Sightsong

自縄自縛日記

仲里効『沖縄戦後世代の精神史』

2023-01-30 22:50:34 | 沖縄

仲里効『沖縄戦後世代の精神史』(未來社、2022年)。

50年ほど前の「復帰」あるいは「施政権返還」とは何だったのか。日の丸を振って大歓迎する機運が高まった一方で、新川明が「反復帰論」を、また岡本恵徳が「水平軸の発想」を唱えた。だが国家やルーツという物語から距離を置き、個や社会をとらえなおそうとする思想は、決してかれらだけのものではなかった。いかに自らを解放するかという手がかりは、ひとつふたつの思想からのみ得られるものではない。

自分としては、写真家・島尾伸三についての分析が、取り上げられている人たちの中でひときわ興味深い。かれの写真には、たとえば、次のような宙ぶらりんのキャプションが添えられていることが多い。

[香港/覚醒など夢のまた夢なのに、]
[台北/靴の泥が主人面して気持ちに居座っていて、]

著者はこのような特性が「統辞を脱臼させ問いかけを重ねていく<読点>に、入口と出口を謎にかけるような文体の異風にあった」と、さらには「<読点>とはほかならぬ写真という光学の自我でもある」とする。慧眼というべきだろう。そしてこの極私的な表現は、かけがえのない人への「恋文」として発展していった。島尾伸三の作品が魅力的な理由はこのあたりにもある。

●仲里効
仲宗根勇・仲里効編『沖縄思想のラディックス』(2017年)
仲里効『眼は巡歴する』(2015年)
仲里効『悲しき亜言語帯』(2012年)
仲里効『フォトネシア』(2009年)
仲里効『オキナワ、イメージの縁』(2007年)


Kaz小田桐 Special Gig@下北沢No Room for Squares

2023-01-29 09:33:19 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のNo Room for Squares(2023/1/28)。

Kazuhiro Odagiri Kaz小田桐 (ds)
Shin Sakaino (b)
Akihiro Nishiguchi 西口明宏 (ss, ts, fl)
Tomoaki Baba 馬場智章 (ts)
Kan (perc)

カッコよさって音楽がカッコよくないと出現しない。ユーモラスでもあり(Shinさんが「皆さんお酒をたのむ時間ですよ~」と言いながらゆらゆらと始めたなんてまた)、暑苦しくもあり、最高だった。こんな場を作ることができるNRFSも凄いな。

Fuji X-E2, 7Artisans 12mmF2.8

●参照
西口明宏+デイヴィッド・ブライアント+粟谷巧@下北沢No Room for Squares(2022年)


The Bass Collective@渋谷公園通りクラシックス

2023-01-29 09:17:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷の公園通りクラシックス(2023/1/28、マチネ)。

The Bass Ensemble:
Masao Tajima 田嶋真佐雄 (b)
Kazuhiro Tanabe 田辺和弘 (b)
Takashi Seo 瀬尾高志 (b)

ずれの発生にも賭けるような瀬尾さんのアタックの強さ、表現は一音一音の深みからくるのだと解らせてくれる田辺さんの留意、中間域にあって柔軟さ自体を表現の強さにしおおせている田嶋さんの懐。三者とも極めて個性的なコントラバス奏者ながら、アンサンブルとなると「私」を消滅させる方向へ動いているようにも思える。そのことにより、「私」が強烈にたちあらわれている。不思議な感覚を抱いた。

Fuji X-E2, 7Artisans 12mmF2.8, XF60mmF2.4

●田嶋真佐雄
やみのうつつ vol.1@神保町試聴室(2022年)
齋藤徹生誕祭@横濱エアジン(2022年)
The Bass Collective meets Jean & Bénédicte@山猫軒(2022年)
森田志保『徹さんの不在』(Dance Vision 2021 feat. 齋藤徹)@アトリエ第Q藝術(2021年)
齋藤徹生誕祭@横濱エアジン(2021年)
ベースアンサンブル ~ Travessia de Tetsu ~@横濱エアジン(2019年)
李世揚+瀬尾高志+かみむら泰一+田嶋真佐雄@下北沢Apollo(2019年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)

