Sightsong

自縄自縛日記

オンドジェイ・ストベラチェク『Sketches』

2017-04-30 20:27:37 | アヴァンギャルド・ジャズ

オンドジェイ・ストベラチェク『Sketches』(Stvery Records、2016年)を聴く。

Ondřej Štveráček (ts)
Gene Jackson (ds)
Tomáš Baroš (b)
Klaudius Kováč (p)

オンドジェイ・ストベラチェクはチェコのテナー吹き。ふつうに言えばモードのシーツ・オブ・サウンド、現代のコルトレーン・フォロワーだ。この盤も「どジャズ」。フレーズにも、たとえばトレーンの『My Favorite Things』を思い出させる瞬間がある。

ただ、音はフレッシュで、ブロウしている間に入ってくる潤いがなまなましさを増している。まだ30歳前、こういう人がチェコにもいるのだというだけで嬉しいことである。

実は目当てはドラムスのジーン・ジャクソン。ヘヴィ級ならではの躍動感があり、フレーズのそこかしこでキメ技を繰り出す(ライヴを観るとこれが本当に快感なのだ)。さすがハービー・ハンコックのトリオでドラマーを務めた人である。最近かれのFBではアメリカの活動ばかり出ていたのだが、ようやく日本に戻ってくる。どこかで観に行こう。

●ジーン・ジャクソン
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
及部恭子+クリス・スピード@Body & Soul(2015年)
デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』(1995年)


ヤコブ・ブロ『Streams』

2017-04-30 15:11:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

ヤコブ・ブロ『Streams』(ECM、2015年)を聴く。

Jakob Bro (g)
Thomas Morgan (b)
Joey Baron (ds) 

一聴物足りなかったのだが、何度も繰り返しているうちに面白さが浸透してくる。

ヤコブ・ブロのギターは音を長く響かせて、その残響する和音の中にさらなる音を重ねてゆくスタイル。浮遊的という点ではビル・フリゼールやヴォルフガング・ムースピールと共通しているのかもしれないが、ブロは、より透明な音のひとつひとつを楔として刺してゆくように聴こえる。

そしてトーマス・モーガンの中音域でとても制御されたベースが美しく、また、微妙なずらしによってタイム感を奪われる。シンプルなジョーイ・バロンのドラミングも良い。

●トーマス・モーガン
ジェン・シュー『Sounds and Cries of the World』(2014年)
クレイグ・テイボーン『Chants』(2013年)
ポール・モチアン『The Windmills of Your Mind』(2010年)
菊地雅章『Masabumi Kikuchi / Ben Street / Thomas Morgan / Kresten Osgood』(2008年) 

●ジョーイ・バロン
ジョン・ゾーン『Spy vs. Spy』(1988年)


渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン

2017-04-30 12:33:30 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットインで、渋谷毅オーケストラ(2017/4/29)。ハコはほぼ満員。ドイツ語や中国語を喋る人たちもいた。

Takeshi Shibuya 渋谷毅 (p, org)
Kosuke Mine 峰厚介 (ts)
Koichi Matsukaze 松風鉱一 (bs, as, fl)
Eiichi Hayashi 林栄一 (as)
Kenta Tsugami 津上研太 (ss, as)
Osamu Matsumoto 松本治 (tb)
Akihiro Ishiwatari 石渡明廣 (g)
Katsumasa Kamimura 上村勝正 (b)
Akira Sotoyama 外山明 (ds)
(ゲスト・小川美潮は間違い) 

ファーストセット。「Side Slip」(石渡)。「Reactionary Tango」(カーラ・ブレイ)、石渡さんのギターがいつもより細く鳴らしている印象。渋谷さんのピアノ、微妙に含めた明るい旋律。「Ballard」(石渡)、松風さんはバリトンをイントロから使う。「Three Views of A Secret」(ジャコ・パストリアス)、常にこの曲での津上さんのソプラノは透明感があって良いのだが、この日はちょっとタメを作っていた。その後の峰さんのテナーとバックのオルガン。「Chelsea Bridge」(ビリー・ストレイホーン)、ピアノのイントロにおいて浅川マキとの共演時にしばしば見せた渋谷毅の色気が放たれる。「Brother」(林)、外山さんのドラムスがすごい。

