Sightsong

自縄自縛日記

川下直広+栗田妙子『11.25 & 27@バレルハウス』

2019-12-31 10:22:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

川下直広+栗田妙子『11.25 & 27@バレルハウス』(2019年)。いつかこのデュオを観たいものだと思っていたのだけれど、思いがけず聴く機会があった。

Naohiro Kawashita 川下直広 (ss, harmonica)
Taeko Kurita 栗田妙子 (p, melodica)

川下直広さんのサックスは、グループで濁流をどどどと創り出すときも好きだが、ソロもまた良い。歌の間があって、ソロではそれが相互作用に消費されるのではなく、ブロウと地続きの音として提示される。聴く者は音と間とを自分の呼吸とシンクロさせなければならず、そのために、演奏者も聴く者も内省的になるのだと言える。

それではデュオはどうかと聴いてみれば、また違うことがわかる。サウンドのために奉仕するのはグループと同じだろうけれど、相手にも聴き手にも同じように接している感があって、言ってみれば、内省と親密の両方があるように思える。

川下さんのソプラノサックスは吹いたあとの尻尾のヴィブラートがその場のあれこれを拾って、聴く者は猫じゃらしを凝視する猫のようになってしまう。栗田妙子さんはわりと淡々と弾いているのだが、きっと対話を楽しむのと同様に含み笑いをしているにちがいない。そのような音のありようである。対話だからもたれ合いもあって(「It Don't Mean A Thing」とか)、それがまた親密さの音で愉しい。

●川下直広
波多江崇行+川下直広+小山彰太(Parhelic Circles)@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2018年)
原田依幸+川下直広『東京挽歌』(2017年)
川下直広カルテット@なってるハウス(2017年)
波多江崇行+川下直広+小山彰太『Parhelic Circles』(2017年)
川下直広@ナベサン(2016年)
川下直広カルテット@なってるハウス(2016年)
沖至『夜の眼』(2015年)
渡辺勝+川下直広@なってるハウス(2015年)
川下直広『Only You』(2006年)
川下直広『漂浪者の肖像』(2005年)
川下直広+山崎弘一『I Guess Everything Reminds You of Something』(1997年)
『RAdIO』(1996, 99年)
『RAdIO』カセットテープ版(1994年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』(1988年) 

●栗田妙子
伊藤匠+細井徳太郎+栗田妙子@吉祥寺Lilt
(2018年)


テリ・リン・キャリントン(Social Science)『Waiting Game』

2019-12-30 13:04:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

テリ・リン・キャリントンのSocial Scienceによる『Waiting Game』(motema、2017年)。

Social Science:
Terri Lyne Carrington (ds, per, vo)
Aaron Parks (p, key)
Matthew Stevens (g)
Morgan Guerin (sax, b, EWI)
Debo Ray (vo)
Kassa Overall (MC, DJ)

Derrick Hodge (b) 1, 2
Malcom-Jamal Warner (spoken word) 2
Nicholas Payton (tp), Raydar Ellis (MC), Negah Santos (per), Chris Fishman, Edmar Colòn (additional key), Layth Sidiq (vln), Mimi Rabson (vln), David France (vln), Jeremy Harman (cello) 3
Kokayi (MC) 4
Mark Kibble (vo) 5
Rapsody (spoken word) 6
Esperanza Spalding (b) 7
Meshell Ndegeocello (spoken word)
Mumia Abu Jemal (spoken word)
Marilyn Buck, Angela Davis, Leonard Peltier, Assata Shakur, Laura Whitehorn (sampled voices) 8
Maimouna Youssef (Memu Fresh) (MC), Derrick Hodge (b) 10
Esperanza Spalding (b), Wendy Rolfe (fl, alto-fl), Layth Sidiq (vln), Mimi Rabson (vln), David France (vln), Jeremy Harman (cello), Matthew Stubbs (Cl, Bass-Cl)  Disc Two
Additional voices for tracks 1, 3, 8: Calvin Gantt, Aja Burrell Wood, Dean Albak, Ksenia, Vasileva, Wonmi Jung, EJ Hwang, Vasileios Kostas, Eirini Tormesaki, Almira, Izumchensky, Vasiki Izmchensky, Torey S. Abron, Reina K. Huguley, Micaela Preston, Adwa S. Petty, Ryan N. Smith

テリ・リン得意の大人数プロジェクト。とは言えどこかで見たように散漫なものではない。

サウンドには一本筋が通っている。特にMCとスポークンワードの多用であり、さまざまな声の持つ鼓動に身を任せて聴くと、テリ・リンのドラムスも声であり鼓動であることが体感できる。3曲目におけるストリングスの潔く絡み合うあり方は巧みだし、すっと色を付けてゆくマシュー・スティーヴンスのギターも良い。

2枚目は様子がいきなり変わって、ストリングスを中心に据えたサウンド。弦によって響きが違うことがうまく使われていて、それぞれがあちこちで異なる固有の音色を発している。テリ・リンのドラミングはその中を疾走するのではなく、弦に身を寄せているように聴こえる。これもなんて素敵なんだろう。

●テリ・リン・キャリントン
デイヴィッド・マレイ+ジェリ・アレン+テリ・リン・キャリントン『Perfection』(2015年)
テリ・リン・キャリントン『The Mosaic Project: Love and Soul』(2015年)
ジェリ・アレン、テリ・リン・キャリントン、イングリッド・ジェンセン、カーメン・ランディ@The Stone(2014年)
デューク・エリントンとテリ・リン・キャリントンの『Money Jungle』(1962、2013年)


夢Duo年末スペシャル@なってるハウス

2019-12-28 09:11:53 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウス(2019/12/27)。

Takayuki Kato 加藤崇之 (g)
Akemi Shoomy Taku 宅Shoomy朱美 (vo, p)
Koichi Matsukaze 松風鉱一 (ts, fl)
Yoshinori Shimizu 清水良憲 (b)
Kiko Doumoto 堂本憙告 (dr)
Mika Fujinoki 藤ノ木みか (per)
Guest:
Nobuko Kawaguchi 川口信子 (p)
Koharu Yanagiya 柳家小春 (vo)
Fujie Nakayama 中山ふじえ (harmonica)

