Sightsong

自縄自縛日記

T. 美川&.es『September 2012』

2017-05-31 21:58:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

T. 美川&.es『September 2012』(Re-Records、2012年)を聴く。

T. Mikawa T. 美川 (electronics)
.es:
Takayuki Hashimoto 橋本孝之 (as, g, hca)
sara (p,cajon)

大阪のギャラリーノマルと難波ベアーズにおける演奏の記録が1曲ずつ。

1曲目は、.esの演奏から始まる。苦悶するように暴れる橋本孝之のアルト。かれが掌の上の人間に感じられてしまうように、サウンドを包み込むsaraのピアノ。やがてT. 美川のエレクトロニクスが入ってきてもその構図は変わらないような印象である。

2曲目は最初からエレクトロニクスとアルトとが吐き出すサウンドが緩衝材となり、プラットフォームになるような感覚。saraさんのカホンもピアノも、モノクロのアルトとエレクトロニクスに色を付けるようであり、ふと気づくと、依然としてアルトが苦悶し生き延びている。

それにしても凄い組み合わせだ。ハコの響きなのかサウンドの質なのか、2曲の肌触りがまるで異なることも面白い。

●参照
RUINS、MELT-BANANA、MN @小岩bushbash(2017年)
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)
内田静男+橋本孝之、中村としまる+沼田順@神保町試聴室(2017年)
橋本孝之『ASIA』(JazzTokyo)(2016年)
グンジョーガクレヨン、INCAPACITANTS、.es@スーパーデラックス(2016年)
.es『曖昧の海』(2015年)
鳥の会議#4~riunione dell'uccello~@西麻布BULLET'S(2015年)
橋本孝之『Colourful』、.es『Senses Complex』、sara+『Tinctura』(2013-15年)


スピリッツ・トリオ『JAZZ』

2017-05-31 07:53:21 | アヴァンギャルド・ジャズ

スピリッツ・トリオ『JAZZ』(Venus、1994年)を聴く。

Spirits Trio:
Masahiko Togashi 富樫雅彦 (ds)
Hideo Ichikawa 市川秀男 (p)
Ikuo Sakurai 桜井郁雄 (b)

これを聴くのは発表当時以来久しぶりである。当時はここまで良いとは感じなかった。毒にも薬にもならぬようなタイトルとジャケットに騙されてはいけない。

やはりVenusらしくスタンダードやバラードが中心であり、どれも沁みる。特に好きな曲は、富樫雅彦の名曲「Waltz Step」。個人的な記憶では、富樫雅彦トリオの『Ballads for You』における山下洋輔、Great 3の『Begin the Beguine』における菊地雅章のピアノが印象深いのだが、ここでの市川秀男は左のエッジイなふたりとはまるで異なり、まろやかで、透き通っていて、品があって、これもまた素晴らしい。

そしてもちろん富樫雅彦である。研ぎ澄まされた唯一無二のパルスが、すとととと、と。

●富樫雅彦
富樫雅彦が亡くなった(2007年)
『富樫雅彦 スティーヴ・レイシー 高橋悠治』(2000年)
富樫雅彦+三宅榛名+高橋悠治『Live 1989』(1989年)
内田修ジャズコレクション『高柳昌行』(1981-91年)
富樫雅彦『セッション・イン・パリ VOL. 1 / 2』(1979年)
富樫雅彦『かなたからの声』(1978年)
翠川敬基『完全版・緑色革命』(1976年)
富樫雅彦『風の遺した物語』(1975年)
菊地雅章クインテット『ヘアピン・サーカス』(1972年)
菊地雅章+エルヴィン・ジョーンズ『Hollow Out』(1972年)
富樫雅彦『Speed and Space』(1969年)
小川紳介『1000年刻みの日時計-牧野村物語』(1968年)
『銀巴里セッション 1963年6月26日深夜』(1963年)

●市川秀男
ジョージ川口『Plays Herbie Hancock』(1987年)
ジョージ大塚『Sea Breeze』(1971年)
菊地雅章『POO-SUN』(1970年)


