Sightsong

自縄自縛日記

ネイト・ウーリー『Columbia Icefield』

2019-04-30 15:49:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

ネイト・ウーリー『Columbia Icefield』(Northern Spy、2017年)を聴く。

Nate Wooley (tp, electronics)
Mary Halvorson (g)
Susan Alcorn (pedal steel g)
Ryan Sawyer (ds)

ネイト・ウーリーらしく、抑制されつつも奇妙な意思が形になって表出している3曲。

最初から、メアリー・ハルヴァーソンとスーザン・アルコーンの出す音波の時間進行が異なっており、しかもそれは思いついたふりを装って戦略的に伸び縮みする。そこに入ってくるウーリーのトランペットは、まさに入る瞬間にそのときの時間をとらえているようである。

3曲目にいたり、やはり抑制されながら野蛮になり、これもまた面白い。

●ネイト・ウーリー
「JazzTokyo」のNY特集(2019/3/2)(『Battle Pieces IV』)(2018年)
ハリス・アイゼンスタット『Recent Developments』(2016年)
ネイト・ウーリー『Battle Pieces 2』(2016年)
ハリス・アイゼンスタット『On Parade In Parede』(2016年)
コルサーノ+クルボアジェ+ウーリー『Salt Talk』(2015年)
ネイト・ウーリー+ケン・ヴァンダーマーク『East by Northwest』、『All Directions Home』(2013、15年)
ネイト・ウーリー『(Dance to) The Early Music』(2015年)
ハリス・アイゼンスタット『Canada Day IV』(2015年)
アイスピック『Amaranth』(2014年)
ネイト・ウーリー『Battle Pieces』(2014年)
ネイト・ウーリー『Seven Storey Mountain III and IV』(2011、13年)
ネイト・ウーリー+ウーゴ・アントゥネス+ジョルジュ・ケイジョ+マリオ・コスタ+クリス・コルサーノ『Purple Patio』(2012年)
ネイト・ウーリー『(Sit in) The Throne of Friendship』(2012年)
ネイト・ウーリー『(Put Your) Hands Together』(2011年)
スティーヴン・ガウチ(Basso Continuo)『Nidihiyasana』(2007年)


オンドジェイ・ストベラチェク『Plays Mostly Standards』

2019-04-30 11:14:10 | アヴァンギャルド・ジャズ

オンドジェイ・ストベラチェク『Plays Mostly Standards』(Stvery Records、2017年)を聴く。

Ondřej Štveráček (ts, ss)
Klaudius Kováč (p)
Tomáš Baroš (b)
Gene Jackson (ds)

『Sketches』『Live in Prague』と同じメンバーでのスタジオ録音盤。これらのライヴ盤ではジョン・コルトレーンの影響をもろに感じたものだけれど、本盤ではなぜかそうでもない。もちろん本人は隠そうともしていないのだし、トレーン流のシーツ・オブ・サウンドは聴いていて爽快で気持ちがいい。それでも、よりハードボイルドな印象がある。

ここでも下から次々に爆発させるようにしてサウンドを上空に飛ばすジーン・ジャクソン。座っている椅子が蹴り上げられるようである。

●オンドジェイ・ストベラチェク
オンドジェイ・ストベラチェク『Live in Prague』(2017年)
オンドジェイ・ストベラチェク『Sketches』(2016年)

●ジーン・ジャクソン
片倉真由子@Body & Soul(2019年)
レイモンド・マクモーリン@六本木Satin Doll(2019年)
ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン『All of A Sudden』(2018年)
ジーン・ジャクソン・トリオ@Body & Soul(2018年)
ジーン・ジャクソン(Trio NuYorx)『Power of Love』(JazzTokyo)(2017年)
オンドジェイ・ストベラチェク『Live in Prague』(2017年)
オンドジェイ・ストベラチェク『Sketches』(2016年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
及部恭子+クリス・スピード@Body & Soul(2015年)
松本茜『Memories of You』(2015年)
デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』(1995年)


夢Duo@本八幡cooljojo

2019-04-30 10:33:28 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2019/4/29)。

Akemi Shoomy Taku 宅Shoomy朱美(vo, p)
Takayuki Kato 加藤崇之 (g)