●田辺和弘
田辺和弘@上尾BarBer富士(2022年)
齋藤徹生誕祭@横濱エアジン(2022年)
The Bass Collective meets Jean & Bénédicte@山猫軒(2022年)
いずるば2022 / Entre-temps au grenier@いずるば(2022年)
『私の城』(2022年)
森田志保『徹さんの不在』(Dance Vision 2021 feat. 齋藤徹)@アトリエ第Q藝術(2021年)
齋藤徹生誕祭@横濱エアジン(2021年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
喜多直毅クアルテット「文豪」@公園通りクラシックス(2018年)
喜多直毅クアルテット@求道会館(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)

瀬尾高志
瀬尾高志+広瀬淳二+高橋佑成+秋元修@神保町試聴室(2022年)
The Bass Collective meets Jean & Bénédicte@山猫軒(2022年)
酒井俊+瀬尾高志+須川崇志+市野元彦@稲毛Candy(JazzTokyo)(2022年)
石田幹雄トリオ@稲毛Candy(2020年)
瀬尾高志+松丸契+竹村一哲+高橋佑成@公園通りクラシックス(2020年)
ベースアンサンブル ~ Travessia de Tetsu ~@横濱エアジン(2019年)
李世揚+瀬尾高志+かみむら泰一+田嶋真佐雄@下北沢Apollo(2019年)
李世揚+瀬尾高志+細井徳太郎+レオナ@神保町試聴室(2019年)
謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)
伊藤志宏+瀬尾高志@稲毛Candy(2018年)
永武幹子+加藤一平+瀬尾高志+林ライガ@セロニアス(2018年)
永武幹子+瀬尾高志+竹村一哲@高田馬場Gate One(2017年)
永武幹子+瀬尾高志+柵木雄斗@高田馬場Gate One(2017年)

北田学+外山明+阿部真武@渋谷Bar Subterraneans

2023-01-25 08:05:12 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷のBar Subterraneans(2023/1/24)。

Manabu "Gaku" Kitada 北田学 (bcl, cl)
Akira Sotoyama 外山明 (perc)
Masatake Abe 阿部真武 (b)

北田学さんのクラもバスクラも相変わらず弾力性があり、なにがあっても折れない強さと柔らかさがある。ユーモアもあり、これは独特の音色とも関係しているだろう。阿部さんのベースはやはり柔らかいが全体を牽引してもいて、聴くたびに再発見。そしてユニークといえば外山明さん、セカンドセットでは椅子を座ったまま回転させて摩擦音を出し、サウンドに参加させた。驚いた。

そんなわけなのでどの部分を取ってもおもしろい。たとえばバスクラが音の塊をある程度の大きさに捏ねて出すことを繰り返すと、ベースもボールをトスするように応じ、バスドラムがその場に出てきた塊たちをホップさせるようなあんばいの遊び。

Fuji X-E2, 7Artisans 12mmF2.8, XF60mmF2.4

●阿部真武
阿部真武+本藤美咲@水道橋Ftarri(2023年)
北田学+外山明+阿部真武@渋谷Bar Subterraneans(2022年)
加藤綾子+阿部真武@不動前Permian(2022年)
細井徳太郎+阿部真武@水道橋Ftarri(2022年)
かみむら泰一+古和靖章+遠藤ふみ+阿部真武@神保町試聴室(2021年)
池田陽子+阿部真武+岡川怜央@Ftarri(2021年)