セカンドセット。「もはやちがう町」(石渡)、林栄一のアルトの音圧。珍しく、「What Masa Is... She Is Out To Lunch」(松風)、ギターとピアノとが創り出す浮遊空間の中を松風さんのアルトがうねる。「A New Hymn」(ブレイ)、トロンボーンが主導するかたちのなかで峰さんのテナーが良い。「Jazz Me Blues」(トラディショナル)、遊び香るピアノのイントロ、音に満ち満ちた林栄一・60億分の1のアルト。松風さんのバリトンも見事。「Soon I Will Be Done With The Trouble Of The World」(ブレイ)。「Aita's Country Life」(松風)、愉しい展開の中で松風アルトうねるうねる。上村さんのグルーヴがノリまくり。アンコール、ピアノソロで「Lotus Blossom」(ストレイホーン)。

何度聴いても、終わりの時間が来ないで欲しいと思ってしまう。

今回、「What Masa Is...」の演奏が珍しかったのだが、松風さんによれば、「TAMASA」をやろうという予定でもあったらしい。では「Great Type」は?と訊くと、しばらくやってないなあとのこと。

思い出して、森順治さんが松風さんの家に遊びに行ったとか、と振ってみると、ああ今度共演するんだよ、えーとスマッシュ。いやマッシュです。というわけで、7月になってるハウスでM.A.S.Hにゲスト出演。かつて同時期に松風さんに師事していたSさんが最近M.A.S.Hに客演していて、それで調整したのだとか。スゴい!

●渋谷毅
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
廣木光一+渋谷毅@本八幡Cooljojo(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅@裏窓(2016年)
渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(2015年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
渋谷毅+津上研太@ディスクユニオン(2011年)
渋谷毅のソロピアノ2枚(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)
『RAdIO』(1996, 99年) 
渋谷毅+川端民生『蝶々在中』(1998年)
『RAdIO』カセットテープ版(1994年)
『山崎幹夫撮影による浅川マキ文芸座ル・ピリエ大晦日ライヴ映像セレクション』(1987-92年)
浅川マキ+渋谷毅『ちょっと長い関係のブルース』(1985年) 
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
見上げてごらん夜の星を 


