沖縄で週末を使うことができる折角の機会に、高江と、後述する名護市の辺野古を訪ね、反対している方々と話したいと思った。これは、とりもなおさず、普段は見えない現実が顕わになっている裂け目を覗くことにほかならない。両方とも不便な場所にあって、これまで現場に居つつ情報を発信している24wackyさんに案内していただいた。
9月22日(土)の朝7時、県庁前で24wackyさんの自動車に拾ってもらう。今まで何度もお世話になった、東村の民宿「島ぞうり」さん、それから『ヘリパッドいらない』住民の会共同代表をつとめておられる伊佐真次さんの木工場、伊佐工房に挨拶して、高江の共同売店で弁当を買った。なお、24wackyさんによると、この共同売店に置いてあるジューシー(炊き込み御飯)は絶品だそうだ。残念ながら土、日ともに置いておらず、楽しみは次の機会になった。
伊佐工房の伊佐真次さん Pentax K2DMD、77mmF1.8、TMAX400(+2)、GEKKOの2号
10時過ぎに高江の「N-4ゲート」に到着した。
「N-4地区」は、これまでに何台かの工事用車両が強引に入っているところだ。既に、継続して座り込みを続けておられる住民の方々が4人ほどテント内にいた。若い夫婦とお年寄りだ。ここで記帳を済ませた。
「N-4地区」のテントのお年寄り Pentax K2DMD、77mmF1.8、TMAX400(+2)、GEKKOの2号
ヘリパッド反対の旗 Pentax K2DMD、77mmF1.8、TMAX400(+2)、GEKKOの2号
次に「N-1地区」に足を進める。ここは、那覇防衛施設局(現・沖縄防衛局)が、住民を前に居丈高な権力行使を試みたところだ(→参考:JANJAN「防衛施設局による哀しい作業強行 沖縄ヘリパッド問題」)。そのような場所であるためか、ずっと座り込みを続けておられる方々の横10メートルほどの道端に、沖縄防衛局に雇われた警備員が2名、座っていた。私たちが着いたことも、何か動くときの状況も、無線で連絡するのだろう。
ゲートの中には、重機が搬入されてあった。ここからヘリパッド増設予定地までの通路を整備するためだ。先日は、ゲート脇の隙間から砂利などを受け渡したそうだ。ただ、整備のための資材はまだまだ足りないはずだとのことだった。
「N-1地区」のゲート Pentax K2DMD、77mmF1.8、TMAX400(+2)、GEKKOの2号
ゲート内の重機と通路 Pentax K2DMD、77mmF1.8、TMAX400(+2)、GEKKOの2号
ジャングル戦闘訓練センターのメインゲート前を再度通過し、手薄だと言われた「H地区」に向かった。到着するとほどなく、逃げた飼い犬を連れ戻してきた(笑)方と3人で、テントを設営した。しばらく地べたで話をした。
ジャングル戦闘訓練センターのメインゲート Pentax K2DMD、77mmF1.8、TMAX400(+2)、GEKKOの2号
連れ戻された犬 Pentax K2DMD、77mmF1.8、TMAX400(+2)、GEKKOの2号
結局この「H地区」に夕方までいたのだが、亜熱帯林なので天気が変わりやすく、何度か突然雨が降った。目の前の道路に現れる自動車は30分に1回くらい、たぶんほとんどは電源開発の海水揚水発電所を見学に来ている。ただ、貯水池くらいしか見るものがない(発電施設は地下にある)ので、来たと思ったらすぐに戻っていく。私たちもヒマなので、発電所を見たり、散歩したり、サマーベッドで昼寝したり、雑談したりといった具合だ。那覇防衛施設局が沖縄防衛局に変わり、さらに政権交代後のごたごたした時期なので、ほとんど動きがないのだろうという話だった。
「H地区」ゲート前に設置したテント Pentax LX、24mm★F2.0、Provia400X、DP
「H地区」ゲート Pentax LX、24mm★F2.0、Provia400X、DP
ゲートの向こうに通路が続く Pentax LX、200mm★F2.8、Provia400X、DP