はじめはシューミーさんはヴォーカルに専念する。「All The Things You Are」では加藤さんは「記憶でやるか」と弾き始めたが見事。松風鉱一カルテットで過激にぶっとんで行く加藤さんも好きだが、このようにじっくりと弾く加藤さんもまたとても良い。「Autumn Nocturne」に続く「You Must Believe in Spring」では、声が出てくる直前に高まるアウラのようなものを感じた。また、たとえば「You」と伸ばす声、吸い込まれそうである。

シューミーさんは1曲をはさんでピアノに座り、加藤さんは「ヨシヨシ、握力が疲れるんだよな」と笑った。「Passa Por Mim」に続く「Quiet Now」では、加藤さんが手でギターを擦ったのだが、それがまるでドラムスのブラシのようだった。

セカンドセットもシューミーさんはピアノを弾き歌う。「まわるまわる目がまわる」でこちらを攪乱しておいて、「So in Love」。ピアノとヴォーカルとで別々の時間が流れていて、ここにまたギターという要素が入ってきて、あらためて驚き、聴き惚れる。このあとの時間は、なんとも言えない哀しみや、力強い生命力といったものが溢れていた。そして最後の「For All We Know」において、ゆっくりと噛みしめるようなピアノ、軋みで色を付けたギターを聴くことができた。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●宅Shoomy朱美
宅Shoomy朱美+辰巳小五郎@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2019年)
夢Duo『蝉時雨 Chorus of cicadas』(2017-18年)
原田依幸+宅Shoomy朱美@なってるハウス(2018年)
impro cats・acoustic@なってるハウス
(2018年)

●加藤崇之
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その2)
松風鉱一カルテット@西荻窪Clop Clop(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン
(2018年その1)
夢Duo『蝉時雨 Chorus of cicadas』(2017-18年)

松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
松風鉱一@十条カフェスペース101(2016年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
加藤崇之トリオ『ギター・ミュージック』の裏焼き(1989年)


松本泰子+庄﨑隆志+齋藤徹@横濱エアジン(『Sluggish Waltz - スロッギーのワルツ』DVD発売記念ライヴ)

2019-04-30 08:31:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

横濱エアジン(2019/4/29)。

Taiko Matsumoto 松本泰子 (vo)
Takashi Shozaki 庄﨑隆志 (dance)
Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)

さまざまな詩人による詩をもとに、齋藤徹さんが曲を付けてコントラバスを弾き、聾のダンサー・庄﨑隆志さんが踊り、松本泰子さんが歌う。横濱エアジンには多くの客が集まっており、そのためもあって舞台は狭い。ここで庄﨑さんは踊りうるのかと思ったが、広い空間を必要とするものではなかった。その動きは空間以上に大きな脳内の拡がりをもたらすものだった。

渡辺洋「ふりかえるまなざし」。松本さんが繰り返す「ねばりづよく」に呼応して手をひらひらと伸ばす庄﨑さん。均衡を求めてなのか、均衡を異化するものなのか、いきなりこちらのバランス感覚が揺らぐ。

三角みづ紀「患う」。鏡が顔から離れないのか、ことが鏡であるのか、その動きとシンクロするように視線と言葉との交感がある。松本さんによる「わたしは患う」が層のように重なってゆき、一方の庄﨑さんは息遣いあらく手を伸ばし崩れ落ちた。

薦田愛「ひが、そして、はぐ。」。ご本人が朗読した。テツさんや松本さんは「通勤ブルース」と呼んでいるのだと笑った。混んだ電車、庄﨑さんは身体の自然を保てないかのように色違いのコートを左右それぞれに着ている。その、ばらばらになってしまいそうな状況と、どうしようもなく近づいてしまった状況。「ひしと抱く」と呼応して庄﨑さんもテツさんも頭をかきむしった。

寶玉義彦「遠いあなたに」。寶玉さんのパートナーMiyaさんがフルートを吹く。ここではテツさんが「生きることは!」と短く叫び、松本さんが歌う。すべてとの距離を縮める庄﨑さん、溶剤のように入るフルート。テツさんのコントラバスの軋みは、距離に対するもの、生死に関するもののようだ。