●北田学
北田学+外山明+阿部真武@渋谷Bar Subterraneans(2022年)
藤山裕子+北田学+藤井信雄@なってるハウス(2022年)
北田学+西嶋徹+神田綾子@渋谷Bar subterraneans(2021年)
神田綾子+北田学@渋谷Bar Subterraneans(動画配信)(2020年)
鈴木ちほ+北田学@バーバー富士(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ+喜多直毅+西嶋徹@なってるハウス(2019年)
audace@渋谷Bar Subterraneans(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(JazzTokyo)(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans(2019年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(2017年)

●外山明
インプロヴァイザーの立脚地 vol.3 外山明(JazzTokyo)(2023年)
永田利樹+石田幹雄+外山明@なってるハウス(2022年)
北田学+外山明+阿部真武@渋谷Bar Subterraneans(2022年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2022年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2021年)
間(ま)と楔(くさび)と浮遊する次元@新宿ピットイン(2021年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2021年)
「飴玉☆爆弾」@座・高円寺(2020年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2020年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
渋大祭@川崎市東扇島東公園(2019年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
藤原大輔『Comala』(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年)
西島芳 trio SONONI@下北沢Apollo(2018年)
松風鉱一カルテット@西荻窪Clop Clop(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年)
西島芳 trio SONONI@下北沢Apollo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
Shield Reflection@Ftarri(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
『SONONI, Laetitia Benat』(2016年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)


徳永将豪+蒼波花音+ショーン・コラム@水道橋Ftarri

2023-01-23 23:18:11 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2023/1/23)。

Masahide Tokunaga 徳永将豪 (as)
Kanon Aonami 蒼波花音 (as)
Sean Colum (g)

徳永曲。演奏も含め幾何学的な図形が時空間に現れてくるように捉える。ふたりのアルトのロングトーンはオーバルのように出現し、重なり、拡がり、ビブラートとともに震える。ギターがその抽象空間から聴く者=幻視する者を現実へと引き戻す効果がある。

コラム曲。はじめはギターから発展し、アルトのふたりがときにユニゾンの快楽をもたらし、ときに互いにずれては、境界が曖昧なクラスターを作り、それを繰り返す。発展の起点は三者の間を移り変わってゆく。変奏のようでもある。

蒼波曲。通常の時間の進行をギターに委ねるようでいて、アルトでの協和と不協和の静かな遷移もまた別の時間を持ち込み、ちょっと幻のようで茫然とさせられる。

Fuji X-E2, 7Artisans 12mmF2.8, XF60mmF2.4

●徳永将豪
遠藤ふみ『Live at Ftarri, March 8, April 11 and June 27, 2021』(JazzTokyo)(2021年)
徳永将豪+遠藤ふみ@Ftarri(その3)(2021年)
徳永将豪+遠藤ふみ@Ftarri(その2)(2021年)
徳永将豪+遠藤ふみ@Ftarri(2021年)
田上碧+徳永将豪+松本一哉@Ftarri (2019年)
Hubble Deep Fields@Ftarri(2019年)
高島正志+竹下勇馬+河野円+徳永将豪「Hubble Deep Fields」@Ftarri(2018年)
森重靖宗+徳永将豪@Ftarri(2018年)
Zhu Wenbo、Zhao Cong、浦裕幸、石原雄治、竹下勇馬、増渕顕史、徳永将豪@Ftarri(2018年)
高島正志+河野円+徳永将豪+竹下勇馬@Ftarri(2018年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+徳永将豪+増渕顕史+中村ゆい@Ftarri(2017年)
Shield Reflection@Ftarri(2017年)
窓 vol.2@祖師ヶ谷大蔵カフェムリウイ(2017年)
徳永将豪『Bwoouunn: Fleeting Excitement』(2016、17年)
徳永将豪+中村ゆい+浦裕幸@Ftarri
(2017年) 

●蒼波花音
幽けき刻@成城学園前Cafe Beulmans(2022年)
幽けき刻@公園通りクラシックス(2022年)


阿部真武+本藤美咲@水道橋Ftarri

2023-01-23 00:28:12 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2023/1/22)。

Masatake Abe 阿部真武 (b)
Misaki Motofuji 本藤美咲 (bs, cl, electronics)

