Sightsong

自縄自縛日記

ハーレム・スタジオ美術館再訪

2015-09-30 23:23:58 | 北米

NYのハーレム・スタジオ美術館を再訪した。コンセプトを定め、しっかりした展示を行っているという印象をまた抱く。

◆スタンリー・ホイットニー「Dance of Orange」

スタンリー・ホイットニーは、「Dance of Orange」というシリーズにおいて、矩形と線により構成された抽象画を展開している。一見似ているようでいてそれぞれ異なり、そこにはダンスとリズムがあるようだ。

面白いことに、ジェームス・ブラウン、ティナ・ターナーなどの歌手をモチーフにした作品がいくつもある。下の作品は、ニーナ・シモンの歌にインスパイアされた「My Name Is Peaches」。

◆ロレイン・オグラディ「Art Is...」

ハーレムにおける「アフリカン・アメリカン・デイ」のとき、ローレン・オグラディは大きな額縁を用意し、街の人々にフレーム内の自分を表現してもらうことを行った。これはつまり、アートを特権階級から取り戻すのと同時に、匿名性・無名性・マスという暴力によりサバルタンと化してしまうことから個別性と名前を取り戻し、異議申し立てをしていることにもなるのだと思った。これは日本の運動においても面白い試みになりうるのではないか。

(なお、この作品群は、MOMA PS1で行われた「ゼロ・トレランス」展でも展示されていた。)

◆ローレン・ハルシーのインスタレーション

ローレン・ハルシーは大がかりなインスタレーションを展示している。マルコムXやキング牧師(ちょうどこの近くに、ふたりの名前を冠した通りがある)が掘られた石板や、ピンク色のごつごつした岩を見ながら歩き進んでいくと、キッチュなジオラマがある。ハーレムに住む者としてのプライドと、強烈なルーツ=アフリカ回帰を示した作品だということができるのだろうか。

●参照
ハーレム・スタジオ美術館(2014年6月)
2014年6月、ニューヨーク(4) ハーレム
ジーン・バック『A Great Day in Harlem』
MOMA PS1の「ゼロ・トレランス」、ワエル・シャウキー、またしてもビョーク(ロレイン・オグラディ)
ナショナル・アカデミー美術館の「\'self\」展(ハーレムで活動するトイン・オドゥトラ)


ホイットニー美術館の「America is Hard to See」展

2015-09-29 23:19:33 | 北米

NYのホイットニー美術館が、今年(2015年)になって移転・再オープンした。設計はレンゾ・ピアノである。

移転前も新設工事中も観ていたこともあり、楽しみにしていた。メーリングリストにて送られてくるニュースによれば、8月にマタナ・ロバーツ、9月の頭には小杉武久が演奏しており、近くにあったならどんなにいいだろうかと思った。


今回(2015年9月)


移転前(2014年6月)

このタイミングで開催されていた展覧会は「America is Hard to See」展。社会的にも、政治的にも、人種的にも、そして文化的にも、とてもひとつに括ってとらえることができない「アメリカ」をターゲットにしたものとして、とても興味深い。

いくつか印象的な作品。

ロメア・ビアーデンの「Eastern Barn」。デューク・エリントン『Live at the Whitney』のジャケットに採用された絵である。

言うまでもなくアメリカは移民の国である。これは、オスマン帝国政府によるアルメニア人大虐殺(1915年)によって母親を失ったアーシル・ゴーキーによる作品であり、両親の肖像写真をもとに描かれている。

ベン・シャーンはリトアニアでユダヤ人として生まれ、20世紀初頭にアメリカに移住した。この作品は、1920年にアメリカで死刑に処せられたイタリア人移民をモチーフにしている。かれらはアナーキストではあったが、犯罪自体は冤罪であったとされる。シャーンならではの作品か。