阿部薫+山崎弘『Jazz Bed』

2017-05-30 23:50:12 | アヴァンギャルド・ジャズ

阿部薫+山崎弘『Jazz Bed』(P.S.F Records、1971年)を聴く。

Kaoru Abe 阿部薫 (as)
Hiroshi Yamazaki 山崎弘 (ds)

このエネルギーに満ちたアルト演奏を聴いても、やはり阿部薫はわたしにはピンとこない。ここに書いた理由によるものなのかどうかよくわからない。1曲目では「Chim Chim Cher-ee」、2曲目では「アカシアの雨がやむとき」を引用したりもするのだが、同じ理由であまりわたしにとっては意味をなさない。先日来日したメテ・ラスムセンはレコ屋で阿部薫を買ったと話していた。彼女の耳にはどう聴こえるのだろう。

それはともかく、山崎弘(現・山崎比呂志)である。ここで、阿部薫に追従するのに一本調子ではなく、スピーディーに音の貌を変え、多様な印象を与えるドラミングである。今年新宿ピットインで観た山崎さんは、スピードはさほどでなくても、実にカラフルな音を聴かせてくれた(山崎比呂志 4 Spirits@新宿ピットイン)。その要素はすでにここにあった。

●阿部薫
1977年の阿部薫
(1977年)

●山崎比呂志
山崎比呂志 4 Spirits@新宿ピットイン(2017年)


ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』

2017-05-30 22:16:45 | アヴァンギャルド・ジャズ

ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(Bab-Ili、2003年)を聴く。

Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)
Kazuo Imai 今井和雄 (g)
Kazue Sawai 沢井一恵 (koto)
Lê Quan Ninh (perc)
Michel Doneda (ss, sopranino sax)

以前エアジンで、齋藤徹さんがくださった(ありがとうございます)。かなり珍しいもののはずである。

アンコールに応えての短い演奏を含め、およそ1時間、常ならぬ音が持続する。一聴して目立つのはミシェル・ドネダのサックスであり、抗い難い自然の力であるかのように、強い擦れ音とともに場に介入する。しかし、他の4人の強度もドネダに平然と伍する。レ・クアン・ニンのパーカッションはフォルムを決めないようにして大波を生み出している。そして齋藤徹・今井和雄・沢井一恵の弦3人が創出する、その都度異なる周波数の重なりとうなりの強さといったらない。

この7月にはミシェル・ドネダとレ・クアン・ニンとが再来日し、テツさんとともに「MLTトリオ」として演奏する。テツさんは、わたしが去年入院している間、いろいろと心強い気持ちになるメッセージをくださった(ご自身のほうがもっとたいへんなはずなのに)。わたしがここにこんなことを書いても、心配しても、なんにもならない。とにかく心待ちにしている。

>> MLTトリオ・ツアー日程

●齋藤徹
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 

●今井和雄
”今井和雄/the seasons ill” 発売記念 アルバム未使用音源を大音量で聴くイベント・ライブ&トーク@両国RRR(2017年)
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
今井和雄『the seasons ill』(2016年)
Sound Live Tokyo 2016 マージナル・コンソート(JazzTokyo)(2016年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
坂田明+今井和雄+瀬尾高志@Bar Isshee(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
今井和雄 デレク・ベイリーを語る@sound cafe dzumi(2015年)
今井和雄、2009年5月、入谷
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
バール・フィリップス@歌舞伎町ナルシス(2012年)(今井和雄とのデュオ盤)

●沢井一恵
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出
ジャズ的写真集(6) 五海裕治『自由の意思』

●ミシェル・ドネダ
ミシェル・ドネダ『Everybody Digs Michel Doneda』(2013年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
ロル・コクスヒル+ミシェル・ドネダ『Sitting on Your Stairs』(2011年)
ドネダ+ラッセル+ターナー『The Cigar That Talks』(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ミシェル・ドネダ『OGOOUE-OGOWAY』(1994年)

●レ・クアン・ニン
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)