木村裕「ディオニューソス」。森の中で、沼の上で、周囲とどのように溶けあうか、「蕩け」あうか。庄﨑さんの踊りは何かへの変化(へんげ)のようにみえる。木村さんは朗読し、場所が塞がっていたピアノの下に潜って鍵盤を叩いた。自分がなにものであるのかわからない不思議さとは無関係に音楽が響いた。全員が「ほら」、「ほら」、と囁いた。

市川洋子「はじまりの時」。休憩時間に市川さんに聞いたら、人生初の人前での朗読だという。はじまりの時が、鳥、風、野の匂いとともに立ち上がり、庄﨑さんが白い花を手に動き、テツさんのコントラバスが応じる。その世界に居ることが必然のような庄﨑さん。全員が両手をあげて上を向いた。(くいしんぼの市川さん、おいしい中華料理店にまた行ったかな。)

寶玉義彦「青嵐の家」。寶玉さんが朗読する。デモで歩く、その歩みを庄﨑さんは指で表現する。右手で歩く者を左手でとらえたりもする。その連続的な状況を異化し立ち上がらせようとするコントラバス。

薦田愛「てぃきら、うぃきら、ふぃきら、ゆきら、りきら、ら」。濁音がない詩なのだという。「波間から現れるいのち。」の箇所では、濡れることが生命なのだと感じさせられた。

野村喜和夫「防柵11(アヒダヘダツ)」。「i(鳥が鳥を超えてゆくさえずり)」では庄﨑さんが白い紙で手と顔とを世界と分かち、言葉がその上に重なる。それをコントラバスが揺り動かす(アヒダを?紙を?)。やがて剥き出しになる顔と手、それとは無関係に進む音楽。「私とはだれでしたか」があらためて目に飛び込んでくる。「ii(ルリリ)」では琉球音階となり、テツさんは強く弦を弾き笑う。悦びと、「ハー」という息遣いと、ぎくしゃくした動きとが、生命というわけのわからないものをあらわしているようだ。

三角みづ紀「Pilgrimage」。すべてを振り返るように(このステージだけではなく)、「この身体で」「身体だけで」という言葉で終わった。

やさしくも残酷にも脳を震わせる松本さんの歌、生命の共振や狂いを取り込んだようなテツさんのコントラバス、その場の生命の揺らぎをともかくも表出させる庄﨑さんの動き、そして全員の交感。形になるものとならないものとを含めて、もやっとした大きな示唆を与えてくれるようだった。

DVD『Sluggish Waltz - スロッギーのワルツ』、そしてヴィム・ヴェンダース『ピナ』を観て振り返ることが楽しみである。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans 12mmF2.8

●齋藤徹
齋藤徹+久田舜一郎@いずるば(2019年)
近藤真左典『ぼくのからだはこういうこと』、矢荻竜太郎+齋藤徹@いずるば(2019年)
2018年ベスト(JazzTokyo)
長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム(2018年)
藤山裕子+レジー・ニコルソン+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@喫茶茶会記(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
DDKトリオ+齋藤徹@下北沢Apollo(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 

●三角みづ紀
詩×音楽(JAZZ ART せんがわ2018)(JazzTokyo)(2018年)

●野村喜和夫
野村喜和夫+北川健次『渦巻カフェあるいは地獄の一時間』(2013年)


ダラー・ブランド『The Journey』

2019-04-29 10:00:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

ダラー・ブランド『The Journey』(Chiaroscuro Records、1977年)を聴く。

Abdullah Ibrahim (p, ss)
Carlos Ward (as)
Talib Rhynie (as, oboe)
Hamiet Bluiett (bs, cl)
Johnny Akhir Dyani (b)
Claude Jones (congas)
John Betsch (perc)
Roy Brooks (perc)
Don Cherry (tp)

壮大だとか何とか喧伝されるわりにはリラックスしていて、この5年ほど前にドン・チェリー、カルロス・ワードという同メンバーで吹き込まれた『The Third World - Underground』(1972年)よりも好感を覚える。ハミエット・ブリューイットもドン・チェリーもリラックスしている。