こんなものがあったのか、エドワード・ホッパーによる名作「Nighthawks」の習作。

抽象表現主義のバーネット・ニューマンフランツ・クラインマーク・ロスコの作品が並んでいるのは壮観。そしてニューマンはロシア系移民の子、ロスコはラトビアからの移民。

ジェフ・クーンズナムジュン・パイクという消費社会時代の美術家を同時に観ることができるのも、アメリカならではだ。

2001年の「9・11」後、アメリカ社会はさまざまな方向に変質し、アーティストも突き動かした。ポーランド出身のアレクサンドラ・ミアは、2007年、マンハッタンのギャラリーをプレスルームのように偽装し、「9・11」前のタブロイド紙などをモチーフにした作品を作り出した。

●参照
ホイットニー美術館のジェフ・クーンズ回顧展


サシャ・ペリー@Smalls

2015-09-29 00:46:52 | アヴァンギャルド・ジャズ

NY滞在中に最後にもうひとつだけライヴを観ようと、Smallsに足を運んだ(2015/9/27)。目当ては22:30からのサシャ・ペリーのステージである。

Sacha Perry (p)
不明 (b)
不明 (ds)

以前に『eretik』を聴いて、バド・パウエルやエルモ・ホープを思わせるスタイルに好感を持っていたのだが、驚いたことに、目の前のペリーはセロニアス・モンクの亜流と化していた。頭の中を疑問符が浮かび、素直に聴くことはとてもできなかった。

Nikon P7800

●参照
サシャ・ペリー『eretik』


イヴァ・ビトヴァ@Poisson Rouge

2015-09-29 00:33:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

55 Barを出て近くのPoisson Rougeに行き、21時からのイヴァ・ビトヴァのステージを観た。

Iva Bittova (vo, vln)
The Window Quartet (as, p, b, ds)

何年か前、キャンベラでのステージを見逃していたこともあって、ようやく、甲高いヴォイスと東欧的なヴァイオリンを聴くことができた。最近は日本でも演奏しているのかな。

それはいいのだが、ビトヴァは少し弾いて唄っては、ステージ脇に退き、カルテットの演奏を見守っている。それもあまり水準が高いとは思えない。しかも、ステージの照明は眩しくてくらくらする。

そんなわけで、不満だらけのステージだったのだが、周囲を見渡すと、みんな陶然とした顔で笑っている。なにが起きているのだろう。 

Nikon P7800


マット・ウィルソン@55 Bar

2015-09-29 00:16:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

55 Barでは、18時からのライヴをやる場合にはチャージを取らず飲み物代だけ。ちょうど、マット・ウィルソンの誕生日を兼ねたライヴだということで覗いてみた(2015/9/27)。

この日はウィルソンが若者で編成した新グループのお披露目。誕生日ということでウィルソンがスピーチをすると、いちいち店の名物オヤジが出てきて「あと30年で死ぬ」だのなんだのと混ぜっ返して、店内は大爆笑。

Bryan Qu (ts)
Evan Wright (g)
Nick Dunston (b)
不明 (vo)
Matt Wilson (ds)

ウィルソンはやはりディスクで聴く通りのドンシャドンシャというドラムス。笑いながらメンバーの引き立て役に徹していた。

この日すごく目立っていたのが、テナーサックスのブライアン・キュー。吹くたびにアプローチを工夫していて、自信に満ちていてとてもよかった。あとで聴くと、中国生まれの北米育ちだという。

 

Nikon P7800


ジョナサン・フィンレイソン+ブライアン・セトルズ@6BC Garden

2015-09-28 21:16:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

アンドリュー・ラム+シェイナ・ダルバーガートッド・ニコルソン+ニューマン・テイラー・ベイカー+ダニエル・カーターに引き続き、この日のトリはジョナサン・フィンレイソンとブライアン・セトルズとのデュオ(2015/9/27)。

フィンレイソンには『Moment & the Message』という傑作があり、そのテクノロジー空間を自在に行き来するようなサウンドを創り上げた人が、植物公園というまったく異なる環境で何をしてくれるのか、とても興味があった。

Jonathan Finlayson (tp)
Brian Settles (ts)