寺井尚之『Dalarna』

2017-05-28 23:23:39 | アヴァンギャルド・ジャズ

寺井尚之『Dalarna』(Overseas、1995年)を聴く。

Hisayuki Terai 寺井尚之 (p)
Masahiro Munetake 宗竹正浩 (b)
Tatsuto Kawahara 河原達人 (ds)

トミー・フラナガンの弟子筋にあたることで有名な寺井氏だが、実は、こうしてプレイを聴くのははじめてだ。

流麗で澄んだ水のようなピアノは、確かに、トミフラを思わせる。しかし独特な雰囲気のほうがまさっている。こうしてトミフラやバド・パウエルの曲を見事にスイングする演奏をなんども繰り返して聴いていると、ピアノトリオが多くの人に好まれるのにはわけがあるのだなと感じてしまう。

こんど大阪に行くことがあれば、Overseasで寺井さんを聴こう。


”今井和雄/the seasons ill” 発売記念 アルバム未使用音源を大音量で聴くイベント・ライブ&トーク@両国RRR

2017-05-28 21:43:33 | アヴァンギャルド・ジャズ

両国のRRRにはじめて足を運んだ(2017/5/28)。今井和雄『the seasons ill』の発売を記念して、結果的に採用されなかった音源を聴き、今井さんのソロライヴを観て、さらにはトークという、盛り沢山の企画。

■ 今井和雄ソロライヴ

今井和雄 (g)

ガットギターによる1時間弱のソロ演奏。以前に今井さん、齋藤徹さんがガット弦を使ったとき(広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri)、大きな音も出す広瀬淳二さんが大変だと苦笑していたことがあった。だが、今回は静かで狭い空間での完全ソロ、バランスのことなど考えず集中して聴くことができる。

最初は金属板を弦の内側に挿み、最後は口にくわえた鎖を垂らして弦に絡ませた。プリペアドの効果と、ガット弦そのものの軋みとが縦軸、高速でのフレージングとクラスター生成とが横軸。静かな感覚もあった。

■ 採用されなかった音源の爆音再生

『the seasons ill』には2016年4月7日@新大久保アースダムと9月25日落合Soupの演奏が収録されている。これらを含め多くの今井さんの演奏を録音した松岡真吾さんによれば、没になった音源も共有する価値が大きいものだという。この日選ばれた音源は、同年の1月27日@新大久保アースダムと7月6日@上野ストアハウス。それぞれ30分程の演奏である。

爆音再生とはこのことだ。鼓膜も手に持った紙もびりびりと震える。爆音であるために細かなニュアンスも聴こえてくる。そして文字通り圧倒的。今井和雄のギタープレイとディレイにより生成された音に耳をゆだねていると、ふっと朦朧とする時間が訪れ、気が付くと目の前のスピーカーが地球と月に見えていた。

『the seasons ill』もこのような爆音で聴きたいものである。

■ トーク

doubtmusicの沼田順社長が引き出し役・刺激剤となってのトーク。興味深いことを聴くことができた。

●この一連のディレイ演奏では、今井さんは、音楽よりも音響を追究している。
●今井さんはギターのつもりで弾いているのではなく、フレーズよりも音の塊がどう動いていくかという捉え方である。
●意図的に演奏しているものではあるが、その一方、図らずも出てしまった音も、自らがごくわずかの過去に出した音も含まれており、結果として、ある程度は意図せざるサウンドとなる。リアルな音の流れとは何か、わからなくなってもくる。
●音楽評論とは。
●ノイズとは。
●ノン・イディオマティック・アプローチにより、ノン・イディオムというイディオムになってしまうのだという言説がある。しかし、ことはそう簡単ではないのではないか。つかまるものがないと心もとないものだ。一方、フリージャズにはある種のフォームやテーマがあり、曲として成り立つようになっている。

―――など。この中には大事なキーがたくさんある。

●今井和雄
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
今井和雄『the seasons ill』(2016年)
Sound Live Tokyo 2016 マージナル・コンソート(JazzTokyo)(2016年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
坂田明+今井和雄+瀬尾高志@Bar Isshee(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
今井和雄 デレク・ベイリーを語る@sound cafe dzumi(2015年)
今井和雄、2009年5月、入谷
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
バール・フィリップス@歌舞伎町ナルシス(2012年)(今井和雄とのデュオ盤)