ファーストセットはメンバーもゲストも出たり入ったりする展開。三味線弾き語りの柳家小春さん、手探りする感覚で聴き入ってしまう(ちょっとはらはらするところも個性か)。久々に中山ふじえさんのハーモニカを聴いたが迫力があって、同時に気持ちがいい。川口信子さんのピアノもまた良くて、シューミーさんのピアノとまるで違うのがまたおもしろい。絶妙なゲスト構成。

最初から「夢Duo」の世界でひとつのサウンドが充満していて、それはカーラ・ブレイの存在感に匹敵するほど。6人で続けたセカンドセットはさらに呑まれてしまうほどのものだった。「For All We Know」、「So Many Stars」、「Blame It on My Youth」、それから元気を出そうよと言わんばかりの「In A Sentimental Mood」、最後は「歩こうよ」。

加藤さんのガットギターは沁みいるようだし、エレキは何をしなくても自由が溢れ出てくる。松風さん曰く、加藤さんと一緒にやるときはいつもテナーとフルートだそうで、この日はほとんどテナーを吹いた。まろやかで擦れていて溶けるようなテナーは絶品。「Blame ...」で加藤さんがガットギターに戻し、テナーソロが終わるのを待って絶妙の瞬間で藤ノ木みかさんが鈴をちりりんちりりんと鳴らしたところなんて、いろいろな音楽が同じ場を共有していることを実感できて嬉しかった。

そしてシューミーさんのピアノは和音と残響がいつも聴く者を一緒に震わせるし、ウルトラ自然体に感じさせる独特のヴォイスもすごく良い。

終わってから松風さん、恥ずかしながらきょうだい弟子の斎藤直子さんとひとしきり話した。なんの展開だったか、松風さんは「反体制だからよ」と何度も言った。それは気分の反体制などではなく、教条主義的な楽理に対する反体制なのだった。ドレミファソラシドからの自由をいつまでも追及する師匠だった。来年の楽しみな予定もいくつか聞いた。駆けつけられればいいなあ。

すごく良いすごく良いの年末のなってるハウス。

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●宅Shoomy朱美
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ+喜多直毅+西嶋徹@なってるハウス(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(JazzTokyo)(2019年)
夢Duo@本八幡cooljojo(2019年)
宅Shoomy朱美+辰巳小五郎@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2019年)
夢Duo『蝉時雨 Chorus of cicadas』(2017-18年)
原田依幸+宅Shoomy朱美@なってるハウス(2018年)
impro cats・acoustic@なってるハウス
(2018年)

●加藤崇之
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
加藤崇之『森の声』(2019年)
加藤崇之+不破大輔+藤掛正隆+元晴@荻窪ルースターノースサイド(2019年)
夢Duo@本八幡cooljojo(2019年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その2)
松風鉱一カルテット@西荻窪Clop Clop(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン
(2018年その1)
夢Duo『蝉時雨 Chorus of cicadas』(2017-18年)

松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
松風鉱一@十条カフェスペース101(2016年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
加藤崇之トリオ『ギター・ミュージック』の裏焼き(1989年)

●松風鉱一
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
渋大祭@川崎市東扇島東公園(2019年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
平田王子+渋谷毅『Luz Do Sol*やさしい雨』(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その2)
松風鉱一カルテット@西荻窪Clop Clop(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その1)
松風M.A.S.H. その3@なってるハウス(2018年)
今村祐司グループ@新宿ピットイン(2017年)
松風M.A.S.H. その2@なってるハウス(2017年)
松風M.A.S.H.@なってるハウス(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
松風鉱一@十条カフェスペース101(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
5年ぶりの松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)
松風鉱一『Good Nature』(1981年)
松風鉱一トリオ+大徳俊幸『Earth Mother』(1978年)
『生活向上委員会ライブ・イン・益田』(1976年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』 
反対側の新宿ピットイン
くにおんジャズ、鳥飼否宇『密林』


Meg with Reed Dukes@武蔵境810 Outfit Cafe

2019-12-27 08:15:47 | アヴァンギャルド・ジャズ

武蔵境の810 Outfit Cafe(2019/12/26)。Maresukeさんがはじめたお店である。

Meg Mazaki (dr)
Tobio Akagi 赤木飛夫 (as)
Michio Karimata 狩俣道夫 (fl, ss)
Susumu Congo 金剛督 (ts)
Houhi Suzuki 鈴木放屁 (ts)
Junji Mori 森順治 (as)
Teruhito Yamazawa 山澤輝人 (ts)
Guest: 
Maresuke (b)
Akemi Hayashi 林あけみ (key)
Shibahito Akano アカノシバヒト (尺八) 

Megさんが多くのリード奏者たちと対決するという趣向。もともと去年だかに予定されていたが、Megさんの突然のヘルニアで流れてしまった。あんな激しいプレイをしたあとでもとくにつらいこともなさそう。それにしても雑居ビルのスナックに挟まれた小さい店内に曲者たちが集まっていて、妙におかしい。

最初はMegさんとリード奏者とのデュオを6本。それぞれの個性がいやでも放出されていて愉快極まりない。金剛さんは腹の底から唸るようなテナーであり、Megさんも呼吸を合わせる。鈴木さんのテナーはわかっていても最初の一音で身体ごと押される。でかい棍棒を笑いながら振り回す巨人のごときであり超危険。森さんのアルトは、(冗談ではなく)森のようにあれこれの樹が思い思いに生えていて、演奏が進むとともに世界が豊かになっていく。Megさんもドラミングを組み立てるようにしているのがおもしろい。山澤さんは敢えて激情をおさえるようにブルージーにも吹き、これも良かった。狩俣さんのフルートと擦れる息の音、それに交錯するMegさんのシンバル音。赤木さんのどこかに突入するような硬くて通るアルト。