はじめは相の創出。クラリネットやバリトンサックスで発生する音は、息の通り抜ける風と管の共鳴との間の相を行き来する。一方のベースは弦をひとつひとつ弾くところからその連続的なところへと移行、点から線へ、線から面へと次元が増えてゆく。そのように相転移のプロセスと次元を増やすプロセスとが静かに歩調を合わせていた。

セカンドセットでは既に広い世界からはじまっている。そこに動的に濃淡をつけてゆくサウンドのように聴いた。ベースが意図的に刺激的な不連続性を導入したことは、目の前に広げられた世界に濃淡だけでなく焼け焦げの穴も付けていくもののように思えた。

Fuji X-E2, 7Artisans 12mmF2.8, XF60mmF2.4

●阿部真武
北田学+外山明+阿部真武@渋谷Bar Subterraneans(2022年)
加藤綾子+阿部真武@不動前Permian(2022年)
細井徳太郎+阿部真武@水道橋Ftarri(2022年)
かみむら泰一+古和靖章+遠藤ふみ+阿部真武@神保町試聴室(2021年)
池田陽子+阿部真武+岡川怜央@Ftarri(2021年)

●本藤美咲
池田千夏+本藤美咲@下北沢Apollo(2023年)
People, Places and Things × Ex@小岩BUSHBASH(2022年)
本藤美咲+岡千穂@Ftarri(2022年)
本藤美咲+遠藤ふみ@Ftarri(2021年)
照内央晴+柳沢耕吉+あきおジェイムス+本藤美咲@なってるハウス(2021年)


野津昌太郎+北川秀生+定岡弘将@池袋FlatFive

2023-01-19 00:39:40 | アヴァンギャルド・ジャズ

池袋のFlatFive(2023/1/18)。

Shotaro Nozu 野津昌太郎 (g)
Hideo Kitagawa 北川秀生 (b)
Hiromasa Sadaoka 定岡弘将 (ds)

野津さんのギターをはじめて聴いたのだけど、チック・コリアもキャノンボール・アダレイもデューク・エリントンも太っとい音でぐいぐい弾いていて快感。定岡さんのドラミングは定型ではなくその都度なにかを作っているようで、いきなり急停止したり疾走したりして、それもまた刺激がある。そして北川さんのベースは安定の歌。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4

●北川秀生
北川秀生+加藤一平+安東昇@池袋FlatFive(2022年)


遠藤ふみ@水道橋Ftarri

2023-01-17 07:19:20 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2023/1/16)。

Fumi Endo 遠藤ふみ (p, melodica)

遠藤ふみさんが自分自身の企画でインプロを始めたのが2年前、そこからの展開は注目を集め続けるものだった。そして弱音が彼女の個性であればピアノソロに行きつくのも必然のように思える。静寂のなかで自身の時間感覚を保つこと自体が表現上の強度だと思う(たとえば菊地雅章のピアノソロ『After Hours』を想起させるけれど、脳から指への回路はまったく異なるような印象を抱く)。

新譜『つめたい光、あたたかい青の中』を聴きながら昨夜の素晴らしい演奏のことを思い出していて、やはり即興のライヴとはその場限りの得がたい体験なのだなということを実感する。唾を呑みこむ音も気になるほどの静寂(すみません、少し喉をいためていて咳をしました)、そこで届いてくる単音や和音ははじめは独立しているように思えるけれど、次第に静寂と一体のものになってくる。グラデーションの中に描かれたグラデーションはもはや周囲から分かつことが難しい。それどころか音を聴く自分の中の音までが静寂に溶け込んでいくような体験であり、耳は静寂自体に音を感知しはじめる。朦朧としていたら演奏が終わった。