『けーし風』読者の集い(32) 弾圧をこえて、さらに先へ

2017-04-30 10:46:59 | 沖縄

『けーし風』第94号(2017.4、新沖縄フォーラム刊行会議)の読者会に参加した(2017/4/29、千代田区和泉橋区民館)。参加者は7人。

不精なわたしは未だに定期購読にしておらず、数日前にBooks Mangrooveに注文したが到着しないまま参加(帰宅したら届いていた)。

以下のような話題。

●共謀罪のあやうさ。謀議であっても捜査しないとそれとわからないわけである。
●対米恐怖と親米的態度は表裏一体(新崎盛暉)。
●運動において極論を言う者、極端な行動を取る者、カッコいいことをやろうとする者はいるものだが、仮にそれが処罰の対象になってしまうと、全体が委縮する。沖縄や国会前でもそのような指導がなされている。
●沖縄では「現場をつくりだす努力」がなされてきた。それにより、歴史や、たたかいの意味が広く共有された。一方、2015年安保では多くの個人としての市民が国会前に集まった。これらをどうつなげてゆくか。
●運動における個の限界を言う者は少なくない。かれらは組織の中で密室的にことを決定したがり、組織的動員に頼る。しかし、そのような既成の運動は広がりをもたない。
●自らの取り組む運動以外のことを知らない者が少なくない。それでは議論を深めることができない。
●共謀罪に抗してたたかう結果として沖縄問題の解決があるのではない。沖縄問題においてたたかうことによって、法を法たらしめることができる。(一般から具体へではなく、具体において一般を強化)
●砂川事件(1957年)の高裁における再審決定はありうるのではないか。(2016年、東京地裁で再審棄却、現在抗告中) 
●沖縄における「プロ市民」との誤解、それを招いてしまった行動。
●沖縄の米軍基地の県外移設論。2009年衆議院総選挙(民主党が大勝)により沖縄の保守が分裂し、主にその後に出てきた言説である。それは一様ではなく、安保を前提とするもの(高橋哲哉)、安保を日本の問題として問わないもの(知念ウシ)など異なっている。現実論としての捉え方にもゆらぎがある。たとえば、「ご高説」だとの批判がある。目取真俊は高橋哲哉に対し、いつ引き取るのか、辺野古新基地が出来てしまうではないかと迫った(「AERA」、2016年)。
●基地問題はもとより安保に踏み込まなければならないものではないか。沖縄から基地を「引き取る」ことがなくても、既に日本の米軍基地拡充、自衛隊との一体化は進んでいる。すなわちゼロサムではない。
●海兵隊のグアム移転協定(2009年)。対象が9千人だったはずが、知らない間に4千人に変わっていた。これはすなわち、グアム移転の可能性が低下したことと、これが米軍のアジア戦略全体の中に位置付けられることを意味する。
●ウィキリークスにおいて、米軍は沖縄に3本の滑走路が必要だとしているとの内容が露見した(辺野古、嘉手納、那覇)。すなわち、95年以来の「普天間移設」とのストーリーはそれには整合しない。
●オフショア・バランシングの場として沖縄と日本が位置付けられている。もはや米軍の戦略は固定基地に依存していない。
●「非暴力」のとらえなおしが必要。
●高江では現在、鳥類の営巣期間のため、工事がなされていない。曲がりなりにも日本の統治のもとであるからそこが担保されている。しかし、これが米軍の使用下にあって顧みられなくなるのではないか。 

以下、情報提供。

●島尾敏雄『琉球文学論』(幻戯書房)
●嵯峨仁朗・柏艪舎編『死刑囚 永山則夫の花嫁ー「奇跡」を生んだ461通の往復書簡』
●『ぬじゅん』
●映画『海辺の生と死』(原作・島尾ミホ、2017/7公開) 
●高良倉吉『沖縄問題―リアリズムの観点から』(中公新書)
●新崎盛暉『私の沖縄現代史』(岩浪現代文庫)
仲宗根勇・仲里効編『沖縄思想のラディックス』(未來社)
●映画『カクテル・パーティー』(原作・大城立裕、2017/6/23に国際文化会館で上映) 
北島角子さんご逝去。
●『沖縄列島』、『やさしいにっぽん人』、『ウンタマギルー』、『夏の妹』上映(早稲田松竹、2017/5/13-19) 
●安田浩一「沖縄の右派と『プロ市民』」(『一冊の本』2017年4月、朝日新聞出版

●参照
『けーし風』 


チンドン屋@蒲田西口商店街

2017-04-30 09:47:39 | ポップス

蒲田西口商店街にて、菊乃家、チンドンよしの、チンドン芸能社計15名の演奏(2017/4/29)。大賑わい。大爆笑。大迫力。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●参照
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)


小沼ようすけ+グレゴリー・プリヴァ、挟間美帆 plus 十@Jazz Auditoria

2017-04-29 08:06:29 | アヴァンギャルド・ジャズ

 

御茶ノ水のワテラスにて毎年開かれているJazz Auditoria。いままでは、野外イヴェントが苦手だったり、たまたまプログラムが琴線に触れなかったり、不都合だったりして、行ったことがなかった。今回その気になって、ランチタイムに整理券を貰った(2017/4/28)。職場の近くなのだ。