ダラー・ブランドがバディ・テイトと組んだ異色盤のわずか後の吹き込みでもあるが、それも聴いてみると肩透かしをくらうほど自然な演奏だった。ブランドの音楽が、オリエンタリズムの視線や越境というコンセプトに商売として使われていたということだろう。三曲目の「Haji (The Journey)」を聴くと誰もが『African Piano』を思い出してしまうと思うのだが、すなわち、ブランドの受容については一連の作品によってとらえなければならないということか。

●ダラー・ブランド/アブドゥーラ・イブラヒム
マックス・ローチ+アブドゥーラ・イブラヒム『Streams of Consciousness』(1977年)
ダラー・ブランド+ドン・チェリー+カルロス・ワード『The Third World - Underground』(1972年)


エレクトロニクスとヴィオラ、ピアノの夕べ@Ftarri

2019-04-29 08:51:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2019/4/28)。

suzueri すずえり (prepared p, self-made instruments)
Yoko Ikeda 池田陽子 (viola)
Tengal (electronics)

ファーストセット、すずえり・池田陽子デュオ。すずえりさんは小さいカセットテープレコーダーをいくつか鳴らし、それと連動させているのか、ふたつの電極の間に渡されたコイルを半自動的に動かす。ピアノの弦がモーターによって擦られて異音が(それを忘れるほどにずっと)鳴る中で、池田さんがヴィオラを弾く。足許にとどまるような微かな音であったり、流れ出して周囲のものと人とを取り巻くようであったりして、その震えと間とがとても良い。すずえりさんは円盤をクレーンのように回し、また、小さいピアノを大きなピアノに連動させてときおり鍵盤を叩く。それらの佇まいは自律的な機械であり小動物であり、『ブレードランナー』における寂しいエンジニアの部屋を思い出した。

セカンドセット、テンガルソロ(テンガルさんはフィリピン出身)。エレクトロニクスのプラグとPCとで創っていくそれは意外にポップなもので、他人事の物語をつなぎあわせるように感じられた。コラージュ的な生活空間のアジアにも感じられた。

サードセット、トリオ。池田さんとすずえりさんが演奏し、テンガルさんに加わるよう促す。すずえりさんが向きを変えて何やら弾き語りをはじめてもテンガルさんはPCを睨み何も音を出さない。ふたりは笑いながら焦り、動け動けと大きなジェスチャーで合図をする。やがてテンガルさんが遅れてきた物語をみせた。それは作戦だったかどうなのか、しかし焦りと大きな隙間と笑いとがインプロの過程として面白かった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans 12mmF2.8

●すずえり
すずえり@Ftarri(2019年)
すずえり+大城真『Duo』(2018年)
ジョン・ラッセル、ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ、すずえり、大上流一、石川高、山崎阿弥@Ftarri(2018年)
角銅真実+横手ありさ、田中悠美子+清田裕美子、すずえり+大城真@Ftarri(2018年)
フタリのさとがえり@Ftarri(2018年)
Zhao Cong、すずえり、滝沢朋恵@Ftarri(2018年)
ファビオ・ペルレッタ+ロレンツォ・バローニ+秋山徹次+すずえり@Ftarri(2017年)
すずえり、フィオナ・リー『Ftarri de Solos』(2017年)

●池田陽子
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』(2018年)
佐伯美波+池田若菜+池田陽子+杉本拓+ステファン・テュット+マンフレッド・ヴェルダー『Sextet』(2017年)
クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(2017年)


松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン

2019-04-29 00:30:02 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットイン昼の部(2019/4/28)。かなり客が入っている。

Koichi Matsukaze 松風鉱一(as, ts, fl)
Takayuki Kato 加藤崇之(g)
Hiroaki Mizutani 水谷浩章(b)
Akira Sotoyama 外山明(ds)
Mikio Ishida 石田幹雄(p)

ファーストセット、「K2」(テナー)、「Outside」(アルト)、「Hawk Song」(テナー)、「Earth Mother」(アルト)、?(フルート)、「Kikikaikai」(アルト)。セカンドセット、「それぞれの時間」(アルト)、「3・11」(テナー)、「Big Valley」(テナー)、「Shallow Dream」(アルト)、「J・C・ナガセ」(アルト)、アンコール「w.w.w.」(テナー)。