後半は池田拓実さんの曲を演奏。執拗に繰り返しつつ円環を描き別の相へと移行し続けるさまが、また不思議だった。しかし演奏する人の回路は同じもの。

●遠藤ふみ
幽けき刻@成城学園前Cafe Beulmans(2022年)
やみのうつつ vol.1@神保町試聴室(2022年)
長沢哲+遠藤ふみ@神保町試聴室(2022年)
遠藤ふみ+甲斐正樹+則武諒@神保町試聴室(2022年)
幽けき刻@公園通りクラシックス(2022年)
神田綾子+矢部優子+遠藤ふみ@大泉学園インエフ(2021年)
遠藤ふみ『Live at Ftarri, March 8, April 11 and June 27, 2021』(JazzTokyo)(2021年)
青木タイセイ+遠藤ふみ+則武諒@関内・上町63(2021年)
徳永将豪+遠藤ふみ@Ftarri(その3)(2021年)
かみむら泰一+古和靖章+遠藤ふみ+阿部真武@神保町試聴室(2021年)
徳永将豪+遠藤ふみ@Ftarri(その2)(2021年)
本藤美咲+遠藤ふみ@Ftarri(2021年)
徳永将豪+遠藤ふみ@Ftarri(2021年)
池田陽子+遠藤ふみ@Ftarri(2021年)


ブライアン・アレン+田中悠美子+今西紅雪@東北沢OTOOTO

2023-01-15 17:39:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

東北沢のOTOOTO(2023/1/14)。企画したくせに羽田空港から直行して開演時間まぎわに着いた。

Brian Allen (tb)
Yumiko Tanaka 田中悠美子 (三味線, 大正琴)
Kohsetsu Imanishi 今西紅雪 (箏)

はじめにしばらくの間、トロンボーンのロングトーン。その音色からいって逸脱をもともと孕んだ楽器であるから、3人の即興を考えれば誘いに近い。ここに日本の伝統楽器ふたりが静かに個々の音を出して参入する。その入り方は、箏は箏の響く固有の空間を、三味線は三味線の響く固有の空間を保ったままだった。従って三者の重なる距離は肩が触れ合うほど近くはない。そのような静かなおもしろさがあった。

セカンドセットは意図的に距離を詰めたように感じられた。田中悠美子さんの三味線はそれまでに比較すれば蛮勇にも聴こえ、大正琴の持続しうねり粘る音は静かさに亀裂を入れるものでもあった。今西紅雪さんもまた、弓や金属で弦の響きを拡張するとともに、空いた空間にグリッサンドで滑り込んだ。前半とはまったく異なる音の相互作用。

敢えて変わったことをしなくても自由即興はここまで高められるという証左でもあった。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4

●ブライアン・アレン
ブライアン・アレン+ゲオルグ・ホフマン『El Sur』(JazzTokyo)(2021年)
ブライアン・アレン『Almanac』(JazzTokyo)(2021年)
ブライアン・アレン+広瀬淳二+ダレン・ムーア@Ftarri(2018年)

●田中悠美子
田中悠美子@Ftarri(2022年)
「ジョン・ラッセルを追悼する」@下北沢アレイホール(2022年)
藤山裕子+さがゆき+田中悠美子+山田邦喜@なってるハウス(2020年)
トム・ブランカート+ルイーズ・ジェンセン+今西紅雪+田中悠美子@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2019年)
齊藤僚太+ヨシュア・ヴァイツェル+田中悠美子@Ftarri(2018年)
角銅真実+横手ありさ、田中悠美子+清田裕美子、すずえり+大城真@Ftarri(2018年)

●今西紅雪
蓮根魂@なってるハウス(2022年)
障子の穴 vol.4@ZIMAGINE(2020年)
トム・ブランカート+ルイーズ・ジェンセン+今西紅雪+田中悠美子@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2019年)
今西紅雪+S.スワーミナータン@葛西レカ(2019年)
August Moon@浜町August Moon Cafe(2019年)
障子の穴 vol.2@ZIMAGINE(2019年)
今西紅雪「SOUND QUEST 2019 〜谺スル家〜」@千住仲町の家(2019年)
タリバム!+今西紅雪@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2019年)
ピーター・エヴァンス@Jazz Art せんがわ2018(JazzTokyo)(2018年) 