■ 小沼ようすけ+グレゴリー・プリヴァ

 

小沼ようすけ (g)
Gregory Privat (p) 

開演を待っているうちに暗くなってきた。もう連休に入るという解放感も相まって、このデュオがとても爽やかに聴こえる。寒くなければビールを買ってきたのに。

小沼ようすけのプレイを観るのは、ゲイリー・バーツとKANKAWAのライヴにかれが客演したとき以来だ(2003年?)。そのときの記憶に輪をかけて巧さが際立っていた。ピッキングが実に滑らかで音も丸く固く粒立っている。本人はフレンチカリブ音楽やクレオール的なものへのこだわりを口にしていた(グレゴリー・プリヴァはマルティニーク出身)。確かに最後に演奏したプリヴァのオリジナル曲は盛り上がっていた。

■ 挟間美帆 plus 十

 

挾間美帆 (arrranger, conductor)
安藤康平 (woodwinds 1)
小西遼 (woodwinds 2)
寺井雄一 (woodwinds 3)
鈴木圭 (woodwinds 4)
田中充 (tp 1)
石川広行 (tp 2)
高井天音 (tb)
佐藤浩一 (p)
清水昭好 (b)
高橋信之介 (ds)

冗談抜きで寒くなってきたのだが、颯爽と登壇した挟間美帆はTシャツ姿。確かに指揮も音楽自体も内面の熱気を感じさせるものだった。

この夜演奏されたのは、最初と最後の2曲に挟むかたちで、ハービー・ハンコック『Maiden Voyage』全5曲。わたしも大好きなアルバムである。

1. 「Maiden Voyage」。ベースのアルコからはじまり、金管、木管と音を重ねてゆき、テーマに入る。左端・寺井雄一のテナーが繰り返しのリフによってアンサンブルにつなげてゆく。佐藤浩一のこぼれるようなピアノ。

2. 「The Eye of the Hurricane」。小西遼のフルートによって不穏なイントロ、そして不協和音を活かしたアンサンブル。テーマに入るとウルトラモダン感が爆発する。石川広行のイケイケのトランペット、みんな笑いながら見つめる。鈴木圭のバリサクとの絡みも気持ちいい。トロンボーンソロ、ここで嵐が暴れまわる曲想が見事に体現される。

3. 「Little One」。ピアノのイントロ、ソプラノサックス、静謐なアンサンブル。清水昭好のベースも目立っている。また、高橋信之介のプレイがシンバル中心から次第に熱くなってゆくのも素敵。

4. 「Survival of the Fittest」。ピアノトリオから入り、一気にフロントが音を重ねる気持ちよさ。鈴木圭のバリサクソロ、ドラムスが煽り煽り、勢い余って目覚ましいドラムソロ。寺井雄一のテナーはこけおどしの音ではなく、マーク・ターナーのように濃淡を付けていくスタイルで、とても好感をもった。田中充の端正なトランペット、そしてまたしても分厚さを増してゆくアンサンブルが絶品。ドラムソロ、その勢いにみんな笑って見つめる。

5. そのまま滑らかに「Dolphin Dance」。物語の終結が見えてきた嬉しさもある。石川広行のソロは2曲目と違って端正。安藤康平のソプラノとアルトには透明感があり、一方、隣の小西遼のアルトはファンキーな音色、このふたりが共演して面白い。そして凪のようにテーマ。

本当に鮮やかなグループ演奏だった。聴いてよかった。身体は冷えまくったのだけれど。


川島誠『HOMOSACER』

2017-04-27 22:45:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

川島誠『HOMOSACER』(PSF、-2015年)を聴く。

Makoto Kawashima 川島誠 (as)