セカンドセットはさまざまな組み合わせの演奏が行われた。キーボードと尺八で攪乱される。Maresukeさんのコントラバスが入るとサウンドがまた下から違うものになって驚きもする。牽制も遊びもあって、コミュニティ音楽に他ならないものだった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●Meg
日本天狗党、After It's Gone、隣人@近江八幡・酒游館(2019年)
柳川芳命+Meg Mazaki『Heal Roughly Alive』(2018年)
柳川芳命+Meg『Hyper Fuetaico Live 2017』(JazzTokyo)
(2017年)
Sono oto dokokara kuruno?@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)

●日本天狗党
日本天狗党、After It's Gone、隣人@近江八幡・酒游館(2019年)
Sono oto dokokara kuruno?@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)

●山澤輝人
Sono oto dokokara kuruno?@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)

●森順治
Ten meeting vol.2@阿佐ヶ谷天(フローリアン・ヴァルター)(2018年)
松風M.A.S.H. その3@なってるハウス(2018年)
松風M.A.S.H. その2@なってるハウス(2017年)
鳥の未来のための螺旋の試み@ひかりのうま(2017年)
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
松風M.A.S.H.@なってるハウス(2017年)
林ライガ vs. のなか悟空@なってるハウス(2017年)
リアル・タイム・オーケストレイション@Ftarri(2016年)
森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO(2016年)
本多滋世@阿佐ヶ谷天(2016年)
M.A.S.H.@七針(2016年)
森順治+橋本英樹@Ftarri(2016年)
M.A.S.H.@七針(2015年) 


細井徳太郎+松丸契@東北沢OTOOTO

2019-12-22 20:59:37 | アヴァンギャルド・ジャズ

東北沢のOTOOTO(2019/12/22)。

Tokutaro Hosoi 細井徳太郎 (g, effect)
Kei Matsumaru 松丸契 (as, effect)

師走の日曜日のお昼ということで、なんとなくリラックスして自由な手合わせを想像してきた。実際にそんなところで、このふたりだからおもしろい場面がたくさんあった。(ところで若い女性客が多いようですがどういうことでしょうか。)

ふたりとも活動を始めるとともにその証拠をばらまき、放置し、やがて残滓の回収を始める。エフェクトの使用は単なるサウンド領域の拡張ではなく、時間軸の遡りでもあり、時間軸への反乱でもあった。松丸さんのマージナルな領域への駆け出しで話はゼロクリアである。そこからサウンドは奇妙な社会を創り出し、ディストピアのように遊び始めた。

セカンドセットは長い切片の重ね合わせ。また先とは異なる音風景が視えてきた。ポルタメント的でもあったからやや朦朧とさせられた。知覚のどこか中間領域にとどめおかれて、いきなり終焉を迎えた。さらにもう一度サウンドを作る。細井さんは先のばらまきと回収ではなく、最初から何かのマッスを見せようとしているように思えた。松丸さんがここで意外にジャズ的なフレーズを吹き続けたのは確信犯だったか。再びいきなり終焉。

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●細井徳太郎
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)
李世揚+瀬尾高志+細井徳太郎+レオナ@神保町試聴室(2019年)
細井徳太郎+君島大空@下北沢Apollo(2019年)
秘密基地@東北沢OTOOTO(2019年)
謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
合わせ鏡一枚 with 直江実樹@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)
伊藤匠+細井徳太郎+栗田妙子@吉祥寺Lilt
(2018年)

●松丸契
松丸契『THINKKAISM』(2019年)
纐纈雅代+松丸契+落合康介+林頼我@荻窪ベルベットサン(2019年)
m°Fe-y@中野Sweet Rain(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)


ベースアンサンブル ~ Travessia de Tetsu ~@横濱エアジン

2019-12-22 20:21:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

横濱エアジン(2019/12/21)。

Kazuhiro Tanabe 田辺和弘 (b)
Takashi Seo 瀬尾高志 (b)
Masao Tajima 田嶋真佐雄 (b)

齋藤徹さんが2011年から主宰し、1年半ほど続いたコントラバス奏者だけのプロジェクト「ベースアンサンブル弦311」。本来は再演のはずだったが徹さんの急逝により実現しなかった(リハーサルは録音されていない)。このたび中心人物だった3人がふたたび集まった。わたしも、2011年にいちど、それから今年の徹さんのお通夜で観たきりだ(ジャン・サスポータスの素晴らしい踊りは忘れられない)。なお2012年にはバール・フィリップスを迎え、『Live at Space Who』が録音されている。

この日は徹さんの曲が演奏された。街、Tango Eclips 全3楽章、西覚寺~トルコマーチ~Invitation、フリーインプロヴィゼーション、オンバク・ヒタム桜鯛 全3楽章、Travessia。

三者三様の個性をときどき見せてくれるようで、最初から最後まで奇妙に覚醒して聴いていた。瀬尾さんの強面でいて力技で繊細な領域に戻るような感覚。田嶋さんの音も多彩だがまんなかあたりの震えは素晴らしく良い。田嶋さんは喉歌でさらに倍音を付加する。田辺さんの繰り出す音は微妙に横方向の広がりを変え、その中で微妙に軌道を変え、まるで良い声を聴いているようだ。実際に「オンバク・ヒタム桜鯛」での歌唱は深く驚かされるものだった。 

3人の音は横に並び、抜いたり譲ったり休んだり重なったり離れたり跳躍したりする。誰もが太い潮流になり、細い糸になる。全体として大きなうねりを作りもする。「オンバク・ヒタム桜鯛」など魚が水面から飛び跳ね光が乱反射するようでもあった。最後にはなんとも言えないなつかしさが訪れてきた。

●田嶋真佐雄
李世揚+瀬尾高志+かみむら泰一+田嶋真佐雄@下北沢Apollo(2019年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)

●田辺和弘
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
喜多直毅クアルテット「文豪」@公園通りクラシックス(2018年)
喜多直毅クアルテット@求道会館(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)