まったく予想していなかったことに、このふたりは譜面台を見ながら、まるで練習曲のような、習作のような演奏を繰り広げた。その場を強度と濃淡とで盛り上げるものではなかったため、集まったひとたちは公園の中でまったりしていた。

しかしそれはそれで面白いものだった。この習作のような曲は、さまざまなリズムやテンポを組み合わせ、どのように楽器が入っていくのか工夫を凝らしたものに聴こえた。構造を静かにリコンストラクトしているのだった。

終わった後にフィンレイソンに話をしてみると、来年また作品を発表する予定だとのこと。楽しみである。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4

●ジョナサン・フィンレイソン
ジョナサン・フィンレイソン『Moment & the Message』

●Arts for Art
トッド・ニコルソン+ニューマン・テイラー・ベイカー+ダニエル・カーター@6BC Garden(2015年)
アンドリュー・ラム+シェイナ・ダルバーガー@6BC Garden(2015年)
マイケル・ウィンバリー@Children's Magical Garden(2015年)
While We Still Have Bodies@Children's Magical Garden(2015年)
ニック・ライオンズ+ピート・スワンソン@Children's Magical Garden(2015年)
ヴィンセント・チャンシー+ジョシュ・シントン+イングリッド・ラブロック@Arts for Art(2015年)
ジョー・モリス+ヤスミン・アザイエズ@Arts for Art(2015年)
ダロ・ベルージ+アーロン・ジョンソン+スティーヴ・ウッド+マーク・ジョンソン@Arts for Art(2015年)
アンドリュー・ドルーリー+ラブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art(2015年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)


トッド・ニコルソン+ニューマン・テイラー・ベイカー+ダニエル・カーター@6BC Garden

2015-09-28 20:24:59 | アヴァンギャルド・ジャズ

アンドリュー・ラム+シェイナ・ダルバーガーに続き、トッド・ニコルソン、ニューマン・テイラー・ベイカー、ダニエル・カーターのトリオ。ちょうどピアニストの蓮見令麻さんも現れた。

Todd Nicholson (b)
Newman Taylor Baker (ds)
Daniel Carter (tp, ss, as, ts)

トッド・ニコルソンのベースは硬めに時間を刻んでいくような感覚。トッドさんの息子さんもドラムスに横から参加し会場を盛り上げた。

そして、非常に面白かったのはダニエル・カーターのサックスだ。サックスはフィジカルなものが音色にも影響するはずで、その意味で、細身のカーターの肉体から放出される音は、前夜に観たトニー・マラビーや先のアンドリュー・ラムの太いストリームとはまったく違うものだった。それはアルトもテナーもソプラノと似たような雰囲気の音色であり、ナイフで削った固い樹や柔らかい樹がしなって空間に絵を描いていく様子を想像した。

蓮見さんは、終わったあとに、前に出てこずに伴奏のように聴こえるユニークなサックスだと言った。確かにあるフレーズの塊を主役としてパフォームするタイプとは違うのだなと思った。

終わったころに、近くのThe Stoneでジョン・イラバゴンのギグを観ていたというサックス奏者の吉田野乃子さんが顔を出した。こんなに狭いNYなのに、蓮見さんと吉田さんが逢うのは3年ぶりだということだった(同じニュー・スクール出身)。蓮見さんからは先日の東京での演奏や今後の活動や菊地雅章さんのこと、吉田さんからはこの11月に計画しているThe Stoneでのレジデンシーや新しいCD、当面の予定などについてまた話を聴いた。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4

●ダニエル・カーター
ダニエル・カーター『The Dream』、ウィリアム・パーカー『Fractured Dimensions』(2006、03年)

●Arts for Art
アンドリュー・ラム+シェイナ・ダルバーガー@6BC Garden(2015年)
マイケル・ウィンバリー@Children's Magical Garden(2015年)
While We Still Have Bodies@Children's Magical Garden(2015年)
ニック・ライオンズ+ピート・スワンソン@Children's Magical Garden(2015年)
ヴィンセント・チャンシー+ジョシュ・シントン+イングリッド・ラブロック@Arts for Art(2015年)
ジョー・モリス+ヤスミン・アザイエズ@Arts for Art(2015年)
ダロ・ベルージ+アーロン・ジョンソン+スティーヴ・ウッド+マーク・ジョンソン@Arts for Art(2015年)
アンドリュー・ドルーリー+ラブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art(2015年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)