このプレイヤーの演奏は、ネット上の動画で観たくらいでもあり(白石民夫とNYの地下鉄で共演する動画は必見)、CDを聴きたいと思っていた。ちょうど先日、川島さんがバーバー富士における齋藤徹さんのライヴを観にいらしていて、2枚をもとめた。本盤はそのひとつである。

ここには2曲の演奏が収録されている。最初のインプロは、場に自身を溶け込ませたような演奏。2曲目は「赤蜻蛉」と付されたタイトルのように、過ぎ去った過去の記憶を掘り起こされるような演奏。

白石民夫のような彼岸の抽象ではない。無機生命体の橋本孝之とも違う。柳川芳命のようなアジアン・ブルースとも違う。まるで、あるがままを受けとめるような佇まいが感じられる。それはレヴィナスを引用するまでもなく、ある程度は苛烈な覚悟によって成り立っているに違いない。したがって、哀しみの印象もある。


ポール・オースター『冬の日誌』

2017-04-27 21:58:48 | 北米

ポール・オースター『冬の日誌』(新潮社、原著2012年)を読む。

「冬」すなわち老境に入ってきた作家による、自伝的な作品である。

さまざまな状況や事件があった。怪我。両親の離婚。貧乏と困窮。引っ越し。性欲。恋愛。確執。結婚。離婚。愚かな行い。大事故。偶然。

そのひとつひとつが記憶に刻みこまれ、偶然という意味や無意味という意味を与えられる。まるで偶然と必然とが支配し、時々刻々、同じものがふたつとない物語を創ってゆく野球のように。これを読む者は、間違いなく、要素の数々を刻み付け縒り合わせるプロセスを自分のものとしてとらえることだろう。

「ニューヨーク三部作」に魅せられてから長い時間が経つが、オースターを読み続けてきたことにも大きな意味があった。「生きていることも悪くはない」と思えてしかたがない。

●ポール・オースター
ポール・オースター+J・M・クッツェー『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡2008-2011』(2013年)
ポール・オースター『Sunset Park』(2010年)
ポール・オースター『Invisible』(2009年)
ポール・オースター『闇の中の男』再読(2008年)
ポール・オースター『闇の中の男』(2008年)
ポール・オースター『写字室の旅』(2007年)
ポール・オースター『ブルックリン・フォリーズ』(2005年)
ポール・オースター『オラクル・ナイト』(2003年)
ポール・オースター『幻影の書』(2002年)
ポール・オースター『トゥルー・ストーリーズ』(1997-2002年)
ポール・オースター『ティンブクトゥ』(1999年)
ポール・オースター『リヴァイアサン』(1992年)
ポール・オースター『最後の物たちの国で』(1987年)
ポール・オースター『ガラスの街』新訳(1985年)
『増補改訂版・現代作家ガイド ポール・オースター』
ジェフ・ガードナー『the music of chance / Jeff Gardner plays Paul Auster』


クレイグ・テイボーン+イクエ・モリ『Highsmith』

2017-04-27 09:27:53 | アヴァンギャルド・ジャズ

クレイグ・テイボーン+イクエ・モリ『Highsmith』(Tzadik、2017年)を聴く。

Craig Taborn (p)
Ikue Mori (electronics) 

あっと驚くデュオ。2015年にNYのStoneでエヴァン・パーカーのセッションをやったとき、テイボーンが間違いで現れず、このふたりの共演を観ることはできなかった。しかし予想通り、相性は抜群に良い。

イクエ・モリはいつもチャーミングだ。彼女のエレクトロニクスは満天の星空に流れる彗星をみるようで、宇宙的な広がりも、ファンタジックなイメージ喚起力もある。1997年に法政大学でジョン・ゾーン、マイク・パットンと共演するライヴを観たときにはそこまで浸透してこなかった。脳の障壁を取り払うのはそんなに簡単なことではない。

一方のクレイグ・テイボーンは、まったくケレンで誤魔化したりかわしたりすることもなく、あくまで硬質なピアノで相対する。満点の星空の下、冷え冷えのピアノが結晶のフラグメンツを次々に放つ。

