自分へのご褒美と決めて、チャーリー・ヘイデンとアントニオ・フォルチオーネとのデュオ作『HEARTPLAY』(NAIM、2006年)を買ってきた。新品のLPである。アントニオ・フォルチオーネは聴いたことがないギタリストだ。
ヘイデンの音とすぐにわかるベースの響き、それからギターの弦のきしみ、実際の息遣いが録音されていて、本当に嬉しくなる。じっくり聴いていると、スピーカーの向こうに音楽家ふたりが居るような感覚をおぼえる。変に盛り上げることのない対話。
NAIMレーベルにおけるヘイデンの作品は、クリス・アンダーソンと組んだ『None But the Lonely Heart』(1998年)、ジョン・テイラーと組んだ『Nightfall』(2003年)と、ピアニストとのデュオ作がこれまでにあったが、それらに勝るとも劣らない。ところが、同じギターとのデュオということで、とても売れた(らしい)パット・メセニーとのデュオ『Beyond The Missouri Sky』(Verve、1996年)と比較してみると、こちらはメセニーが主役になりすぎているのか、何だかつまらない演奏に感じられてくる。レコードとCDとの違い、というだけではないはずだ。
『HEARTPLAY』では、ギターがベースに寄り添うような「Snow」もいいが、何と言っても、哀しいメロディの曲「La Pasionaria」がすばらしい。手元にあるヘイデンのアルバムでは、1989年、モントリオールでのジャズフェスで、ゴンサロ・ルバルカバとのピアノトリオ、それからリベレーション・ミュージック・オーケストラ(LMO)の編成で演奏している。キューバ出身のピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバは、そのテクニックで大反響を巻き起こしたばかりのころで、ここでも難なく速く叙情的なメロディを弾いている。ただ、この曲は<コテコテ>でもあるから、ひたすら大袈裟なLMOが好きなのだ。普段は聴かないアーニー・ワッツのテナーなどに感激させられてしまう(笑)。
それにしても、この「モントリオール・テープス」のシリーズは凄い。レーベルを超え、連日のチャーリー・ヘイデンの演奏を執拗にCD化し続けている。ジェリ・アレンは好みでない硬質なピアニストなので持っていないが、それ以外は全て揃えてしまった。こんなのを通って目の当りにしていたら、どうなるのだろう。
1989/6/30 ジョー・ヘンダーソン、アル・フォスターとのサックストリオ(Verve)
1989/7/2 ドン・チェリー、エド・ブラックウェルとのトリオ(Verve)
1989/7/3 ゴンサロ・ルバルカバ、ポール・モチアンとのピアノ・トリオ(Verve)
1989/7/6 エグベルト・ジスモンチとのデュオ(ECM)
1989/7/7 ポール・ブレイ、ポール・モチアンとのピアノ・トリオ(Verve)
1989/7/7 ジェリ・アレン、ポール・モチアンとのピアノ・トリオ(Verve)
1989/7/8 LMO(Verve)
これで全ての記録なのかな。
●参照
○Naimレーベルのチャーリー・ヘイデンとピアニストとのデュオ
○リベレーション・ミュージック・オーケストラ(スペイン市民戦争)