわけだが、その理由も「核」であった。台湾海峡に近いなどという地政学的な理由、安いという経済的な理由だけではなかったのである。アメリカ政府は、日本人の反基地感情のもととなるものが反核感情にあると認識していた。

1958年に中国人民解放軍による台湾金門島砲撃があった(第二次台湾海峡危機)。このとき米軍による中国への核攻撃の可能性がかなり高まっていた。歴史の中に位置付けられるべき潜在的な核戦争のトリガーは、キューバ危機(1962年)の前にあった。

おそるべきことに、沖縄への核配備は攻撃のためだけではなかった。基地が敵の手に落ちるくらいなら、海兵隊は核兵器で自基地を破壊するという原理があった。沖縄を物理的に「捨て石」にするのは、なにも沖縄戦までのことではなかったのである。

1960年の日米安保条約および1972年の施政権返還に際して、いくつかの「密約」が日米政府間で交された。そのひとつは、返還後も有事の際には事前協議なしで核を沖縄に持ち込んでよいというものであった。半分表向きは核抜きでも沖縄の自由使用を維持しようとしたわけだが、それも実のところ意図的な抜け穴だらけだった。そして「密約」を含め、政府間の合意が曖昧なことは、核兵器の有無に関して「肯定も否定もしない」というアメリカの政策に沿ったものであった。

もちろんこれは単なる昔話ではない。事前協議はいちども実施されたことがない(オスプレイ導入時を含め)。核に限ってみても、日本の核燃サイクルへの固執はどう評価されるべきものか。太田昌克『日米<核>同盟』においては、アメリカへの忖度ではなく日本独自の示威能力のために核ポテンシャルを手放すべきではないという考えを持つ者もある、との指摘がある。

●参照
山本昭宏『核と日本人』
徐京植、高橋哲哉、韓洪九『フクシマ以後の思想をもとめて』
太田昌克『日米<核>同盟』
高橋哲哉『犠牲のシステム 福島・沖縄』、脱原発テント
『活断層と原発、そして廃炉 アメリカ、ドイツ、日本の選択』
前田哲男『フクシマと沖縄』
鎌田慧『六ヶ所村の記録』
『核分裂過程』、六ヶ所村関連の講演(菊川慶子、鎌田慧、鎌仲ひとみ)
山本義隆『福島の原発事故をめぐって』
『大江健三郎 大石又七 核をめぐる対話』、新藤兼人『第五福竜丸』
有馬哲夫『原発・正力・CIA』
マルグリット・デュラス『ヒロシマ・モナムール』
アラン・レネ『ヒロシマ・モナムール』


向島ゆり子『Solo』

2020-04-21 21:07:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

向島ゆり子『Solo』(uramado、2019年)。

Yuriko Mukoujima 向島ゆり子 (vl, viola, voice, p)

限定版LPをうっかり買い逃してしまったので、bandcampのデジタルアルバムを入手した。

新宿ゴールデン街の裏窓と、向島さんの自宅で録音されている。わたしが2016年に裏窓でソロを観たときは、最後の1曲を除いてすべてピアノだったけれど、本盤ではヴァイオリンもヴィオラも使っている。

胸をかきむしるように弦が軋む最初の曲で驚かされる。情念のヴォイスに底流の弦が追従する2曲目にも気持ちが動かされる。長い「Rain」は、ピアノでまさに雨のように音数を絞り、湿って響くセンチメンタルな演奏。どれも良い。向島さんの演奏にはどこにも深い情みたいなものがあって、演奏がそのとき表面的に静かであろうと激しかろうと、内実は心の奔流なのだなと思わされる。


ウィレム・ブロイカー・コレクティーフ『Out of the Box』

2020-04-12 17:06:29 | アヴァンギャルド・ジャズ

ウィレム・ブロイカー・コレクティーフ『Out of the Box』(BVHAAST、1970-2012年)。狂喜乱舞11枚組である。

Willem Breuker Kollektief

普段はボックスセットは苦手で途中で飽きてしまうのだが、これは数少ない例外である(オーネット・コールマンのアトランティック・ボックスのように)。とは言え入手してからつまみ食いみたいにピックアップしていたので、数日間をかけて通して聴いた。

わかってはいることだが、どこを切っても悦楽に満ち溢れている。ヨーロッパの集団即興ならではの感覚はこの祝祭感か。個々のブレを最大限に許容しながらピタリとあわせ、しかし個々に次々にステージ上のスポットライトが回ってくる劇場感か。それらを可能にする共同体感か。ブロイカーは要所要所でサウンドという物語を途切れさせないよう現れる。いちどだけコレクティーフの演奏を観てその姿に感嘆した。