●クレイグ・テイボーン
クレイグ・テイボーン『Daylight Ghosts』(2016年)
チェス・スミス『The Bell』(2015年)
クレイグ・テイボーン『Chants』(2013年)
クリス・ライトキャップ『Epicenter』(2013年)
クリス・ポッター『Imaginary Cities』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
デイヴ・ホランド『Prism』(2012年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
オッキュン・リーのTzadik盤2枚(2005、11年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas II』(2004年)
ティム・バーン『Electric and Acoustic Hard Cell Live』(2004年)
ロッテ・アンカー+クレイグ・テイボーン+ジェラルド・クリーヴァー『Triptych』(2003年)

●イクエ・モリ
エヴァン・パーカー、イクエ・モリ、シルヴィー・クルボアジェ、マーク・フェルドマン@Roulette(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
シルヴィー・クルボアジェ+マーク・フェルドマン+エヴァン・パーカー+イクエ・モリ『Miller's Tale』、エヴァン・パーカー+シルヴィー・クルボアジェ『Either Or End』(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
イクエ・モリ『In Light of Shadows』(2014年)


永武幹子+瀬尾高志+柵木雄斗@高田馬場Gate One

2017-04-27 01:00:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

高田馬場のGate Oneに初めて足を運び、永武幹子、瀬尾高志、柵木雄斗のトリオ。

Mikiko Nagatake 永武幹子 (p)
Takashi Seo 瀬尾高志 (b)
Yuto Maseki 柵木雄斗 (ds)

永武さんと瀬尾さん、これは水と油ではないかと思い、またそれが観ておきたい理由でもあったのだが、やはり化学反応を起こしていてとても面白いライヴだった。

スティーヴ・スワロウ、ミシャ・メンゲルベルク、カーラ・ブレイ(「Sing Me Softly of the Blues」!)、富樫雅彦、アントニオ・カルロス・ジョビン。3人が暴れまくって終盤にフラグメンツを集結させ、それとわかる「Moose the Mooche」。オリジナル曲も面白い。セロニアス・モンクを思わせる「I'm Just Awake」、70年代のキース・ジャレットを彷彿させる「スペードのジャックに会った」。

この変態的とも言える選曲に相応しい多彩なピアノ。背後で瀬尾さんが熱くベースを弾くと、しばしばその音に永武さんが呼応し恍惚とし、さらに相互のフィードバックを繰り返してゆく。そして初めて聴く柵木さんのドラムスのアタックは強く、時折の激しくするどいパルスがサウンドに活を与えていた。

ところで瀬尾さんとは、今井和雄『the seasons ill』がヤバい傑作だという意見で共感。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●永武幹子
MAGATAMA@本八幡cooljojo(2017年)
植松孝夫+永武幹子@北千住Birdland(JazzTokyo)(2017年)
永武幹子@本八幡cooljojo(2017年)

●瀬尾高志
森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO(2016年)
坂田明+今井和雄+瀬尾高志@Bar Isshee(2016年)
板橋文夫『みるくゆ』(2015年)
寺田町+板橋文夫+瀬尾高志『Dum Spiro Spero』(2014年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)  


飽きもせずに蒲田の八重瀬とスズコウ

2017-04-26 08:06:04 | 関東

編集者のMさん、沖縄オルタナティブメディアのNさんと蒲田で共謀罪を適用しない打ち合わせ。本日は東口で打ち合わせ。

まずは「蒲田的な横丁」にある沖縄料理の「八重瀬」。居心地がよく、スーチカーもあって嬉しい。よもぎサワー物件あり。

壁には手書きの沖縄の地図があってこれもまた楽しい。本部半島の横がヘンになっている(古宇利島あたりがはがれていた)、大東島が近すぎるだのと心無いツッコミを入れてしまい即反省した。