アンドリュー・ラム+シェイナ・ダルバーガー@6BC Garden

2015-09-28 19:40:33 | アヴァンギャルド・ジャズ

Arts for Art主催の「In Gardens」シリーズは、前日と場所を変えて、The Stoneにもほど近い6BC Garden(2015/9/27)。イーストヴィレッジの市街地に、突然こんな濃密な植物園のような空間があろうとは、あまり知られていないに違いない。実際に、演奏するシェイナ・ダルバーガーさんも「道がわからなくて」と少し遅れて現れた。

Andrew Lamb (fl, bcl, ts)
Shayna Dulberger (b)

古い建物に取り囲まれ、植物が一杯の場所において、演奏の音は実に心地よく響いた。

アンドリュー・ラムはフルート、バスクラ、テナーと楽器を持ち替えた。特にシカゴAACMの雄として聴かせるのはテナーである(現在はブルックリン在住だそうだ)。アーシーでくさく、豪快に音を鳴らさず息を吹き込みつつ盛り上げる技を披露した。この日の夜は、Jackでドラムスのアンドリュー・ドルーリーと共演するはずで、確かに相性が良いだろうなと思った。

この肉のような音に、シェイナ・ダルバーガーのベースが有機的に絡んでいった。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4

●アンドリュー・ラム
アンドリュー・ラム『Portrait in the Mist』

●Arts for Art
マイケル・ウィンバリー@Children's Magical Garden(2015年)
While We Still Have Bodies@Children's Magical Garden(2015年)
ニック・ライオンズ+ピート・スワンソン@Children's Magical Garden(2015年)
ヴィンセント・チャンシー+ジョシュ・シントン+イングリッド・ラブロック@Arts for Art(2015年)
ジョー・モリス+ヤスミン・アザイエズ@Arts for Art(2015年)
ダロ・ベルージ+アーロン・ジョンソン+スティーヴ・ウッド+マーク・ジョンソン@Arts for Art(2015年)
アンドリュー・ドルーリー+ラブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art(2015年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)


アイヴィン・オプスヴィーク Overseas@Seeds

2015-09-27 21:34:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

ブルックリンのSeedsに足を運んだ(2015/9/26)。アイヴィン・オプスヴィークが4日間のレジデンシーをやっており、この日は最終日「Overseas」。なお、前日はオッキュン・リーとのデュオだったが残念ながら行けなかった。

Tony Malaby (ts)
Kenny Wollesen (perc)
Brandon Seabrook (banjo)
Jacob Sacks (p)
Eivind Opsvik (b)

ブランドン・シーブルックを観るのは4月以来だったが(アンドリュー・ドルーリー+ラブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art)、また来たなと覚えていて声をかけてくる。オプスヴィークは、話しているとCDをくれた。

何しろ聴きたかったトニー・マラビーを目の当たりにできて感激だ。音は期待を超えるものだった。さまざまな周波数とノイズを含み持ち、音色のマチエールは樹皮を思わせる豊かさだった。かれはほとんど眼をつむって吹いた。

セットの最初は、じわじわとバンジョーやピアノやベースが不協和音を奏でながら、なかなか統合に至らない。このあたりは、実は大航海時代における出発前の人々よろしく、不安を覚えての旅立ちでもあるのだった。そして、シーブルックのバンジョーはオリエンタルでエキゾチックな香りを持ち、それも狙いなのだろう。旅は次第に盛り上がってゆき、悦びとも何とも言えないようなこみ上げるものを表現した。本当に素晴らしい構成で、あきらかにオプスヴィークの手腕だった。30人くらいの観客はみんな嬉しさに笑顔を浮かべ、大拍手だった。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4 and Nikon P7800