たぶんこれは毎回同じようでいて違うのだろう(渋谷毅オーケストラがそうであるのと同じようで、違うようで)。6枚目の「Umeå 1978」では同年のコレクティーフによる名盤『Summer Music』にも収録されている「Conditione Niente」が演奏されていて、こちらのほうがはみ出しているのかなと思える瞬間もあった。

そしてクルト・ヴァイルだろうと「Sentimental Journey」だろうとショパンの「英雄ポロネーズ」だろうと他の音の連なりとなんの隔てもなく愉しんで演奏し、それが全体としての凄まじい強度につながっている。「Strings」は何人かの弦楽器が加わっていて、それが普段と違って合いの手のようでおもしろい。

いや充実。また忘れたころに数日間をこのボックスセットに捧げよう。

(取り出して読んでいたはずのブックレットがどこかに行方不明)

●ウィレム・ブロイカー
ウィレム・ブロイカーの映像『Willem Breuker 1944-2010』
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
ウィレム・ブロイカーの『Misery』と未発表音源集(1966-94、2002年)
ウィレム・ブロイカーが亡くなったので、デレク・ベイリー『Playing for Friends on 5th Street』を観る(2001年)
レオ・キュイパーズ『Heavy Days Are Here Again』(1981年)
ウィレム・ブロイカーとレオ・キュイパースとのデュオ『・・・スーパースターズ』(1978年)
ウィレム・ブロイカー・コレクティーフ『The European Scene』(1975年)
ギュンター・ハンペルとジーン・リーの共演盤(1968、69、75年)
ハン・ベニンク+ウィレム・ブロイカー『New Acoustic Swing Duo』(1967、68年)


神田綾子+北田学@渋谷Bar Subterraneans(動画配信)

2020-04-12 14:47:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷のBar Subterraneans(2020/4/11)。

Ayako Kanda 神田綾子 (voice)
Manabu "Gaku" Kitada 北田学 (bcl, cl)

通常のライヴ鑑賞ではなく無観客での映像収録とライヴ・ストリーミング。もちろんウィルス感染を回避するための方法である。PC音楽の某氏がそのために来日できなくなり、このユニークなヴォイス・パフォーマーの相手として、この配信を前提として北田学さんとの新たなデュオが組まれた。グループ名はその場で「キタカンダ」と決まった(本当か?)。

短いクリップ撮影のあと(しばらくしたらクールなやつがあがってくるはずだ)、FBで配信しながらの共演。

北田さんは主にバスクラを吹いたのだが、あわせてわりと最近使い始めたというエフェクターを音に噛ませている。それにより、共鳴領域の底部が木管らしく響く低音と、裏声のごとき高音とが分かたれ、別々の声を持つ分身としてサウンドを創り出した。バスクラとエフェクターとの相性のおもしろさに惹かれるものだった。

一方の神田さんはもともと幅広い音領域において、激しいブラウン運動のように上下に左右に往還する。音波を発する場所によってサウンド全体から得られる印象は大きく異なっている。そしてバスクラやクラの音への応答としてのヴォイスもときどき聴こえる。逆に、北田さんも明らかにヴォイスに重なる音を出す(これはエフェクターを切ったときのほうに感じられた)。

やはりというべきか、想像以上で嬉しくなるというべきか、ふたりの音がもつ強度が相乗効果をもたらしている。

>> ライヴ映像

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●北田学
鈴木ちほ+北田学@バーバー富士(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ+喜多直毅+西嶋徹@なってるハウス(2019年)
audace@渋谷Bar Subterraneans(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(JazzTokyo)(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans(2019年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(2017年)


エドワード・ヤン『クーリンチェ少年殺人事件』再見

2020-04-07 07:39:55 | 中国・台湾

エドワード・ヤン『クーリンチェ少年殺人事件』(1991年)を再見した。

公開後権利関係の理由だとかで観ることが困難な時期が長く続いて、当時、わたしは香港のセラーからVCD(アジアで普及した、そのようなものがあった)を買って観た。4枚組とは言え画質がとても悪く、英語字幕もあまり読み取れなかった。それでも傑作だとわかった。3年ほど前にリバイバル上映があったときには満員で入れなかった。そんなわけで、amazon primeにあることを知って嬉しかった。

戦後の台湾における外省人と内省人との軋轢。これを直接的なドラマではなく、子どもという複雑でどう変化するかわからないフィルターを通して描いたことがユニークである。

そして、画面の細部から得られる印象はとても大きい。固定した引きの撮影で、自分ではどうにもならず把握さえできない大きな歴史の中に置かれた者たちの姿を描いている。広角レンズを多用し、被写界深度の深さにより、壁や痕跡や人を同列に見せるのも良い。引きによるかれらとの間の空気感は、時間の積み重なりを感じさせる効果を与えているように思える。