 


マグダレーナ・アバカノヴィッチ展@ロンドン・テートモダン

2023-01-15 15:56:35 | アート・映画

運よく、ロンドンのテートモダンでマグダレーナ・アバカノヴィッチ(ポーランドの彫刻家)の回顧展が開かれていた。かつて広島のアバカノヴィッチ展で元藤燁子さんが踊り、齋藤徹さんがコントラバスを弾いたという、その力を体感したかった。

やはり圧巻はサイザル麻や馬の毛やロープなどを使ったアバカンというシリーズ。生命をもつものはどんな不思議な形や動きをしているからといっても、そこには自然界の論理が機能している。人間からは捉えきれないそれを想像し、オーガニックの通路を経てなにかその力を現出させようとする表現であり、たしかに通常の人為でなかったから社会的な力・政治的な力さえも持ってしまったのか。


アバカンいくつか


アバカンのひとつ


「Pregnant」


リ・ソン、アンガラッド・デイヴィス、スティーヴ・ベレスフォードら@ロンドンCafe OTO

2023-01-15 01:08:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

ロンドンのCafe OTO(2023/1/12)。

Guy Sherwin (film)
Angharad Davies (vln)
Ecka Mordecai (horsehair, harp, voice)
David Leister (film)
Li Song (snare drum)
Steve Beresford (p)
and more.

動画と音楽の祭典のようなイヴェントであり、驚くほどたくさんの人が集まった。スーパーデラックスに雰囲気が似ているかもしれない。

出演者も多数だったが、注目は以下の3人。

リ・ソンは昨年末の小岩BUSHBASHよりもシンプルにスネアをひとつのみ。これに発信体をぶらさげて近づけ、逆方向からメトロノームを当てる。短いパフォーマンスながらたいへんに濃密であり、偶然性に依拠しすぎず、かつ制御的でもない。このバランスのありようが絶妙であり、潔く終えたときには歓声が起こった。

スティーヴ・ベレスフォードもまた濃密。「●」がパズルのように動く動画を視ながら、そうでしかありえないと思わせるピアノ演奏。何の達人か、時間か、自分自身を含めて人為をあるがままに提示するありようか。

真っ暗な中でのアンガラッド・デイヴィスのヴァイオリンソロはみごとだった。さまざまな周波数が共存し、それぞれが別の意思を持った生物のように軌跡を描く。そして全体として別個の生物となり、まるでひらがなで叫ぶように聴こえた。圧倒された。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4

●リ・ソン
People, Places and Things × Ex@小岩BUSHBASH(2022年)

●スティーヴ・ベレスフォード
サラ・ゲイル・ブランド+マーク・サンダース+ジョン・エドワーズ+スティーヴ・ベレスフォード、アレックス・マグワイア+クロード・デッパ@ロンドンCafe OTO(2023年)
オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス+スティーヴ・ベレスフォード『Check for Monsters』(2008年)
ジャズ的写真集(6) 五海裕治『自由の意思』(2003年)
カンパニー『Fictions』(1977年)


サラ・ゲイル・ブランド+マーク・サンダース+ジョン・エドワーズ+スティーヴ・ベレスフォード、アレックス・マグワイア+クロード・デッパ@ロンドンCafe OTO

2023-01-15 00:18:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

およそ12年ぶりのロンドン・Cafe OTO(2023/1/9)。そのときは電車がストで止まっていて、路線バスで辿り着いた。この日はUber。時代なんてあっさり変わってしまうものである。ハコの中はたぶんあまり雰囲気は変わっていないが照明が少し明るくなったような気がする。それから、販売用の書籍がとても充実していた。

Duo:
Alex Maguire (p)
Claude Deppa (tp)