●アイヴィン・オプスヴィーク
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas IV』(2011年)
ネイト・ウーリー『(Put Your) Hands Together』(2011年)
トニー・マラビー『Paloma Recio』(2008年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、12年)

●ブランドン・シーブルック
アンドリュー・ドルーリー+ラブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art(2015年)
クリス・ピッツィオコス@Shapeshifter Lab、Don Pedro(2015年)
トマ・フジワラ『Variable Bets』(2014年)
アンドリュー・ドルーリー『Content Provider』(2014年)
ブランドン・シーブルック『Sylphid Vitalizers』(2013年)

●トニー・マラビー
ジェシ・スタッケン『Helleborus』(2014年)
クリス・ライトキャップ『Epicenter』(2013年)
トニー・マラビー『Scorpion Eater』、ユメール+キューン+マラビー『Full Contact』(2013、08年)
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』(2003、13年)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas IV』(2011年)
ポール・モチアンのトリオ(2009年)
ダニエル・ユメール+トニー・マラビー+ブルーノ・シュヴィヨン『pas de dense』(2009年)
トニー・マラビー『Paloma Recio』(2008年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』(2007年)


マイケル・ウィンバリー@Children's Magical Garden

2015-09-27 15:09:37 | アヴァンギャルド・ジャズ

ニック・ライオンズ+ピート・スワンソンWhile We Still Have Bodiesに引き続き、マイケル・ウィンバリーのドラムソロ。

ここで愉し気に素朴なタイコを叩くという、やはりふつうはない状況。ウィンバリーはチャールズ・ゲイルとも共演歴があるはずだが、そのときも素朴で愉快なのだろうか。

Michael Wimberly (ds)

Fuji X-E2, Leica Summitar 50mmF2

●Arts for Art
While We Still Have Bodies@Children's Magical Garden(2015年)
ニック・ライオンズ+ピート・スワンソン@Children's Magical Garden(2015年)
ヴィンセント・チャンシー+ジョシュ・シントン+イングリッド・ラブロック@Arts for Art(2015年)
ジョー・モリス+ヤスミン・アザイエズ@Arts for Art(2015年)
ダロ・ベルージ+アーロン・ジョンソン+スティーヴ・ウッド+マーク・ジョンソン@Arts for Art(2015年)
アンドリュー・ドルーリー+ラブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art(2015年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)


While We Still Have Bodies@Children's Magical Garden

2015-09-27 14:51:37 | アヴァンギャルド・ジャズ

ニック・ライオンズ+ピート・スワンソンの次は「While We Still Have Bodies」。一見ふつうのカルテットだが、実はまるで違う。

Michael Foster (ts, ss)
Ben Gerstein (tb)
Sean Ali (b)
Flin van Hemmen (ds)

マイケル・フォスターはサックスを地面に付けたり、金属板を全面にアタッチしたり、朝顔の中にペットボトルを入れたりして吹く。ユニークと噂のベン・ガースティン(前夜、イングリッド・ラブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafeでも観た)は、やはり部品を取ったり、水を入れたり、トロンボーンを壁にこすったり。ベースのショーン・アリも、ふつうのことのように何やらヘンなものを弦に挟んでいる。

さらには、フォスターとガースティンとの口琴デュオもあった。あとでガースティンに訊ねてみると、口琴はロシア製であり、ebayで買ったとのことだった。せっかくなのでハンガリーの名匠ゾルタン・シラギーの名前を教えたが、さて記憶したかどうか。

1時間の自由なガジェットタイム。子供たちも楽しそうに見つめていた。

Fuji X-E2, Leica Summitar 50mmF2

●Arts for Art
ニック・ライオンズ+ピート・スワンソン@Children's Magical Garden(2015年)
ヴィンセント・チャンシー+ジョシュ・シントン+イングリッド・ラブロック@Arts for Art(2015年)
ジョー・モリス+ヤスミン・アザイエズ@Arts for Art(2015年)
ダロ・ベルージ+アーロン・ジョンソン+スティーヴ・ウッド+マーク・ジョンソン@Arts for Art(2015年)
アンドリュー・ドルーリー+ラブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art(2015年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)