やはり大傑作だった。

●エドワード・ヤン
エドワード・ヤン『恋愛時代』(1994年)
エドワード・ヤン『クーリンチェ少年殺人事件』(1991年)


秘密基地『ぽつねん』

2020-04-05 21:45:08 | アヴァンギャルド・ジャズ

秘密基地『ぽつねん』(2019年)。

Yusei Takahashi 高橋佑成 (synth, p)
Tokutaro Hosoi 細井徳太郎 (g)
Ryotaro Miyasaka 宮坂遼太郎 (perc)
Manami Kakudo 角銅真実 (vo) (track4, 6)

先日ライヴのときに細井徳太郎さんから購入した。四隅にそれぞれがサインをするのだということになり、とりあえずひとり分。細井さんはそのときに中のCD-Rにも何やら書いていて、「くたばれ」とかだったりしてとわくわくして後で見たら、「ぽ ひみつきち」とあった。しかしこのコロナ騒動で四隅が埋まるのはいつの日か。

秘密基地のライヴはいちどだけ観た(アルバムと同様に、角銅真実さんがゲスト)。密かに愉しむぞという静かな決意みたいなものがあって、それがとても良かった。

このアルバムも衒いがない。2曲目の「tobichiru」もストレートとも言える遊びだし、3曲目の「Kioku」は昔視た宇宙空間の夢のようで、そんな宇宙の浮遊から、「ホコリヲハイタラ」での角銅さんの声の浮遊に移行する。ここではピアノを急に歌伴のように弾き始めて、その変化もおもしろい。それまで音への距離がパーカッションだけ近い(室内のそのへん)ように思えていたが、ここで全員が近寄ってきた。そしてまた遊びの電子音に戻っていく。5曲目は脈動みたいだなと思って曲名を見たら「Myaku」だった。

静かな「ぽつねん」、そのまましみじみとエピローグ。

●高橋佑成
秘密基地@東北沢OTOOTO(2019年)
謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)
森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO
(2016年)

●細井徳太郎
坪口昌恭+細井徳太郎@下北沢No Room For Squares(2020年)
細井徳太郎+松丸契@東北沢OTOOTO(2019年)
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)
李世揚+瀬尾高志+細井徳太郎+レオナ@神保町試聴室(2019年)
細井徳太郎+君島大空@下北沢Apollo(2019年)
秘密基地@東北沢OTOOTO(2019年)
謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
合わせ鏡一枚 with 直江実樹@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)
伊藤匠+細井徳太郎+栗田妙子@吉祥寺Lilt
(2018年)

●宮坂遼太郎
秘密基地@東北沢OTOOTO(2019年)

●角銅真実
秘密基地@東北沢OTOOTO(2019年)
The Music of Anthony Braxton ~ アンソニー・ブラクストン勉強会&ライヴ@KAKULULU、公園通りクラシックス(JazzTokyo)(2019年)
角銅真実+横手ありさ、田中悠美子+清田裕美子、すずえり+大城真@Ftarri(2018年)
網守将平+岡田拓郎、角銅真実+滝沢朋恵、大城真+川口貴大@Ftarri(2017年) 


大西英雄『ヒデヲの間』

2020-04-05 18:02:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

大西英雄『ヒデヲの間』(地底レコード、-2020年)を聴く。

Hideo Onishi (ds, vo)

いきなり「いぬ」に心を掴まれる。何ワンワンって!そこから先はちょっと悶絶する。ゲシュタルト崩壊するまでモウモウと呟く「うし」とか最高。「カタツムリ」なんてコロナ時代を予測していたのか?

話すように叩くドラマーと言えばアメリカのアリ・ホーニグを思い出すが、これはそういうものとは全く違い、伸び縮みする日本語のノリそのものだ。どちらかと言えば、喋りの断片をそのままボクシングのリズムに置き換える板垣学(『はじめの一歩』)である。

バンドでもソロでもライヴを観てみたい。


ハン・ベニンク+ウィレム・ブロイカー『New Acoustic Swing Duo』

2020-04-05 16:27:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

ハン・ベニンク+ウィレム・ブロイカー『New Acoustic Swing Duo』(Corbett vs. Dempsey、1967、68年)を聴く。

Han Bennink (ds, perc, voice)
Willem Breuker (reeds)