観るたびに過激さを増していていちいち驚いてしまっていた松風鉱一4だが、この日はそうでもなく(こちらが麻痺したのか)、むしろ、落ち着いて余裕でリミッターを外す各氏のプレイを楽しむことができた。

石田さんは、「Earth Mother」では鍵盤がたわむのではないかというほどの叩きぶり、「J・C・ナガセ」では右手だけで最初は暴れておいてやがて左手を仲間に入れてさらなる拡がりをみせた。水谷さんの笑いながらのグルーヴはやはり素晴らしくて、「Big Valley」ではまるで唸りながらサックスに追従、また「J・C・ナガセ」では太い和音で大暴れのサウンドをさらに分厚くした。

どこかに確信犯的に滑ってゆく加藤さんのギターにも、力技で他のプレイヤーと絡み遊ぶ外山さんのドラムスも、そのような人だとわかってはいても嬉しさでつい笑う。もちろん松風さんのささくれたようなサックスの音色は誰にも似ていない。

宇宙一のアナーキストたちの饗宴を観ないと損損。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans 12mmF2.8

●松風鉱一
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その2)
松風鉱一カルテット@西荻窪Clop Clop(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その1)
松風M.A.S.H. その3@なってるハウス(2018年)
今村祐司グループ@新宿ピットイン(2017年)
松風M.A.S.H. その2@なってるハウス(2017年)
松風M.A.S.H.@なってるハウス(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
松風鉱一@十条カフェスペース101(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
5年ぶりの松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)
松風鉱一『Good Nature』(1981年)
松風鉱一トリオ+大徳俊幸『Earth Mother』(1978年)
『生活向上委員会ライブ・イン・益田』(1976年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』 
反対側の新宿ピットイン
くにおんジャズ、鳥飼否宇『密林』


mn+武田理沙@七針

2019-04-28 10:20:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

(霊岸島の、と言いたくなるが、)新川の七針(2019/4/27)。

mn:
T. Mikawa T. 美川 (electronics, noise)
Jun Numata 沼田順 (g, noise)
Risa Takeda 武田理沙 (key, vo)

はじめはmn。ずっと面白い。ふたりの役割は違っていて、沼田社長はトリックスターのように前面でさまざまな策動を行い、美川さんは過激なちゃぶ台返しをしばしば行う。美川さんのこちらから見て左側のエフェクターは何だろう、あれを踊るように連打している天変地異の瞬間は嬉しくて笑ってしまった。

セカンドセット、武田理沙ソロ。右手でキーボード、左手でピアノ、あと何かエフェクトをかけて、アンビエントな音を創っていく。ここで一転、ピアノの弾き語り。ときにメルヘンチック、ときに恐怖で旋律(いや、メルヘンとはそういうものか)。ちょっとこちらの時間感覚が狂って朦朧とした。

そしてmn+武田理沙。mnの欲望ノイズと武田さんのピアノとが想定を超えて拮抗している。美川さんは巨大な船を明後日の方向に急に動かすようで、また沼田社長の策動音も明後日の方向から聴こえる。武田さんも微笑みながらばしばし攻めている。なんだこれ。録音出さないかな。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●沼田順
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
中村としまる+沼田順『The First Album』(2017年)
RUINS、MELT-BANANA、MN @小岩bushbash(2017年)
内田静男+橋本孝之、中村としまる+沼田順@神保町試聴室(2017年) 

●T. 美川
#167 【日米先鋭音楽家対談】クリス・ピッツィオコス×美川俊治×橋本孝之×川島誠(2017年)
RUINS、MELT-BANANA、MN @小岩bushbash(2017年)
T. 美川&.es『September 2012』(2012年)

●武田理沙
武田理沙『Pandora』
(2018年)


ボーンシェイカー『Fake Music』

2019-04-27 15:52:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

ボーンシェイカー『Fake Music』(SoulWhat、2017年)を聴く。

Boneshaker:
Mars Williams (reeds, toy instruments)
Paal Nilssen-Love (ds, perc)
Kent Kessler (b)