●齋藤徹
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
『Sluggish Waltz スロッギーのワルツ』(JazzTokyo)(2019年)
ジャン・サスポータス+矢萩竜太郎+熊坂路得子@いずるば(齋藤徹さんの不在の在)(2019年)
松本泰子+庄﨑隆志+齋藤徹@横濱エアジン(『Sluggish Waltz - スロッギーのワルツ』DVD発売記念ライヴ)(2019年)
齋藤徹+久田舜一郎@いずるば(2019年)
齋藤徹+沢井一恵@いずるば(JazzTokyo)(2019年)
近藤真左典『ぼくのからだはこういうこと』、矢荻竜太郎+齋藤徹@いずるば(2019年)
2018年ベスト(JazzTokyo)
長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム(2018年)
藤山裕子+レジー・ニコルソン+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@喫茶茶会記(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
DDKトリオ+齋藤徹@下北沢Apollo(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 


ジーン・ジャクソン@赤坂Crawfish

2019-12-22 07:47:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

赤坂のCrawfish(2019/12/19)。

Gene Jackson (ds)
May Inoue 井上銘 (g)
David Bryant (key, p)
Keisuke Furuki 古木佳祐 (b)

「Electric Yontet」という冗談のようなグループ名だが、それはつまりデイヴィッド・ブライアントがキーボードを弾くからだ。ピアノでのたいへんな存在感を思えば(ヘンリー・スレッギル、スティーヴ・コールマン、デイヴィッド・マレイ)、かれのキーボードも観てみたい。

まずは凝った入り方から「My Favorite Things」、「The Lost Queen」(井上)と続いて、ブライアントのアレンジによる「We Shall Overcome」。いや聴きにきてよかったと思えるソウル満点のキーボードである。そのままハービー・ハンコックの「Actual Proof」でもう全員ノリノリ。

セカンドセットはジーン・ジャクソンのオリジナル2曲に続き、「Amazing Grace」、白金ーゼから取ったという「ガネーゼ」(井上)、そしてふたたびブライアントのアレンジによる「Fall」(ショーター)。ブライアント曰く、ショーターは天才だった。そして過去の曲もよく使った。これは「Autumn Leaves」を変形させたものだ、と(言われないとわからない)。最後にブルース。

ジーン・ジャクソンはハービーについて、「former boss」、「前の社長」と言った。かれのヘヴィ級にして空中で自在に加速減速を繰り返すドラミングを目の当たりにするたびに、それは伊達ではないと思い知らされる。

ブライアントは来年デイヴィッド・マレイのオクテットでピアノを弾く。訊いたところ録音するかもとのこと。

Nikon P7800

●ジーン・ジャクソン
片倉真由子@Body & Soul(2019年)
レイモンド・マクモーリン@六本木Satin Doll(2019年)
ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン『All of A Sudden』(2018年)
ジーン・ジャクソン・トリオ@Body & Soul(2018年)
ジーン・ジャクソン(Trio NuYorx)『Power of Love』(JazzTokyo)(2017年)
オンドジェイ・ストベラチェク『Plays Mostly Standards』(2017年)
オンドジェイ・ストベラチェク『Live in Prague』(2017年)
オンドジェイ・ストベラチェク『Sketches』(2016年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
及部恭子+クリス・スピード@Body & Soul(2015年)
松本茜『Memories of You』(2015年)
デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』(1995年)

●デイヴィッド・ブライアント
レイモンド・マクモーリン@六本木Satin Doll(2019年)
ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU(2019年)
マリア・グランド『Magdalena』(2018年)
ルイ・ヘイズ@Cotton Club(2017年)
エイブラハム・バートン・カルテットとアフターアワーズ・ジャムセッション@Smalls(2017年)
ルイ・ヘイズ『Serenade for Horace』(-2017年)
マリア・グランド『Tetrawind』(2016年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
ルイ・ヘイズ@COTTON CLUB(2015年)
レイモンド・マクモーリン『RayMack』、ジョシュ・エヴァンス『Portrait』(2011、12年)

●井上銘
TAMAXILLE『Live at Shinjuku Pit Inn』(2017年)


松本泰子+メアリー・ダウマニー+丸田美紀@音や金時

2019-12-21 09:56:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

西荻窪の音や金時(2019/12/17)。

Taiko Matsumoto 松本泰子 (vo)
Mary Doumany (harp)
Miki Maruta 丸田美紀 (箏)

齋藤徹さんと縁のあった3人の集まり。それもあって、松本泰子さんが歌った『オペリータ うたをさがして』や、丸田美紀さんがKoto Vortexのひとりとして参加した『Stone Out』を予習のように聴いて出かけた。

ファーストセットはそれぞれの自己紹介としてのソロ。

メアリーさんの音を直に聴くのははじめてだが、ハープから想像する音の流れというよりも、一音一音がクリアに立っていることに驚き目が醒める。(ここでは過去の記事等との連続性を考慮して「ダウマニー」と書いているけれど、実際の発音は「ドゥマーニ」に近い。)

松本泰子さんは3年くらい前に徹さんにデュオを演りたいと言ったところ、即興を念頭に置いていたけれど、徹さんに「うたがいいな」と返されたとのこと。それもあって、うた、即興、またうたに戻った。

丸田美紀さんは、この日の前日が誕生日だった故・沢井忠夫さんの曲「鳥のように」。徹さんについては、どっちともわからなかった伝え方だったが今になってそれがわかる、と話した。CD以外で丸田さんを聴くのはやはりはじめてだが、メアリーさんと同様に、一音の強さに少し驚かされた。そして丸田さんは、メアリーさんがチューニングしながら弾くことのおもしろさ、微分音があって箏と一緒に演奏しても気持ち悪くないことを話し、泰子さんが、コントラバスもそうだっただろうと付け加えた。

セカンドセット、トリオ。宮沢賢治作詞作曲の「星めぐりの歌」はシンプルでとても素敵な詩であり、歌のあとに箏が繰り返し、ハープとともにサポートするような按配。そして、徹さんが7人の詩人たちとともにつくりあげた最後の仕事を演奏した(『Sluggish Waltz スロッギーのワルツ』)。