超愉楽の2枚組。1枚目が同タイトルのオリジナル盤、2枚目が発掘録音。このタイトルとか、たぶんげらげら笑いながら付けただろう。

2回通して聴いた限りだが、どちらかと言えば2枚目のライヴ録音の方が好みだ。2曲目の「とにかく糸を切らさずに吹き続ける」ところはコレクティーフのキャラ相似形(大矢内愛史さんはブロイカーのような祝祭型ではないが、意識したことはあったのだろうか)。5曲目のバスクラを使って東洋のダブルリード楽器のような裏声を出し、小節もなんも無視して自分に時間進行を引き寄せた世界を展開する時間なんておもしろくて悶える。

かように、ブロイカーは如何に変な音を真面目な顔で出し続けるのかに挑戦する超人である。しばしば喉を開いて下品な音を出してみせるが、それが表現として祝祭要素にもつながっている。そしてどうしてもヨーロッパ的な印象がある。

一方のハン・ベニンクもやはり超人的に継続する(=継続そのものが超人的だ)。ひとつひとつのパルスが笑いと活力に満ちていて、その全体が大いなるうねりを創り出している。

脳内再生しただけで笑える偉大な音楽。聴いてよかった。

●ウィレム・ブロイカー
ウィレム・ブロイカーの映像『Willem Breuker 1944-2010』
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
ウィレム・ブロイカーの『Misery』と未発表音源集(1966-94、2002年)
ウィレム・ブロイカーが亡くなったので、デレク・ベイリー『Playing for Friends on 5th Street』を観る(2001年)
レオ・キュイパーズ『Heavy Days Are Here Again』(1981年)
ウィレム・ブロイカーとレオ・キュイパースとのデュオ『・・・スーパースターズ』(1978年)
ウィレム・ブロイカー・コレクティーフ『The European Scene』(1975年)
ギュンター・ハンペルとジーン・リーの共演盤(1968、69、75年)

●ハン・ベニンク
ICP+Waterlandse Harmonie@アムステルダムBimhuis(2019年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
ハン・ベニンク@ディスクユニオン Jazz Tokyo(2014年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
イレーネ・シュヴァイツァーの映像(2006年)
ハン・ベニンク キヤノン50mm/f1.8(2002年)
ハン・ベニンク+ユージン・チャドボーン『21 Years Later』(2000年)
エリック・ドルフィーの映像『Last Date』(1991年)
ICPオーケストラ『Bospaadje Konijnehol』の2枚(1986-91年)
レオ・キュイパーズ『Heavy Days Are Here Again』(1981年)
レオ・キュイパーズ『Corners』(1981年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981、91、98年)
デレク・ベイリー+ハン・ベニンク+エヴァン・パーカー『Topographie Parisienne』(1981年)
アネット・ピーコック+ポール・ブレイ『Dual Unity』(1970年)
ウェス・モンゴメリーの1965年の映像(1965年)
ミシャ・メンゲルベルク『Driekusman Total Loss』(1964、66年)


『アマミアイヌ』、マレウレウ『mikemike nociw』

2020-04-05 13:51:19 | 北海道

『アマミアイヌ』(Chikar Studio/Tuff Beats、-2019年)はなかなか驚きのメンバーである。何しろ奄美の朝崎郁恵、アイヌ音楽からはRekpo(マレウレウのリーダー)、KapiwとApappoの姉妹、トンコリのOKI。さらに2004年に亡くなった安東ウメ子の声のサンプリング。

ヴィブラートなどというものを一万倍も逸脱した朝崎郁恵の外れた声を聴くたびに、脳を揺さぶられるような動揺を覚えるのだが、これがアイヌの曲に入り込み、何人もの独立しつつ手をつなぎつつ立ち上がる声と重なり干渉する。ときにトンコリの音が聴こえると、それはまた別次元のものとして驚く。

沖縄とアイヌということであれば、長く続く中野のチャランケ祭もあるし、OKI meets 大城美佐子『北と南』という素晴らしい成果もあった。だがチャネルはそれにとどまらない。奄美の歌声を、朝崎さんのみならず他の唱者の参加にも拡張したらどうなるだろう。

改めて、同時期にリリースされたマレウレウ『mikemike nociw』(Chikar Studio/Tuff Beats、-2019年)も聴いてみると、常に声と声とのずれを生じさせながら、静寂の中からぬっとおもしろくも奇妙でも懐かしくもある貌をみせるコーラスのおもしろさが、なおさら感じられる。

朝崎郁恵 (vo)
Rekpo (vo)
Kapiw & Apappo (vo)
OKI (tonkori)
安東ウメ子 (vo)
etc.