Quartet:
Sarah Gail Brand (tb)
Mark Sanders (ds)
John Edwards (b)
Steve Beresford (p)

アレックス・マグワイアのピアノはやはり欧州インプロの系譜上にあることがわかる。中央集権的でも方法論集約的でもなく、自身の身体の動きを重視して音を出している。対してクロード・デッパのトランペットは柔らかくて情を溢れさせたようなものであり、なるほどこれならばカーラ・ブレイのバンドとの親和性が高い。

そして目当てのスティーヴ・ベレスフォードだが、あまりにも自然に極端へと走る佇まいに驚かされてしまった。玩具や部品をピアノ内部に何のためらいもなくぶちまけ、何のためらいもなく勢いよくそれらを操る。模索の美学なんてそこにはなさそうであり、こうなればむしろ悟りだ。

6年前に六本木でユリエ・ケアらとの共演を観ていらいのジョン・エドワーズは、やはり弦のテンションが異常に高く、それをやすやすと弾きこなす超ヘヴィ級ぶり。マーク・サンダースも重い。一方でサラ・ゲイル・ブランドは極端な三人と無駄に張り合うことはせず、ふわりふわりとサウンドを作っていった。好感。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4

●スティーヴ・ベレスフォード
オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス+スティーヴ・ベレスフォード『Check for Monsters』(2008年)
ジャズ的写真集(6) 五海裕治『自由の意思』(2003年)
カンパニー『Fictions』(1977年)

●ジョン・エドワーズ
ユリエ・ケア3、リーマ@スーパーデラックス(2017年)
ルイス・モホロ『Uplift the People』(2017年)
オッキュン・リー『Cheol-Kkot-Sae [Steel Flower Bird]』(2016年)
シカゴ/ロンドン・アンダーグラウンド『A Night Walking Through Mirrors』(2016年)
ジョン・ブッチャー+ジョン・エドワーズ+マーク・サンダース『Last Dream of the Morning』(2016年)
エヴァン・パーカー+ジョン・エドワーズ+クリス・コルサーノ『The Hurrah』
(2014年)
三上寛+ジョン・エドワーズ+アレックス・ニールソン『Live at Cafe Oto』(2013年)
ジョン・エドワーズ+オッキュン・リー『White Cable Black Wires』(2011年)
ロル・コクスヒル+ジョン・エドワーズ+スティーヴ・ノブル『The Early Years』(2004年)
パウル・ローフェンス+パウル・フブヴェーバー+ジョン・エドワーズ『PAPAJO』(2002年)

●マーク・サンダース
ジョン・ブッチャー+ジョン・エドワーズ+マーク・サンダース『Last Dream of the Morning』(2016年)
エヴァン・パーカー+ノエル・アクショテ+ポール・ロジャース+マーク・サンダース『Somewhere Bi-Lingual』、『Paris 1997』(1997年)


Yukari Endo Project『DROP, DROP, SLOW TEARS』

2023-01-13 15:05:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

The tribute album『DROP, DROP, SLOW TEARS』dedicated to Yukari Endo / 遠藤ゆかりトリビュートアルバム『DROP, DROP, SLOW TEARS』

このCDのライナーノーツを書きました。

遠藤ゆかりさんは90年代の東京で活動したジャズヴォーカリストです。オーストラリアでの生活を経て、ふたたびあらたな音楽世界を模索していた矢先に倒れ、急逝しました。残された譜面や音源の存在を知らされた西島芳さん(ピアノ)は動揺し、ともかくも模索したといいます。そして東かおるさん(ヴォーカル)、市野元彦さん(ギター)、甲斐正樹さん(ベース)という素晴らしいメンバーとともにトリビュートアルバムを完成させました。

曲の多くは『新約聖書』やオーストラリアでの信仰体験をもとにしたものです。僕にはキリスト教の信仰はありませんが、ゆかりさんが表現したかったであろうことが音楽として昇華し、音楽=人というありようが現出していることは実感できます。