なお近くに物産店も開いていて、偵察に行ってみると、「フィファチ(ヒハツ)」が入荷とある。何のことかと思ったら島胡椒のピパーツ。どれを使えばいいのだろう。

ゴジラが遡った夜の呑川を見たりして、やはり東口の「スズコウ」に移動。見るからに古い店であり、中には夏目雅子のポスターや高見山のサインなんかが飾ってある。おばちゃんはすべてを見通しているようであり、薦められるままにいわし三点盛(刺身、揚げ物、なめろう)を食べた。旨かった。

●蒲田界隈
飽きもせずに蒲田の三州屋と喜来楽(と、黒色戦線社)
飽きもせずに蒲田の東屋慶名
飽きもせずに蒲田の鳥万と喜来楽
蒲田の鳥万、直立猿人
蒲田の喜来楽、かぶら屋(、山城、上弦の月、沖縄)
蒲田のニーハオとエクステンション・チューブ
「東京の沖縄料理店」と蒲田の「和鉄」
庵野秀明+樋口真嗣『シン・ゴジラ』
道場親信『下丸子文化集団とその時代』


ポール・ブレイ『Synth Thesis』

2017-04-25 07:20:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

ポール・ブレイ『Synth Thesis』(Postcards、1993年)を聴く。

Paul Bley (syn, p)

本盤で、ポール・ブレイが、アネット・ピーコックと組んでのシンセサイザー・ショー(アネット・ピーコック+ポール・ブレイ『Dual Unity』、1970年)以来20数年ぶりにシンセサイザーを弾いたということのようだ。

そのときの記録は、他のミュージシャンがどのようにシンセを弾くのかとは無関係にあれこれと試していて面白くもあった。ここではひとり、アツアツで一緒に愉しむ相方がいなくても、ブレイは玩具箱から好きなものを取り出すようにシンセを弄んでいる。

その要素だけをいま聴くと安っぽかったりもするのだが、ブレイの音楽のなかではそんなことはどうでもよくなってしまう。シンセサウンドの合間に、ブレイの美的感覚に溺れるようなピアノが聴こえてくると、まるで雲のなかから光が射しこむような印象を覚える。

●ポール・ブレイ
ポール・ブレイ『Solo in Mondsee』(2001年)
ポール・ブレイ『Homage to Carla』(1992年)
ポール・ブレイ『Plays Carla Bley』(1991年)
ポール・ブレイ+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Memoirs』(1990年)
チェット・ベイカー+ポール・ブレイ『Diane』(1985年)
イマジン・ザ・サウンド(1981年)
アネット・ピーコック+ポール・ブレイ『Dual Unity』(1970年)
ポール・ブレイ『Barrage』(1964年)
ポール・ブレイ『Complete Savoy Sessions 1962-63』(1962-63年)


倉田準二『恐竜・怪鳥の伝説』

2017-04-24 23:49:42 | 関東

アマゾンプライムを探索していると、倉田準二『恐竜・怪鳥の伝説』(1977年)があった。

いやー、死ぬほど懐かしい。テレビで何度か観た。しかしその割には、渡瀬恒彦がなにやらカッコつけているところしか覚えていない。

そんなわけで再見してみると、死ぬほどくだらない。恐竜も怪鳥も目を覆いたくなるほどショボい。記憶から抹消されているのも当然だった。ドラマもまた、死ぬほどショボい。西湖の観光映画にでもなったのだろうか。クライマックスはバカバカしすぎて信じられない。なにがラララ―だ。

ちなみに併映作品は、鈴木則文『ドカベン』であったらしい。腰砕け2連発、最強である。


榎本秀一『Owl in Blue』

2017-04-24 08:00:00 | アヴァンギャルド・ジャズ

榎本秀一『Owl in Blue』(Aketa's Disk、2006年)を聴く。

Shuichi Enomoto 榎本秀一 (ts, shakuhachi)
Yuji Fujisawa 藤澤由二 (p)
Keita Ito 伊藤啓太 (b)
Keiichiro Uemura 上村計一郎 (ds)