聴く前からわかっているようなものではあるが、マーズ・ウィリアムスの音の後ろにはキックする隆々たる両足があるようだ。その礎の上でよれたりブルージーになったり。ときどき「うひょー」と叫んでいるんじゃないかという音がある。

そしてポール・ニルセン・ラヴの強すぎる叩き。強いことによって、打音にグラデーションが生じている。それはマーズも同じか。

●ポール・ニルセン・ラヴ
Arashi@稲毛Candy(2019年)
ペーター・ブロッツマン+スティーヴ・スウェル+ポール・ニルセン・ラヴ『Live in Copenhagen』(2016年)
ザ・シング@稲毛Candy(2013年)
ジョー・マクフィー+ポール・ニルセン・ラヴ@稲毛Candy(2013年)
ポール・ニルセン・ラヴ+ケン・ヴァンダーマーク@新宿ピットイン(2011年)
ペーター・ブロッツマン@新宿ピットイン(2011年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』
(2011年)
ジョー・マクフィーとポール・ニルセン-ラヴとのデュオ、『明日が今日来た』(2008年)
4 Corners『Alive in Lisbon』(2007年)
ピーター・ヤンソン+ヨナス・カルハマー+ポール・ニルセン・ラヴ『Live at Glenn Miller Cafe vol.1』(2001年)
スクール・デイズ『In Our Times』(2001年)

●ケント・ケスラー
ロドリゴ・アマド『This Is Our Language』(2012年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』(2011年)
ジョー・モリス w/ DKVトリオ『deep telling』(1998年)


森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』

2019-04-27 11:57:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』(meenna、2018年)を聴く。

Yasumune Morishige 森重靖宗 (cello)
Yoko Ikeda 池田陽子 (viola)
Takashi Masubuchi 増渕顕史 (g)

弦3本の震えが並んで進み、静かに重ね合わされてゆく。静かさは演奏そのものだけでなく、各氏が音を自己の裡で抽出し、蒸留する過程についても言えそうに思える。

そして音色と切り離せないものとして、それを出す相互の間合いにすべてが賭けられているように感じられる。フタリでのライヴ、この日は行かなかったが、緊張と悦びが横溢したものであったに違いない。

●森重靖宗
森重靖宗+徳永将豪@Ftarri(2018年)

●池田陽子
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
佐伯美波+池田若菜+池田陽子+杉本拓+ステファン・テュット+マンフレッド・ヴェルダー『Sextet』(2017年)
クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(2017年)

●増渕顕史
齊藤僚太+ヨシュア・ヴァイツェル+増渕顕史@Permian(2018年)
Zhu Wenbo、Zhao Cong、浦裕幸、石原雄治、竹下勇馬、増渕顕史、徳永将豪@Ftarri(2018年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+徳永将豪+増渕顕史+中村ゆい@Ftarri(2017年)
杉本拓+増渕顕史@東北沢OTOOTO(2017年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
『OTOOTO』(2015、17年)


ジェレミー・ペルト『Jeremy Pelt The Artist』

2019-04-27 10:55:51 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジェレミー・ペルト『Jeremy Pelt The Artist』(High Note、2018年)を聴く。

Jeremy Pelt (to, effects)
Voctor Gould (p, Rhodes)
Vicente Archer (b)
Allan Mednard (ds)
Ismel Wignall (perc)
Chien Chien Lu (vib, marimba)
Alex Wintz (g)
Frank Locrasto (Rhodes, effects)

それぞれの楽器がクールに入り重なっていて、またダークで力のあるジェレミー・ペルトのトランペットは相変わらず良い音。

ではあるのだが、さほど突出したところもない。ライヴで観るなら印象深いのだろうけれど。

●ジェレミー・ペルト
ウェイン・エスコフェリー『Vortex』(-2018年)
ジェレミー・ペルト『Noir en Rouge / Live in Paris』(2017年)
ジェレミー・ペルト『Make Noise!』(2016年)
ジェレミー・ペルト『#Jiveculture』(2015年)
ブラック・アート・ジャズ・コレクティヴ『Presented by the Side Door Jazz Club』(2014年)
ジェレミー・ペルト『Tales, Musings and other Reveries』(2014年)
ジェレミー・ペルト@SMOKE(2014年)
ジャズ・インコーポレイテッド『Live at Smalls』(2010年)
ジェレミー・ペルト『Men of Honor』(2009年)
ルイ・ヘイズ『Dreamin' of Cannonball』(2001年)