綺麗な樹木 Pentax LX、200mm★F2.8、Provia400X、DP
アカバナー Pentax LX、200mm★F2.8、Provia400X、DP
カモミール Pentax LX、200mm★F2.8、Provia400X、DP
チビカタマヤーガサ(尻を拭く葉っぱ) Pentax LX、24mm★F2.0、Provia400X、DP
シダ Pentax LX、24mm★F2.0、Provia400X、DP
高圧線 Pentax LX、24mm★F2.0、Provia400X、DP
結局、日中は何もなかった。だが、そこに居て、見て、このように声をあげることが大事なのだ―――初めて座り込みに参加した者としては微力だが、敢えてそのように言う。
夕刻、テントをたたんで、「N-4地区」に戻った。話していると、貧乏旅行をしている大学生が自転車で通りがかった。伊佐さんが声をかけると、野宿の場所を探していたらしく、みんなの話し相手になった。
以前に差し入れのあった蕎麦、それから島バナナと泡盛が夕食。突然、ゲートから米軍の乗用車がどこかに出て行ったりもした(翌朝も戻ってこなかった)。少し、バラバラバラバラというヘリの音が聞こえたが、近くのヘリパッドではないようだった。
「N-4地区」の夕暮れ Pentax LX、24mm★F2.0、Provia400X、DP
ジャングル戦闘訓練センター内の夕暮れ Pentax LX、200mm★F2.8、Provia400X、DP
「N-4地区」ゲートから外出する米軍の自動車 Pentax K2DMD、77mmF1.8、TMAX400(+2)、GEKKOの2号
すっかり暗くなった。ときどき現れるのは、凄い速度で走り抜けていく自動車とバイク。走り抜けることばかり考えている結果、多くのヤンバルクイナたちがひき殺されているわけだ。自動車やバイクだけでなく、蛍もあちこちを飛んでいた。それから、近くで働いているSさんが、カンカラ三線を持って現れ、「生活の柄」なんかを歌ってくれた。曇っていたので満点の星空とはいかなかったが、雲の切れ間からたくさんの星が見えた。
貧乏旅行君と、24wackyさんと、3人でテントの下で寝た。やっぱり、気分が高揚しているせいか、なかなか寝付けなかった。24wackyさんが調達してくれた寝袋に入っていても、顔に近づいてくる蚊に悩まされた。
翌朝目覚めると、既に近くで農業をしている方が来ていた。持ってきてくれたウンチェーバー(空心菜)を茹でてもらって、パンや島バナナとあわせて朝ご飯。貧乏旅行君は次の目的地、慶佐次(ヒルギ林のあるところ)を目指して旅立っていった・・・あとで追いついたり追い越したりすることになるのだが。程なく、東京や大阪で基地問題に興味を持っている大学生や社会人が何人も現れた。私たちは、10時ころ、高江を後にした。
あらためて実感したことは、住民が誰も望んでもいない「裂け目」のこちら側にいるのは、決して「反対派」や「活動家」などとして括られる存在ではなく、多くの良心ある人たちだということだ。問題意識ゆえ本土から駆けつける学生も、社会人もいる。もちろん自分たちの生活や安全を守りたいし、戦争に加担するのは嫌だと考える地元の方々もいる。
「知ることからはじまる」など当たり前のことだが、高江という理不尽な裂け目からは、米軍がテロとの戦いという美名のもとに行っているイラクやアフガニスタンでの無差別殺人への国をあげた協力、そしてその事実を曖昧にしながら多くの人の目に触れないところでは権力を剥き出しの形で使う姿、が見える。
食糧 Pentax LX、24mm★F2.0、Provia400X、DP
ウンチューバーは100円で Pentax LX、24mm★F2.0、Provia400X、DP
ゲート脇の看板の裏側 Pentax LX、24mm★F2.0、Provia400X、DP
貧乏旅行君は本土に帰るお金をもう調達できただろうか Pentax LX、24mm★F2.0、Provia400X、DP