rekpo, hisae, mayunkiki, rimrim (vo)

●アイヌ
マレウレウ『cikapuni』、『もっといて、ひっそりね。』(2016年)
MAREWREW, IKABE & OKI@錦糸公園(2015年)
OKI DUB AINU BAND『UTARHYTHM』(2016年)
OKI meets 大城美佐子『北と南』(2012年)
安東ウメ子『Ihunke』(2001年)
『今よみがえるアイヌの言霊~100枚のレコードに込められた思い~」』
新谷行『アイヌ民族抵抗史』
瀬川拓郎『アイヌ学入門』
植民地文化学会・フォーラム「内なる植民地(再び)」
新大久保のアイヌ料理店「ハルコロ」
上原善広『被差別のグルメ』
モンゴルの口琴 

●参照
朝崎郁恵@錦糸公園(2015年)
西沢善介『エラブの海』 沖永良部島の映像と朝崎郁恵の唄


松丸契+永武幹子+マーティ・ホロベック@なってるハウス(JazzTokyo)

2020-04-05 10:13:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウス(2020/3/11)。レビューをJazzTokyo誌に寄稿した。

>> #1124 松丸契+永武幹子+マーティ・ホロベック

Kei Matsumaru 松丸契 (as)
Mikiko Nagatake 永武幹子 (p)
Marty Holoubek (b)

Photo by m.yoshihisa

●松丸契
松丸契@下北沢No Room For Squares(2020年)
松丸契+片倉真由子@小岩コチ(2020年)
細井徳太郎+松丸契@東北沢OTOOTO(2019年)
松丸契『THINKKAISM』(2019年)
纐纈雅代+松丸契+落合康介+林頼我@荻窪ベルベットサン(2019年)
m°Fe-y@中野Sweet Rain(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)

●永武幹子
吉野弘志+永武幹子@アケタの店(2020年)
酒井俊+纐纈雅代+永武幹子@本八幡cooljojo(2019年)
かみむら泰一+永武幹子「亡き齋藤徹さんと共に」@本八幡cooljojo(2019年)
酒井俊+青木タイセイ+永武幹子@本八幡cooljojo(2019年)
古田一行+黒沢綾+永武幹子@本八幡cooljojo(2019年)
蜂谷真紀+永武幹子@本八幡cooljojo(2019年)
2018年ベスト(JazzTokyo)
佐藤達哉+永武幹子@市川h.s.trash(2018年)
廣木光一+永武幹子@cooljojo(2018年)
植松孝夫+永武幹子@中野Sweet Rain(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2018年)
永武幹子+類家心平+池澤龍作@本八幡cooljojo(2018年)
永武幹子+加藤一平+瀬尾高志+林ライガ@セロニアス(2018年)
永武幹子+瀬尾高志+竹村一哲@高田馬場Gate One(2017年)
酒井俊+永武幹子+柵木雄斗(律動画面)@神保町試聴室(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)
永武幹子+瀬尾高志+柵木雄斗@高田馬場Gate One(2017年)
MAGATAMA@本八幡cooljojo(2017年)
植松孝夫+永武幹子@北千住Birdland(JazzTokyo)(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)

●マーティ・ホロベック
マーティ・ホロベック「Trio I」@蔵前Nui Hostel(2020年)
渡辺翔太+マーティ・ホロベック@下北沢Apollo(2020年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)


ウェバー/モリス・ビッグバンド『Both Are True』(JazzTokyo)

2020-04-05 10:06:26 | アヴァンギャルド・ジャズ

ウェバー/モリス・ビッグバンド『Both Are True』(Greenleaf Music、2018-19年)のレビューをJazzTokyo誌に寄稿した。

>> #1970 『Webber/Morris Big Band / Both Are True』

Angela Morris (conductor, ts, fl)
Anna Webber (conductor, ts, fl)
Jay Rattman (as, ss, fl)
Charlotte Greve (as, cl)
Adam Schneit (ts, cl)
Lisa Parrott (bs, bcl)
John Lake (tp, flh)
Jake Henry (tp, flh)
Adam O’Farrill (tp, flh)
Kenny Warren (tp, flh)
Tim Vaughn (tb)
Nick Grinder (tb)
Jen Baker (tb)
Reginald Chapman (b-tb)
Patricia Brennan (vib)
Dustin Carlson (g)
Marc Hannaford (p)
Adam Hopkins (b)
Jeff Davis (ds)

●アンナ・ウェバー
「JazzTokyo」のNY特集(2019/7/6)
マット・ミッチェル『A Pouting Grimace』(2017年)
ハリス・アイゼンスタット『Recent Developments』(2016年)