つい何度も繰り返してしまうアルバム。

榎本さんのけれん味のないストレートなテナーが気持ちよく、ああ自分はこういうものを聴きたかったのだと思わせられる。 スタンダード「Ruby, My Dear」や「Antholopology」は衒いがなくて嬉しいし、オリジナルのタイトル曲「Owl in Blue」でのマイナーの抒情あるスイングもいい。

また特筆すべきは藤澤由二さんのピアノであり、ぱきんぱきんと確信を持ったような旋律を繰り出してくる。やはりタイトル曲でのソロなんて耳が吸い寄せられる。例えても意味がないがミシェル・ペトルチアーニを想起させられたりして。

●参照
藤澤由二+岩山健@本八幡cooljojo


乱気流女子@喫茶茶会記

2017-04-23 22:28:50 | アヴァンギャルド・ジャズ

四谷三丁目の喫茶茶会記にて、「乱気流女子」という臨時グループ(2017/4/23)。

Yoko Arai 新井陽子 (p)
Nonoko Yoshida 吉田野乃子 (as) 
jou (dance) 

吉田野乃子さんにお会いするのはニューヨーク以来1年半ぶりである。変わらず元気で嬉しくなってしまう。

今回のトリオはかなり謎な感じ。「不機嫌なピアニスト」、「北海道の秘密兵器」、「即興人生の達人」(笑)。こんなキャッチフレーズのどれでもいいからわたしにも贈って欲しい。

ファーストセット、最初は野乃子さんのソロ。サックスの練習場所をタイトルにしたという「East River」、いきなり倍音そのものに物語がある感覚。飛び道具もピキュピキュと放った。ここでルーパーをセット。妹夫婦をネタにした「Taka 14」、ループが循環するごとに、片足での音止め、マウスピースのみ吹き、水のコップへの吹き込みなどを繰り出す。「Desert Island」は、モチーフとする瀬戸内の風景のような寂しさや抒情を感じさせるもので、最後にルーパーを切ってのひと吹きがまた鮮やか。北海道方言だという「Uru-Kas」は変拍子、手拍子もループさせつつ積み重ねるアンサンブルが気持ちいい。「15 Lunatics (for My Mother)」では想いのようなものが確かにのせられていた。

ここで新井さんとのデュオ、「Take the "F" Train」、調子はずれの大暴れ。次にjouさんとのデュオ、北海道の空知をモチーフにした曲。jouさんは台の上に乗り、ここから落ちたら死ぬという設定だとして驚くほどの動きを見せた。何か良い音が空から降ってくるようだった。jouさんが台から降りてしまい、演奏終了。

セカンドセット、トリオ。最初は新井さん=ダンス、jouさん=ピアノと、反対の役割。サックスがヘンな音で介入してくる。jouさんはサックスの朝顔に詰め物をしたり、オーディエンスの足を台に載せたりとやりたい放題。新井さんが低音と高音を叩きつけて轟音を放ち、吉田さんが呼応する。jouさんの体躯は抽象でもあり、しかし、尻でピアノの鍵盤をスライドするなど妙な動きもみせる。やがて新井さんがリコーダーで弱弱しい音を出し、音風景に細い糸を与える。jouさんは吉田さんの片足の下にわが身を潜らせたりもし、絡み合いがわけのわからないものになっていく。そして終わるべくしてなのかどうなのかわからないうちに終了。

それにしても、独特の抒情を含み持つ野乃子さんのサックスを聴けてよかった。この日、RUINSを観に行くとのこと、わたしも行きたくなったが諸用あって帰った。

●吉田野乃子
吉田野乃子『Demo CD-R』(2016年)
吉田野乃子『Lotus』(2015年)
ペットボトル人間の2枚(2010、2012年)