市川洋子「はじまりの時」は気がつくと柔らかく触れてくる感覚。野村喜和夫「防柵7(沈めよ、顔を)」では箏のイントロからはじまり、螺旋のように脳の底へと潜入してゆく感覚。箏とハープとが同じ場所で上へ下へと飛びまわるコンビネーションがとても良い。

ここでメアリーさんが徹さんについて語った。現代音楽の関係で日本に来ていたときに、徹さんに出逢った。それで2015年に再来日して、2、3回共演した。力強いコンビネーションで、ワイルドで、フリーで、ファンタスティックだった。わたしたちは良い友達になった。徹さんはメアリーさんが母親に似ていると言った、と。(急に泰子さんからマイクを渡されそれを通訳した。)来日のためのグラントの手続きで、受け入れ側の沢井一恵さんから丸田さんに話があり、そこからメアリーさんと丸田さんとの縁もできたということだ。

続いて、渡辺洋「ふりかえるまなざし」。「いっぽ」のところで実際に踏み出す泰子さん。複雑な旋律を全員で演奏し、メアリーさんも「ねばりづよく、ねばりづよく」と歌っている。この日、3人で最初のいっぽを踏み出せた、と、泰子さん。

木村裕「雫の音」では、メアリーさんは紙を弦の間にはさんで異音を出す。箏も異音側に動く。全員で何かのまわりをまわっているようだ。寶玉義彦「青嵐の家」で「日曜日の表参道」と歌うことの異化作用、ここに入ってくる驚きの弦の音音。薦田愛「てぃきら、うぃきら、ふぃきら、ゆきら、りきら、ら」。3人が同じ方向に歩いて愉しんでいる。最後に「~ら!」。

そして、三角みづ紀「Pilgrimage」。これだけは徹さんがはじめに曲を書き、三角みづ紀さんが詩を付けたものだという。弦を掻き鳴らす哀しさとその次にやってくる嬉しさ。伸びてこちらに直接届いてくる泰子さんの声。「この身体で」「身体だけで」という言葉があるからこその締めくくりに違いない。

なんて豊かな音楽世界なんだろうという気持ちばかりである。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●メアリー・ダウマニー
メアリー・ダウマニー+マイルス・ブラウン『The Narcoleptor』(2018年)

●松本泰子
松本泰子+庄﨑隆志+齋藤徹@横濱エアジン(『Sluggish Waltz - スロッギーのワルツ』DVD発売記念ライヴ)(2019年)
『Sluggish Waltz スロッギーのワルツ』(JazzTokyo)(2019年)


千野秀一+照内央晴@渋谷公園通りクラシックス

2019-12-16 00:17:44 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷の公園通りクラシックス(2019/12/15)。

Shuichi Chino 千野秀一 (p)
Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)

グランドピアノが2台あるこの場所ならではのピアノデュオ。1時間前後の共演が2セット行われた。セットによって弾くピアノを替えただけであり、各々はひたすら自身の前の鍵盤に向かった。

こうして2時間近く左右の音を体感していると、ふたりの個性の違いがよく感じられてきた。照内さんは常に構造とともに動いている。高音から低音までを往還しつつ、どこかが遊離することはない。そのエネルギーは楔のようにピアノに伝えられている。千野さんは対照的に、サウンドのどこからでも構造を敢えて棄て去り、そこから次へと踏み出す。過激な無防備こそが強さにつながっている。

そのような奔流の中で、千野さんがときどき安寧の場所を見出しているようにみえたのがおもしろいことだった。その気分は照内さんにも共有され、別の流れとなっていった。

ふたりは別の箇所で足踏みをしたのだが、その現象は違うところから生まれたように思えた。千野さんは自由飛行のなかで足場を見つけようとして、照内さんは構造の拡張の延長として。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●千野秀一
ピーター・エヴァンス@Jazz Art せんがわ2018(JazzTokyo)(2018年)
JAZZ ARTせんがわ2018(2018年)
千野秀一+山内桂@Ftarri(2018年)
山内桂『live at Futuro cafe』(2017年)
ジャスト・オフ『The House of Wasps』(-2015年)
A-Musik『e ku iroju』(1983年)
『風の歌を聴け』の小説と映画

●照内央晴
奥田梨恵子+照内央晴@荻窪クレモニア(2019年)
豊住芳三郎+コク・シーワイ+照内央晴@横濱エアジン(2019年)
照内央晴+加藤綾子@神保町試聴室(2019年)
特殊音樂祭@和光大学(JazzTokyo)(2019年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴@なってるハウス(2019年)
豊住芳三郎インタビュー(JazzTokyo)(2019年)
豊住芳三郎+庄子勝治+照内央晴@山猫軒(2019年)
豊住芳三郎+老丹+照内央晴@アケタの店(2019年)
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2019年)
吉久昌樹+照内央晴@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2019年)
照内央晴、荻野やすよし、吉久昌樹、小沢あき@なってるハウス(2019年)
照内央晴+方波見智子@なってるハウス(2019年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
『終わりなき歌 石内矢巳 花詩集III』@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2018年)
Cool Meeting vol.1@cooljojo(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)


メアリー・ダウマニー+マイルス・ブラウン『The Narcoleptor』

2019-12-15 11:04:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

メアリー・ダウマニー+マイルス・ブラウン『The Narcoleptor』(Nosferatunes、2018年)を聴く。

Mary Doumany (harp, voice)
Miles Brown (theremin)

30分弱のサウンドにおいて、このふたりがみせてくれる空間の拡がりに感嘆する。

テルミンは、(当然のことだが)サウンドへの宇宙的な味付けなどではなく、全体を支配するエーテル流の創出器として機能している。それが大きく揺蕩うなかで、メアリー・ダウマニーのハープが仕掛ける響きもまた自由に泳動し、音が届く空間をさらに拡張している。ヴォイスとのつながりも良い。

はじめてメアリーさんを知ったのは、たしかFtarriにおいてである。観客として隣に座ったメアリーさんは、初対面のわたしに、演奏が終わるなり「いまかれらは熱い砂漠を耐えて歩いていた」とか「いまかれらは細い峰を落ちないように歩いていた」とか幻視した内容を話してきて、おもしろい人だなと思ったのだった。音楽はもっとおもしろい。

