御茶ノ水のワテラスにて毎年開かれているJazz Auditoria。いままでは、野外イヴェントが苦手だったり、たまたまプログラムが琴線に触れなかったり、不都合だったりして、行ったことがなかった。今回その気になって、ランチタイムに整理券を貰った(2017/4/28)。職場の近くなのだ。
■ 小沼ようすけ+グレゴリー・プリヴァ
小沼ようすけ (g)
Gregory Privat (p)
開演を待っているうちに暗くなってきた。もう連休に入るという解放感も相まって、このデュオがとても爽やかに聴こえる。寒くなければビールを買ってきたのに。
小沼ようすけのプレイを観るのは、ゲイリー・バーツとKANKAWAのライヴにかれが客演したとき以来だ(2003年?)。そのときの記憶に輪をかけて巧さが際立っていた。ピッキングが実に滑らかで音も丸く固く粒立っている。本人はフレンチカリブ音楽やクレオール的なものへのこだわりを口にしていた(グレゴリー・プリヴァはマルティニーク出身)。確かに最後に演奏したプリヴァのオリジナル曲は盛り上がっていた。
■ 挟間美帆 plus 十
挾間美帆 (arrranger, conductor)
安藤康平 (woodwinds 1)
小西遼 (woodwinds 2)
寺井雄一 (woodwinds 3)
鈴木圭 (woodwinds 4)
田中充 (tp 1)
石川広行 (tp 2)
高井天音 (tb)
佐藤浩一 (p)
清水昭好 (b)
高橋信之介 (ds)
冗談抜きで寒くなってきたのだが、颯爽と登壇した挟間美帆はTシャツ姿。確かに指揮も音楽自体も内面の熱気を感じさせるものだった。
この夜演奏されたのは、最初と最後の2曲に挟むかたちで、ハービー・ハンコック『Maiden Voyage』全5曲。わたしも大好きなアルバムである。
1. 「Maiden Voyage」。ベースのアルコからはじまり、金管、木管と音を重ねてゆき、テーマに入る。左端・寺井雄一のテナーが繰り返しのリフによってアンサンブルにつなげてゆく。佐藤浩一のこぼれるようなピアノ。
2. 「The Eye of the Hurricane」。小西遼のフルートによって不穏なイントロ、そして不協和音を活かしたアンサンブル。テーマに入るとウルトラモダン感が爆発する。石川広行のイケイケのトランペット、みんな笑いながら見つめる。鈴木圭のバリサクとの絡みも気持ちいい。トロンボーンソロ、ここで嵐が暴れまわる曲想が見事に体現される。
3. 「Little One」。ピアノのイントロ、ソプラノサックス、静謐なアンサンブル。清水昭好のベースも目立っている。また、高橋信之介のプレイがシンバル中心から次第に熱くなってゆくのも素敵。
4. 「Survival of the Fittest」。ピアノトリオから入り、一気にフロントが音を重ねる気持ちよさ。鈴木圭のバリサクソロ、ドラムスが煽り煽り、勢い余って目覚ましいドラムソロ。寺井雄一のテナーはこけおどしの音ではなく、マーク・ターナーのように濃淡を付けていくスタイルで、とても好感をもった。田中充の端正なトランペット、そしてまたしても分厚さを増してゆくアンサンブルが絶品。ドラムソロ、その勢いにみんな笑って見つめる。
5. そのまま滑らかに「Dolphin Dance」。物語の終結が見えてきた嬉しさもある。石川広行のソロは2曲目と違って端正。安藤康平のソプラノとアルトには透明感があり、一方、隣の小西遼のアルトはファンキーな音色、このふたりが共演して面白い。そして凪のようにテーマ。
本当に鮮やかなグループ演奏だった。聴いてよかった。身体は冷えまくったのだけれど。