二二八国家記念館、台北市立美術館、順益台湾原住民博物館、湿地、朋丁、關渡美術館(、当代芸術館)

2019-04-27 09:45:27 | 中国・台湾

台北にいる間に、いくつか美術館・博物館を覗いた。

■ 二二八国家記念館

1947年2月28日の二二八事件について展示がなされている。中国本土からの外省人による白色テロであり、かつての国家権力による汚点を自ら晒すことは日本にはない。

事件と直接の関係はないものの、日本による植民地支配も多く展示されており、皇民化教育のひどさが迫ってくる。高砂族を特攻隊として死なせたことなど日本ではあまり知られていない。

また、事件の犠牲者たちが名前と肖像写真とともに並べられているのだが、写真が無い者も多い(おそらくは名前がわからない者も)。記憶の継承は容易ではない。

帰国してから気が付いたのだが、二二八和平公園内に台北二二八和平紀念館という別の場所がある。今度はぜひ行ってみなければ。

■ 台北市立美術館

ふたつの展示。

于彭(Yu Peng)は台北生まれのアーティストであり既に故人。水墨画や版画を多く手掛けている。はじめは散漫にも思えて流すように観ていたのだが、ふと、その情報過多の世界がロシア・アヴァンギャルドのフィローノフにも共通する無限のミクロコスモスに視えてきた。

「Musica Mobile」は音楽のさまざまなあり方を提示する企画展。手を叩くと反応して光を放ちながら笑うスマホの森(Stephane Borrelらによる「Smartland Divertimento」)など面白かった(>> 動画)。スマホ用アプリもあるのでヒマな方はどうぞ。

なかでもとりわけ素晴らしいなと思った展示は、李明維(リー・ミンウェイ、Lee Mingwei)による「四重奏計画」である。暗い部屋の中に4つの衝立があり、それぞれの向こうがぼんやりと光って、弦楽器を奏でている。視えない存在と音楽という観点に奇妙に動かされた。

■ 順益台湾原住民博物館

先住民族(台湾では原住民と呼ぶ)についての博物館。小さいながらなかなか充実していて勉強になる(図録も買った)。

楽器の展示場所で流れるようになっている。なかでもタイヤル族のロボ(口琴)は弾く板が複数あり、かなり巧妙に作られていた。また鼻笛というものもあった。

博物館前の公園には、先住民族たちの彫像(石板)があった。

■ 湿地

ちょうど市内のいくつかのギャラリーが連動した写真展をやっていて、そのひとつ。風呂に乱暴に写真が置いてあったりと工夫が凝らされている。もっとも、若い人たちの意欲以上のものではなかったが。

■ 朋丁

1階が本屋とカフェ、2階と3階が展示室。デイヴィッド・シュリグリー(David Shrigley)のシニカルな作品はいちいち笑える。

■ 關渡美術館(KdMofa)

大学の敷地内にある美術館。いくつも小さい展示があった。なかでも「On Demand」展は楽しめた。アーカイヴから複数の映像が壁に映写されており、また、PCでは、文字通りオンデマンドで映画を観ることができるようになっている。ヴィム・ヴェンダース『東京画』があり、つい最後まで観てしまった。

■ 当代芸術館(MOCA Taipei)

現代美術をこそ観たかったのだが、ちょうと工事中だった。残念。


井上荒野『あちらにいる鬼』

2019-04-26 08:04:31 | 思想・文学

井上荒野『あちらにいる鬼』(朝日新聞出版、2019年)を読む。

淡々とした筆致ではあるが、それだけにただごとでない人たちの姿が迫ってくる。

でたらめで嘘つきで女好きで奇妙に感傷的な井上光晴。欲望が覚悟と化すほどに振り切れる瀬戸内寂聴。井上光晴の「中の人」でもあった妻。かれらにとっては鬼が人間たる所以だった。鬼とならなければ自分を維持できなかったのか、鬼になってしまって地獄を覗き込み続けたのか。ちょっと後を引く作品。