メアリーさんはまもなく再来日する。


廣木光一+ナスノミツル+芳垣安洋@本八幡cooljojo

2019-12-15 07:03:51 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2019/12/14)。

Koichi Hiroki 廣木光一 (g)
Mitsuru Nasuno ナスノミツル (b)
Yasuhiro Yoshigaki 芳垣安洋 (ds)

全編フリー。

廣木さんはこんなギンギンにアグレッシブな演奏もするのかという驚きがあった。しかしそこは廣木さんであり、勢いや全体の流れの一部に堕してしまうことはない。取り出して提示するものは研ぎ澄まされていて、冷たいと同時に熱い。

ナスノさんはサウンド全体を覆い、また内部からも駆動するグルーヴ。そして芳垣さんは常に瞬間加速器を持っていて、ここぞというときに超濃密にブーストする。

いやカッチョいいな。ファーストもセカンドも時間を忘れるほど楽しかった。廣木さんと芳垣さんは数年前に何かのギグでいちど共演したのみ、廣木さんとナスノさんとはこの日がはじめて。つまり企画の妙である。

●ナスノミツル
JOJO広重+ナスノミツル@荻窪ベルベットサン(2019年)
植村昌弘+ナスノミツル+坂口光央@千駄木Bar Isshee(2014年)
本田珠也SESSION@新宿ピットイン(2014年)

●芳垣安洋
渋大祭@川崎市東扇島東公園(2019年)
大前チズル『Royal Folks』(2017-18年)
オルケスタ・リブレ@神保町試聴室(2017年)
MoGoToYoYo@新宿ピットイン(2016年)
ネッド・ローゼンバーグ@神保町視聴室(2014年)
大島保克+オルケスタ・ボレ『今どぅ別り』 移民、棄民、基地(1997年)


ヒゴヒロシ+矢部優子、プチマノカリス/山我静+鈴木ちほ+池田陽子@なってるハウス

2019-12-14 10:35:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウス(2019/12/13)。

Hiroshi Higo ヒゴヒロシ (DJ)
Yuko Yabe 矢部優子 (p)

プチマノカリス:
Shizuka Yamaga 山我静 (mono synth)
Chiho Suzuki 鈴木ちほ (bandoneon)
Yoko Ikeda 池田陽子 (viola, vln) ← ヴィオラだったかな

この日の企画はヒゴヒロシさんによるもので、国分寺のモルガーナにおいて延々と続けられている「モルガナ実験室」のネットワークによる人選だとのこと。ヒゴさんはベースではなくDJ。ユニット・アノマノカリス(山我静、鈴木ちほ、宮本沙羅)のうちチェロの宮本沙羅さんが欠席、そのかわりに池田陽子さんがゲストで入り、プチマノカリスという名前に。

プチマノカリス。

三者とも短いフラグメンツをその場に提示する。短い音価のひもが各々ぶるぶると震えて、それが互いに干渉して別の音になるインプロ超ひも理論。モノシンセとバンドネオンの蛇腹の震えの相互作用なんかおもしろい。ひもとひもとをつなぐ糊は山我さんのヴォイスでもあった。

次第に音価が長くなり、三者の音の重なりもまた別の様相を呈してくる。ここで耳にぐいと入り込んでくる、硬派で毎回驚かされる池田さんのヴィオラ。そしてまた三者は自由なひもになり、各々遊びに旅立った。

ヒゴヒロシ+矢部優子。

矢部さんがピアノの影で背中を丸め、なにやら奇妙な動物のように鍵盤を鳴らしている。そこに生きていることを隠して、あるいは実際に別次元と行き来したりもして(知らんけど)、しかし次第に動物の存在が露わになってくる。ときに筐体を叩き、重い蓋を閉め、その大きな音が演る者も聴く者も刺激して、さらに存在感を増してくる。飛び出す絵本みたいだ。

ヒゴさんのDJはスムーズに始まったのだが、意外に構成主義的でもあり、ときにサウンドへの干渉を横に置いて斜め上に走り去っていくような瞬間もあり、とてもおもしろい。サスペンスドラマ的なところなんて聴き入ってしまった。

ところで隠れることをやめたピアニストは、先とは対照的な行動に転じている。椅子から立ち上がり、一周しては鍵盤の上に腰かけ音を出し続ける。その繰り返しは悪夢のようではなく、むしろ飛び出す絵本がさらに手作りハイパー三次元の攪乱サウンドになった感覚だった。

そして最後に、ヒゴさんが全員で演ろうと言って、一同慌てて楽器を取りだし、短く短くと呟きながら勢いで共演に突入した。矢部さんが差し出す何かのハコを蹴飛ばす池田さん、これは勢いの賜物。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●ヒゴヒロシ
のなか悟空&人間国宝『@井川てしゃまんく音楽祭』(2016年)
柳川芳命+ヒゴヒロシ+大門力也+坂井啓伸@七針(2015年)

●矢部優子
815展でのパフォーマンス(矢部優子、広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊(2019年)
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
大墻敦『春画と日本人』(2018年)

●鈴木ちほ
ガトー・リブレ、asinus auris@Ftarri(2019年)
『今・ここ・私。ドイツ×日本 2019/即興パフォーマンス in いずるば』(2019年)
鈴木ちほ+北田学@バーバー富士(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ+喜多直毅+西嶋徹@なってるハウス(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(JazzTokyo)(2019年)
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
種まき種まかせ 第3回ー冬の手ー@OTOOTO(2019年)
種まき種まかせ 第2回ー秋の手-@Ftarri(2018年)
impro cats・acoustic@なってるハウス(2018年)
鈴木ちほ+荻野やすよし(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2018年)
鳥の未来のための螺旋の試み@ひかりのうま(2017年)
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(2017年)
りら@七針(2017年)
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年) 