大工哲弘@みやら製麺

2017-05-28 12:23:19 | 沖縄

神田小川町のみやら製麺には、職場から近いこともあって、ときどき沖縄そばやチャンプルーの定食を食べに行っている。そこになんと、八重山民謡の巨匠・大工哲弘さんが来るという。CD10枚組(!)の『八重山歌謡全集』を出したばかりであり、記念ライヴということだった。主催はそのオフノート/アカバナーの神谷一義さんと、音楽評論家・プロデューサーの藤田正さん。もちろん駆けつけないわけにはいかない。

大工哲弘さんの演奏を生で観るのは、板橋文夫さんとの共演を新宿ピットインで観て以来、20年ぶりくらいではなかろうか。

この日は八重山の唄ばかりを取り上げるという変わった趣向であり、大工さんが、笛と太鼓のふたりとともに、唄い、爆笑トークを繰り広げた。店内は身動きできないほどの人で一杯。

「新ションカネー」、「与那国の猫小」、「いやり節」、「崎山節」、「ヒヤミカチ節」、「黒島口説」、「トゥバラーマ」。大工さんご自身が入力したというプリントを見ながら観客も唄い、「ゆんた・しょうら」、「こいなユンタ」、「まやーゆんた」、「安里屋ゆんた」。照屋林助の「あやかり節」。山之口貘/高田渡の「生活の柄」。最後は椅子を撤去して、「鳩間の港」などを唄いながら皆がカチャーシー。

鼻にかかったような大工さんの声は、張りもあって、独特で素晴らしいとしか言いようがない。間近で聴けて幸福だった。

大工さんのお話はどれも面白かったのだが、なかでも笑ったのは嘉手苅林昌のエピソード。一緒に与那国に向かう船の中で酒を飲み続ける林昌さん。「どれくらいお酒を飲んだんですか」「一升瓶を横にしてもこぼれないくらい」。

また、八重山の唄は、虐げられた者たちのブルースであり、唄の半分に「うりずん」(陽春)と出てくるのはその裏返しなのだと、大工さんは言った。

終わってから、神谷さんたちと飲みながら、貴重な話をいろいろ聞かせていただいた。竹中労を送る会がきっかけとなって、大工さんとのお付き合いがはじまったのだということ。川下直広さんの新しい演歌集のこと。原田依幸さんのかつての「KAIBUTSU LIVES!」のこと。昨年の「生活向上委員会」のこと。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●参照
板橋文夫『うちちゅーめー お月さま』(1997年)
大工哲弘『八重山民謡集』(1970年代?)


かみむら泰一session@喫茶茶会記

2017-05-27 14:36:25 | アヴァンギャルド・ジャズ

四谷三丁目の喫茶茶会記に足を運び、かみむら泰一session(2017/5/26)。この日は喫茶茶会記の開店から10年。

Taiichi Kamimura かみむら泰一 (ts, ss)
Toshiki Nagata 永田利樹 (b)
Yoshinori Shiraishi 白石美徳 (ds)

かみむら泰一さんのテナーは実に独特な「吹かない」テナー。なんだか次第に過激さを増してきているような気がする。息を吹き込んで管を鳴らし切るのではなく、周囲の空気と溶け合うサウンドである。ソロが終わっても微妙に音を出し続けており、空気がサウンドと同義語となる。ちょうど風を顔で感じるときに、実際には空気を構成する分子や微粒子が肌に当たって感覚が生起するように、かみむらさんのテナーもまた最小単位で妙なるものを創り出している。ソプラノにはまた違った印象があって、それも面白い。

永田さんのベースが中音域でその空気に振動を与え、紙の上の砂のように、サウンドが絵になってゆく。そしてさらに面白いことに、白石さんのドラムスはやはり叩きすぎず、スティックやブラシの重力にまかせるようにして、ナチュラルな音を発した。