ニック・ライオンズ+ピート・スワンソン@Children's Magical Garden

2015-09-27 14:25:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

Arts for Artの主催イベントの野外無料ライヴがあり、「Children's Magical Garden」に足を運んだ(2015/9/26)。ずいぶん早く1時間前に到着してみると、イベントを取りまわしているトッド・ニコルソンさんが、鍵が着いていないと言って待っていた。ちょっと前まで日本でもベーシストとして活動していた人であり、NYには戻ったばかり。・・・ということはしばらく話をしてはじめてわかった(名前は知っていたがライヴを観たことがなかった。なぜ、英語に突然日本語を混ぜるのか不思議だった)。

Nick Lyons (as)
Pete Swanson (b)

公園は面白いところで、砕いた樹皮が撒かれていて、ライヴ中も子供たちが遊びまくっていた。風音がして、陽がちらちらと射して、ときどき人が出入りして、壁や土が音を吸収し反射する空間で、ニック・ライオンズの抑制したアルトが気持ちよく響いた。ひょっとすると大きなコンサート会場よりもこのような手作りの空間のほうが、野外での演奏の醍醐味ではないかと思った。

Fuji X-E2, Leica Summmitar 50mmF2

●Arts for Art
ヴィンセント・チャンシー+ジョシュ・シントン+イングリッド・ラブロック@Arts for Art(2015年)
ジョー・モリス+ヤスミン・アザイエズ@Arts for Art(2015年)
ダロ・ベルージ+アーロン・ジョンソン+スティーヴ・ウッド+マーク・ジョンソン@Arts for Art(2015年)
アンドリュー・ドルーリー+ラブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art(2015年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)


マイク・ディルーボ@Smalls

2015-09-26 21:01:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

Cornelia Street Cafeを出て23時半に近くのSmallsに行くと(2015/9/25)、マイク・ディルーボのギグは満席で入れず、セカンドセットが始まるまでの15分間外で待った。その間にも行列ができてきて、もう何というべきか。

Ugonna Okegwo (b)
Mike DiRubbo (as)
Josh Evans (tp)
Brian Charette (p)
Jonathan Barber (ds)

このギグでのドラムスは、事前に公表されていたルディ・ロイストンではなく、とても若そうなジョナサン・バーバーになった(JBと呼ばれていた)。この人がなかなか溌剌としたドラムスを叩いていた。

主役のマイク・ディルーボは、ジャッキー・マクリーンに師事しただけのことはあって、直情的な気持ちのよいアルトを吹いた。マイクもまったく使わず生音がやたらとでかい。そして、Smalls常連のジョシュ・エヴァンスは、相変わらず、メタリックな音をギンギンと熱く熱く響かせた。やはり、ハード・バップ万歳なのだ。

1時頃に終わって、「次はグレイトなアンソニー・ウォンジーだ、誰も外に出るなよ」というアナウンスがあったが(Smallsならではか)、もう眠くて、ディルーボ、エヴァンスのふたりと少し話をして帰った。

Nikon P7800

●参照
マイク・ディルーボ『Threshold』(2013年)
ジョシュ・エヴァンス@Smalls (2015年)
フランク・レイシー@Smalls(2014年)(ジョシュ・エヴァンス参加)
フランク・レイシー『Live at Smalls』(2012年)(ジョシュ・エヴァンス参加)
ラルフ・ピーターソン『Outer Reaches』(2010年)(ジョシュ・エヴァンス参加)


イングリッド・ラウブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe

2015-09-26 20:21:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

イングリッド・ラウブロックの新グループ「UBATUBA」を聴くために、急いでCornelia Street Cafeに向かった(2015/9/25)。何しろラブロックとティム・バーンが並んでいるだけで仰天する。なお、会場から「そのsillyな名前はなんだ」という声があがり、ラウブロックは「実のところブラジルの街の名前で」と答えていた。