●池田陽子
ガトー・リブレ、asinus auris@Ftarri(2019年)
Signals Down@落合soup(2019年)
815展でのパフォーマンス(矢部優子、広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊(2019年)
Hubble Deep Fields@Ftarri(2019年)
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
エレクトロニクスとヴィオラ、ピアノの夕べ@Ftarri(2019年)
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
大墻敦『春画と日本人』(2018年)
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』(2018年)
佐伯美波+池田若菜+池田陽子+杉本拓+ステファン・テュット+マンフレッド・ヴェルダー『Sextet』(2017年)
クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(2017年)


ケン・ヴァンダーマーク+ポール・ニルセン・ラヴ@稲毛Candy(2日目)

2019-12-09 08:02:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

稲毛のCandyでデュオ2日目(2019/12/8)。

Ken Vandermark (ts, cl)
Paal Nilssen-Love (ds)

テナーソロのあとにドラムスが入る。ケンの吹き切りも再び介入するところも潔くて良い。テナーでは抑制的にいくつもの音を出していたのだが、クラに持ち替えると聴く側が音色の違いにちょっと混乱する。続く2曲目でポールさんのマレットはやはり強烈な音波を放ち、目が醒めるようだ。テナーは親しみやすい旋律から連続的に激しくエスカレートする。ジャズもブルースもフリージャズもすべて同じ庭の中にある、これがケンさんのサウンドだ。

セカンドセットでは、異様に圧の強いブラシから始まった。クラもまた音圧が強く、これだというフラグメンツを次々に形成する。ポールsんがスティックに持ち替えると、いい機会だとばかりにケンさんもテナーに持ち替えた。これが音風景を一変させた。左右に首を振るテナーでの効果もおもしろい。

クラは高く澄んでいるばかりではない。次第に濁り連続的に出される音はまるでコルトレーンである。また擦れた小さい音でドローンを作り、ときに循環呼吸で吹き続けたりもして、場の緊張を解かない演奏もまた良い。ポールさんが細いスティックで入り、シンプルながらそれを激しく発展させてゆく。そしてケンさんはテナーの中で何かが燃えて火花を散らしているようなピキピキ音を放ちまくる。凄い。

アンコールに応えて、ポールがでんでん太鼓を使い、ケンがテナーを静々と吹いた。

終わったあとにケンさんに飲みながら訊くと、やはり米国では助成を得ることがとても難しく、それゆえに来日もままならないということだった。そしてCandyに戻りレコード大会。ポールさんが最初に言ったアーチー・シェップとダラー・ブランドとの共演盤はなかったが、シェップとローチとのデュオ盤、またレスター・ボウイの『The Great Pretender』に一同大盛り上がり。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●ケン・ヴァンダーマーク
ケン・ヴァンダーマーク+ポール・ニルセン・ラヴ@稲毛Candy(2019年)
ネイト・ウーリー+ケン・ヴァンダーマーク『East by Northwest』、『All Directions Home』(2015年)
ポール・ニルセン・ラヴ+ケン・ヴァンダーマーク@新宿ピットイン(2011年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』(2011年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
4 Corners『Alive in Lisbon』(2007年)
スクール・デイズ『In Our Times』(2001年)
ポール・リットン+ケン・ヴァンダーマーク『English Suites』(1999年)
ジョー・モリス w/ DKVトリオ『deep telling』(1998年)

●ポール・ニルセン・ラヴ
ケン・ヴァンダーマーク+ポール・ニルセン・ラヴ@稲毛Candy(2019年)
フローデ・イェシュタ@渋谷公園通りクラシックス(2019年)
デイヴィッド・マレイ+ポール・ニルセン・ラヴ+インゲブリグト・ホーケル・フラーテン@オーステンデKAAP(2019年)
Arashi@稲毛Candy(2019年)
ボーンシェイカー『Fake Music』(2017年)
ペーター・ブロッツマン+スティーヴ・スウェル+ポール・ニルセン・ラヴ『Live in Copenhagen』(2016年)
ザ・シング@稲毛Candy(2013年)
ジョー・マクフィー+ポール・ニルセン・ラヴ@稲毛Candy(2013年)
ネナ・チェリー+ザ・シング『The Cherry Thing』とリミックス盤(2012年)
ポール・ニルセン・ラヴ+ケン・ヴァンダーマーク@新宿ピットイン(2011年)
ペーター・ブロッツマン@新宿ピットイン(2011年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』
(2011年)
ジョー・マクフィーとポール・ニルセン-ラヴとのデュオ、『明日が今日来た』(2008年)
4 Corners『Alive in Lisbon』(2007年)
ピーター・ヤンソン+ヨナス・カルハマー+ポール・ニルセン・ラヴ『Live at Glenn Miller Cafe vol.1』(2001年)
スクール・デイズ『In Our Times』(2001年)


ケン・ヴァンダーマーク+ポール・ニルセン・ラヴ@稲毛Candy

2019-12-08 08:06:10 | アヴァンギャルド・ジャズ

稲毛のCandy、デュオ2デイズの初日(2019/12/7)。

Ken Vandermark (ts, cl)
Paal Nilssen-Love (ds)

ケン・ヴァンダーマークは5年ぶりの来日だが、わたしは2012年に新宿ピットインで観て以来7年ぶりである。対照的にポールさんは頻繁に日本に来ている(ベルギーを含めて、今年観るのは4回目だ)。

はじめにケンさんはテナーを吹き、いきなりの野太く真正面からの音に驚く。席がちょうどドラムセットの真ん前で、バスドラの風が脚を押し戻してくる。2曲目のクラでは、生みの苦しみのようにマージナルな音や擦れる音も吹き、横ではドラムを強く擦っている。そしてフルスロットル。やがてテナーに持ち替えた。

3曲目はテナーで低音を活かしたうなりとマルチフォニック。その間ポールさんはマレットを手にスタンバイしていたのだが、気が変わったのかブラシで入った。ふたたび高みへと登りつめる。先が見えない。ロケットエンジンどうしが互いを踏み台にしてさらに加速するような感覚である。怖ろしい、というか、とんでもなく嬉しい。

