キース・ジャレットのスタンダーズ(ゲイリー・ピーコック、ジャック・デジョネット)については、『Bye Bye Blackbird』(1991年)や『At the Blue Note』(1994年)のシンプルさに驚き、少し失望もしたこともあって、それ以降の作品はほとんど聴いていない。『Standards in Norway』(1989年)は微妙で、リリースは確か『Bye Bye Blackbird』よりも少し後だった。この頃からシンプルなピアノ演奏に変わってきた。とは言えこの3人であるから悪いはずはないので、まあ気持ちの問題である。(同時期の『At the Deer Head Inn』はドラマーがモチアンに変わっただけで好きなアルバムになってしまっている。)
わたしが好きなスタンダーズのアルバムは、最初の『Standards』の2作(1983年)から『Still Live』(1986年)までの時期。特に愛聴してきたアルバムが『Standards Live』(1985年)で、この頃の音源を聴くとキースの天才ぶりに圧倒される。絢爛豪華で、70年代の雰囲気も引きずっている。曲の解釈や演奏は毎回かなり異なり、それに、ピーコックが香りたつような音で介入する。
これまで出た音源を整理すると以下のような録音順。
1977年 2月 『Tales of Another』(ゲイリー・ピーコック)
1983年 1月『Standards Vol.1』、『同 Vol.2』
1984年12月 『Canada '84 Japan '86』(1枚目)
1985年 2月 『Standards I/II』(DVD)
1985年 7月 『Standards Live』
1985年 7月 『North Sea Standards』
1985年 7月 『Festival de jazz d'Antibes 1985』
1986年 7月 『Still Live』
1986年10月 『Canada '84 Japan '86』(2枚目)、『Live in Sendai 1986』
1986年10月 『Standards I/II』(DVD)
1987年10月 『Changeless』
以下略
このうち最近出てきた音源。
『Festival de jazz d'Antibes 1985』(JazzTime、1985年)は『Standards Live』や『North Sea Standards』と同じヨーロッパ・ツアーの記録。2枚組である。いきなりボビー・マクファーリンが歌いながらメンバーを紹介し驚いてしまう。ゆっくりとしたテンポの「Falling in Love with Love」や明快に弾きゲイリーが活躍する「God Bless the Child」など、演奏は当然どれも良い。聴けば聴くほどキースが素晴らしいので比較するものでもないが、やはり、『Standards Live』が際立って神憑りだったのだなと感じる。
『Canada '84 Japan '86』(Hi Hat、1984、86年)は、1枚目は1984年のトロントでのライヴ、2枚目は1986年の仙台でのライヴ。特に印象深い演奏が、仙台での「Stella by Starlight」であり、この執拗さや粘っこさは、『Standards Live』における同曲の演奏とはまた違った魅力を持っている。
ところで、『Live in Sendai 1986』(JazzTime、1986年)というものもあって、『Canada '84 Japan '86』の2枚目と同じである。しかし、『Canada '84 Japan '86』は日本のラジオ放送を音源にしており日本語のアナウンスが入っているのに対し、『Live in Sendai 1986』はまた別の音源でありアナウンスはない。
Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJonette (ds)
●キース・ジャレット
キース・ジャレット『North Sea Standards』(1985年)
キース・ジャレット『Standards Live』(1985年)
ピーター・ブルック『注目すべき人々との出会い』、クリストのドキュ、キース・ジャレットのグルジェフ集 (1980年)
キース・ジャレット『Staircase』、『Concerts』(1976、81年)
キース・ジャレット『Eyes of the Heart』(1976年)
キース・ジャレットのインパルス盤(1975-76年)
キース・ジャレット『Arbour Zena』(1975年)
キース・ジャレット『Solo Performance New York '75』(1975年)
キース・ジャレット『The New York Concert』(1975年)
キース・ジャレット『The Bremen Concert』(1975年)
70年代のキース・ジャレットの映像(1972、76年)
1972年6月のキース・ジャレット・トリオ(1972年)
キース・ジャレット+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Hamburg '72』(1972年)
キース・ジャレット『Facing You』(1971年)