Ingrid Laubrock (ts)
Tim Berne (as)
Ben Gerstein (tb)
Dan Peck (tuba)
Tom Rainey (ds)

演奏は、フロントの4人が管を鳴らさず息を吹き込むところから始まった。やがて、それぞれの持ち味を存分に活かす展開に移行していった。この曲もすべてラウブロックの手によって作られた周到なものだ。それにより、各人の特徴あるソロがパズルのように組み合わせられ、次々に提示された。

バーンのアルトは強靱にして粘っこく、もう痺れてしまう。これが聴きたかった。ラウブロックは、バーンと並んで吹くとまた特徴が明らかになってくるようで、懐が深く、周辺環境を受け入れるような深さが感じられた。

低音二人組も愉快。特にベン・ガースティンである。先日帰国された蓮見令麻さんからも、またこの日にランチを一緒に取ったジャズ評論のシスコ・ブラッドリーさんからも、非常に知識豊富かつエキセントリックなところがあると聞いていた。かれのトロンボーンは、スライドを何やら震わせたり工夫したりし続け、引き出しの多さを示してくれた。

そしてトム・レイニーのドラムスはやはり目覚まし時計の刺激剤。

ファーストセットだけではあまりにも勿体ないため、セカンドセットも興奮しながら堪能した。このグループは今後凄い作品を出していくのではないかと期待する。まずは11月にFirehouse 12からCDをリリースするという。終わった後、ラウブロックやバーンとも少し話ができて嬉しい時間だった。

ところで、横に居合わせた男がジャズの広報誌(みんな使っている月間スケジュールを掲載)を出している人で、四方山話をしていると、高木元輝だの坂田明ちかもらちだの阿部薫だのと次々と名前が出てくる。テキサスに住んでいたがNYに出てきてよかった、と言っていた。結局休憩時間はふたりとも妙に興奮してジャズの話を続けた。やはりジャズは共通言語である。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4 and Nikon P7800

●イングリッド・ラウブロック
ヴィンセント・チャンシー+ジョシュ・シントン+イングリッド・ラウブロック@Arts for Art(2015年)
アンドリュー・ドルーリー+ラウブロック+クラウス+シーブルック@Arts for Art(2015年)
イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
ネイト・ウーリー『Battle Pieces』(2014年)
アンドリュー・ドルーリー『Content Provider』(2014年)
トム・レイニー『Obbligato』(2013年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、2012年)

●ティム・バーン
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)


エドワード・サイモン+ミゲル・ゼノンSUR@The Jazz Gallery

2015-09-26 19:55:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

NYのThe Jazz Galleryは割と目立たない雑居ビルの5Fにある。毎日ではないが、スティーヴ・コールマンが定期的にギグを行ってきたところでもあり、注目していた。今後の予定を見ても、ジョン・エスクリート、マーク・ジュリアナ、ピーター・エヴァンス、アンドリュー・ディアンジェロ、ジャスティン・ブラウン、そして11月にはヘンリー・スレッギルとヴィジェイ・アイヤーが組むというすぐれたプログラム。

この日(2015/9/25)は、エドワード・サイモンとミゲル・ゼノンとの新しい双頭バンド「SUR」。

Edward Simon (p)
Miguel Zenón (as)
Felipe Fournier (perc, vib)
Jorge Roeder (b)

ゼノンの『Identities are Changeable』がなかなかの意欲作だったこともあって期待していたのだが、一方では控えめなアルトだという印象もあって、このパフォーマンスは後者の側面ばかりだった。ゼノンのアルトは、フレーズはM-BASE的で不穏にスタイリッシュなのだが、押し出しがまったく強くなくて、ひたすら流れるような奇麗なソロ。

きっとサイモンも同じキャラに違いない。顔の表情もサウンドの表情もほとんど変えず、やはり流麗なソロ。

異物と衝突しなければ、この音楽から得られる刺激は希薄なものに違いない。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4

●参照
エドワード・サイモン『Live in New York at Jazz Standard』
ミゲル・ゼノン『Identities are Changeable』