セカンドセットはマレットとハットを使ったドラムから始まり、繰り返しのリズムを創り出した。打音は強いというより痛い。そこにケンさんがクラで入り、循環呼吸も使いながら、擦音から重音までじつに幅広く重い音を奔流のように吐き出してくる。演奏の合間に静かな時間が訪れると、おのおのが微かな音を発して緊張を途絶えさせない。微かとはいえポールさんのブラシの付け根による音にはたいへんな力が入っている。短い木の棒からスティックに持ち替え、しなりを付加したのも見事だった。ケンさんがテナーに持ち替えて最初の「バフッ」という音、これだけで歓喜を覚える。あまりにも強いシンバルの連打、その横では踊るようにしてケンさんがぶっとい音をブロウし続けている。聴く方はもう朦朧としている。

アンコール。クラの様々な音を試すケンさん(この段になっても試行するのだ)。ポールさんはでんでん太鼓でプレイする。そしてまたテナーとドラムスでの飛行。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●ケン・ヴァンダーマーク
ネイト・ウーリー+ケン・ヴァンダーマーク『East by Northwest』、『All Directions Home』(2015年)
ポール・ニルセン・ラヴ+ケン・ヴァンダーマーク@新宿ピットイン(2011年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』(2011年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
4 Corners『Alive in Lisbon』(2007年)
スクール・デイズ『In Our Times』(2001年)
ポール・リットン+ケン・ヴァンダーマーク『English Suites』(1999年)
ジョー・モリス w/ DKVトリオ『deep telling』(1998年)

●ポール・ニルセン・ラヴ
フローデ・イェシュタ@渋谷公園通りクラシックス(2019年)
デイヴィッド・マレイ+ポール・ニルセン・ラヴ+インゲブリグト・ホーケル・フラーテン@オーステンデKAAP(2019年)
Arashi@稲毛Candy(2019年)
ボーンシェイカー『Fake Music』(2017年)
ペーター・ブロッツマン+スティーヴ・スウェル+ポール・ニルセン・ラヴ『Live in Copenhagen』(2016年)
ザ・シング@稲毛Candy(2013年)
ジョー・マクフィー+ポール・ニルセン・ラヴ@稲毛Candy(2013年)
ネナ・チェリー+ザ・シング『The Cherry Thing』とリミックス盤(2012年)
ポール・ニルセン・ラヴ+ケン・ヴァンダーマーク@新宿ピットイン(2011年)
ペーター・ブロッツマン@新宿ピットイン(2011年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』
(2011年)
ジョー・マクフィーとポール・ニルセン-ラヴとのデュオ、『明日が今日来た』(2008年)
4 Corners『Alive in Lisbon』(2007年)
ピーター・ヤンソン+ヨナス・カルハマー+ポール・ニルセン・ラヴ『Live at Glenn Miller Cafe vol.1』(2001年)
スクール・デイズ『In Our Times』(2001年)


ロジャー・ターナー+亀井庸州@Ftarri

2019-12-07 08:00:55 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2019/12/6)。

Roger Turner (ds)
Yoshu Kamei 亀井庸州 (尺八, vln)

意外な手合わせだが、ロジャーさんによれば、あれこれyoutubeで探していて見つけ、オファーしたとの由。

まずは亀井さんが尺八を手に取り、指孔をタップする。それに反応してロジャーさんはスティックどうしの摩擦音を出す。揺れ動く鳴りに対してはギロギロ音。強い息に対しては立てたスティック。それをエスカレートさせてのマージナルな尺八の共鳴とノイズに対しては、フォークを擦らせてやはりマージンへと向かう。こうして機敏で繊細な呼応が展開された。

亀井さんはテーブルに置いたヴァイオリンの弦を引き出し、それを摩擦させるノイズをさまざまに発展させる。滑らかではなく軋み身体に直接届く音である。応じるロジャーさんの音は感嘆してしまうものだった。針金もスティックもブラシも使い、そのドラムセットとの接触は極めて自由であり、連続的で広い連続的な響きを創出した。なかでもシワシワの金属板を柔軟に使ったプレイには眼と耳が釘付けになる。そこから高音へと移行し、亀井さんもまたヴァイオリンで高音を発した。ヴァイオリンは息をしているようでもある。

麻痺した脳を叩き起こすような強いパルスを経て、鼠花火のごとき音の火花が場を支配した。亀井さんはアジア的なノイズと和音、そしてここにきてようやくクリアな旋律を弾き、それゆえ怖さを感じさせた。ロジャーさんはシンバルを片手で回転させ、金属との擦れ音を展開している。また、異様なほどに尖って澄んだ音も出す。紛れもなく、針金の先端の美学をみせるロジャーさん独自の音だ。

フタリの空で火花が高速で瞬く。亀井さんはアーチを描く。ロジャーさんは両手に合計6本ものスティック(!)を持ち自在な音を出している。

いちどは演奏が終息したが、ひと呼吸置いて、次の演奏に入った。

ふたりはそれぞれ音響の部品を提示する。やがて亀井さんが弾くヴァイオリンが、濁りノイズを含み持ち、まるで馬頭琴の響きを発した。ヴィブラートも含め、アジアの慄きや呪いを感じさせる。ロジャーさんが応じて叩く音はまるで和太鼓。そして、亀井さんによる音は街の雑踏のダンス、ロジャーさんのパルスは指とブラシによるダンス。狙ったような鐘の音で演奏が終わった。

デュオによる即興ならではの、発見の種が散りばめられた演奏だった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8

●ロジャー・ターナー
ロジャー・ターナー+喜多直毅+内橋和久@下北沢Apollo(2019年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス(2017年)
ロジャー・ターナー+今井和雄@Bar Isshee(2017年)
蓮見令麻@新宿ピットイン(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
ドネダ+ラッセル+ターナー『The Cigar That Talks』(2009年)
フィル・ミントン+ロジャー・ターナー『drainage』(1998、2002年)

●亀井庸州
特殊音樂祭@和光大学(JazzTokyo)(2019年)