一般発売は4月ですが、もうライヴ会場等では販売しているとのこと。聴けば聴くほど音楽世界が広がってくる作品です。ぜひ。

Kaori Nishijima 西島芳 (p)
Kaoru Azuma 東かおる(vo)
Motohiko Ichino 市野元彦 (g)
Masaki Kai 甲斐正樹 (b)

●西島芳
西島芳 trio SONONI@下北沢Apollo(2018年)
西島芳 triogy@本八幡cooljojo(2018年)
西島芳 triogy@下北沢Apollo(2018年)
西島芳 trio SONONI@下北沢Apollo(2018年)
西島芳アンサンブル・シッポリィ『Very Shippolly』(2017年)
『SONONI, Laetitia Benat』(2016年)

●市野元彦
酒井俊+瀬尾高志+須川崇志+市野元彦@稲毛Candy(JazzTokyo)(2022年)
西島芳 trio SONONI@下北沢Apollo(2018年)
『SONONI, Laetitia Benat』(2016年)
西島芳 trio SONONI@下北沢Apollo(2018年)
The Quiet Sound Graphy@KAKULULU(2017年)
rabbitoo@フクモリ(2016年)
rabbitoo『the torch』(2015年)
渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(2015年)
かみむら泰一『A Girl From Mexico』(2004年)

●甲斐正樹
遠藤ふみ+甲斐正樹+則武諒@神保町試聴室(2022年)


鉄道と美術の150年@東京ステーションギャラリー

2023-01-08 22:32:18 | アート・映画

もう終わってしまうのでかなり混んでおり、あまりじっくりと観ることができず、結局資料として図録を買うことになる。しかしあらためて紐解くとやっぱりおもしろい。

驚かされるのは、鉄道と美術が明治初期の同じ年に翻訳語として生まれ、ともに並走してきたという視点。はじめは近代化のために、ときに侵略を糊塗する手段として。たしかに満鉄の爆走するあじあ号のイメージは強烈な力を持っていただろう。引き揚げの際にも鉄道は美術作品に欠かせないモチーフだった。展示された美術作品のうちもっとも惹かれたのは松本竣介が描いた東京駅の裏側。この人の絵をまとめて観たらどきどきして気絶するのでは。


『沖縄の“眼”になった男 〜写真家・平良孝七とその時代〜』

2023-01-08 17:29:05 | 沖縄

NHKの『沖縄の“眼”になった男 〜写真家・平良孝七とその時代〜』は力作だった。

「武器としての写真」による社会的な告発をねらった平良孝七は、自身の職業スタンスとの矛盾に苦しんでもいた。その相克は、実は屋良朝苗琉球政府主席を背後から捉えた写真や、施政権返還時のかれらしくないアレ・ブレ・ボケ写真としてかたちになってもいたということが納得できる。 だから、告発に「むなしさ」を感じてから「ただ視る」ことを実践してきたということが実感できる写真群(番組にも登場する仲里効さんが『フォトネシア』で書いている)や、アイコンとして利用されてきた少女の写真などは、平良の世界のすべてではない。

番組の最後に、山城知佳子さんが自身と戦争体験者との顔を重ね合わせ、体験談を同じ口から語らしめる動画作品《あなたの声は私の喉を通った》について話している。現代のわたしたちは戦争体験者と同じ怒りや感情を持つことはできない。それを表現としたものでもあった、と。これは平良の感じた「むなしさ」と表裏一体のものかもしれない。ちょっと驚いた。 

沖縄の“眼”になった男 〜写真家・平良孝七とその時代〜 - ETV特集 - NHK

手元にある『沖縄カンカラ三線』(三一書房、1982年)

●参照
琉球弧の写真、石元泰博
コザ暴動プロジェクト in 東京
平良孝七『沖縄カンカラ三線』
『山城知佳子 リフレーミング』@東京都写真美術館
仲里効『フォトネシア』