●参照
井上荒野『ひどい感じ―父・井上光晴』
井上光晴『西海原子力発電所/輸送』
井上光晴『明日』と黒木和雄『TOMORROW 明日』
井上光晴『他国の死』


宅Shoomy朱美+辰巳小五郎@阿佐ヶ谷Yellow Vision

2019-04-25 23:22:37 | アヴァンギャルド・ジャズ

阿佐ヶ谷のYellow Vision(2019/4/24)。

Akemi Shoomy Taku 宅Shoomy朱美(vo, key)
Kogoro Tatsumi 辰巳小五郎 (tp, iphone-g)

揺らぎながらその姿をあらわしてきたシューミーさんのサウンドは、やかましい小動物のような遊びをみせたと思ったら拡がってゆき、ビートとともにキーボード宇宙を展開する。これがハードボイルドでイケていて滅茶苦茶カッコ良い。ビートはときにガジェット的であり、ときにバロウズのショットガン・ペインティングを想像させるものであり、そのビートの隙間にベース音をぐいぐいと食い込ませてゆく様にはちょっと痺れてしまう。ときどき右手を使い、コルグのKaoss Padで遊ぶのだが、それが宇宙人が痙攣しているようで、またカッコ良い。

しかし、最初から最後まで複合的ストロングビートだけではないのだ。ヴォイスは何か記憶の奥底をまさぐられるようであり、サウンドが泡立ったまま抒情的な雰囲気に突入し「Blue in Green」を歌うときの潮目の変わりようにも驚く。

一方の辰巳さんは、最初はiphoneアプリのギターを使った。ときにアルバート・コリンズを思わせる太いブルースギターのようであり、ときにキーボード的であり、またときに宇宙遊泳するようでもある。そしてトランペットを吹くと、また別の太くて揺らぐ感覚が生まれる。駆け上がったり、ビートと並走したりして、失われた近未来、懐かしい近未来、あるいはディストピアのようだ。マウスピースを叩いて色付きのパーカッションのようにも使った。

このふたりがそれぞれ暴れたり叫んだり、意気投合したり、個人作業にいそしんだり、ともかくも並走したりして、なかなかに最高なのだった。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●宅Shoomy朱美
夢Duo『蝉時雨 Chorus of cicadas』(2017-18年)
原田依幸+宅Shoomy朱美@なってるハウス(2018年)
impro cats・acoustic@なってるハウス
(2018年)

●辰巳小五郎
【日米先鋭音楽家座談】ピーター・エヴァンスと東京ジャズミュージシャンズ(JazzTokyo)
(2018年)
青山健一展「ペタペタ」とThe Space Baa@EARTH+GALLERY
(2017年)


トム・ハレル『Infinity』

2019-04-25 07:58:58 | アヴァンギャルド・ジャズ

トム・ハレル『Infinity』(High Note、2018年)を聴く。

Tom Harrell (tp, flh)
Mark Turner (ts)
Charles Altura (g)
Ben Street (b)
Johnathan Blake (ds)
Adam Cruz (perc) (track 3)

特に変わったコンセプトや野心があるアルバムではない。

そうであろうとなかろうと、トム・ハレルの音楽は大好きだ。大きな円環のようでカラフルなアンサンブル、ここに絶妙のタイミングでひょいと入っては、雲のようなトランペットを吹く。

マーク・ターナー、チャールス・アルトゥラといった曲者も見事にトム・ハレル音楽の一員として貢献していて、これがまた嬉しい。

●トム・ハレル
トム・ハレル『Something Gold, Something Blue』(2015年)
トム・ハレル@Cotton Club(2015年)
トム・ハレル@Village Vanguard(2015年)
ジョン・イラバゴン『Behind the Sky』(2014年)
トム・ハレル『Trip』(2014年)
トム・ハレル『Colors of a Dream』(2013年)
デイヴィッド・バークマン『Live at Smalls』(2013年)
ジム・ホール(feat. トム・ハレル)『These Rooms』(1988年)