演奏した曲は、オリジナル(ほとんど水墨画的なものもあった)の他に、「Body and Soul」、「Stablemates」、「Everything Happens to Me」といったスタンダード、デューイ・レッドマンの「Love Is」。ソプラノでバディ・ボールデンの曲も吹いた。終わった後に、「Stablemates」はレッドマンの『In London』に、また「Everything Happens to Me」はレッドマンが参加したエド・ブラックウェルの『Walls/Bridges』に収録されているが、それを意識しているのだろうかと尋ねたところ、そうだ、と。やはりかみむらさんのサックスにはデューイ・レッドマンに通じる魅力がある。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●かみむら泰一
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
かみむら泰一『A Girl From Mexico』(2004年)

●永田利樹
フェローン・アクラフ、Pentax 43mmF1.9(2004年)

●白石美徳
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)


Kiyasu Orchestra Concert@阿佐ヶ谷天

2017-05-26 07:08:15 | アヴァンギャルド・ジャズ

2017年5月25日、阿佐ヶ谷天。

■ Kiyasu Orchestra
ANIKI Tomonori (tp)
tsubatics (b)
Koichi Kidoura (g)
Ryosuke Kiyasu (ds)

不失者のドラマーでもあるRyosuke Kiyasuによるカルテット。というと収まりがいいようだが、この爆音。tsubaticsのベースのフレージングと熱さに魅せられた。どどどどどと攻めるドラムス。

■ ヒグチケイコ+TOMO
ヒグチケイコ(voice, ds)
TOMO (hurdy gurdy)

ハーディ・ガーディーはハンドルを手で回して駆動する楽器であり、ヨーロッパの楽器でありながら、ピッチが微妙に変わるドローンがアジア的な河の流れとなって脳を麻痺させる。そしてヒグチさんのヴォイスが何重にも重ね合わされ、たゆたい、空中の異世界を創出した。

■ Ghost Bastards
Cal Lyall (banjo)
Darren Moore (ds)

俺たちはゴーストバスターズだなんて言って会場爆笑。カル・ライアル、ダレン・ムーアともに、楽器に働きかけたあとの残響を積み上げてゆくサウンドを創り出し、自分たちがゴーストと化していた。

■ Mette Rasmussen + Joke Lanz + Ryosuke Kiyasu
Mette Rasmussen (as)
Joke Lanz (turntable)
Ryosuke Kiyasu (ds)

来日してから4度目のメテ・ラスムセン。石森管楽器にサックスのメンテに行くとの話だったのでどうだったかと訊いてみると、いや行かなかった、新宿でレコードを買っちゃったと舌を出して苦笑。なんと阿部薫、マリオン・ブラウン、ジャッキー・マクリーン、オーネット・コールマンの4枚だそうである。

しかし演奏が始まると可愛さが強面に豹変。何しろ横にはKiyasuさんのドラムス。2日後に共演する人が観る前で、ひたすら轟音でぶっ飛ばす、ぶっ飛ばす。大きなアクションで音色を変えまくるのはメテさんのスタイルだが、室内の端から端まで突然吹きながらかつかつと往復したのには仰天してしまった。そしてジョーク・ランツのターンテーブルが憑依したようなサックス音もあった。見事。 

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●ヒグチケイコ
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)

●メテ・ラスムセン
メテ・ラスムセン@妙善寺(2017年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ@Candy、スーパーデラックス(2017年)
ドレ・ホチェヴァー『Transcendental Within the Sphere of Indivisible Remainder』(JazzTokyo)(2016年)
シルヴァ+ラスムセン+ソルベルグ『Free Electric Band』(2014年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ『All the Ghosts at Once』(JazzTokyo)
(2013年)


ジョン・エドワーズ+オッキュン・リー『White Cable Black Wires』

2017-05-25 07:30:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジョン・エドワーズ+オッキュン・リー『White Cable Black Wires』(Fataka、2011年)を聴く。

John Edwards (b)
Okkyung Lee (cello)

先日のジョン・エドワーズの演奏(ユリエ・ケア3、リーマ@スーパーデラックス)に文字通り驚愕し、物販で本盤を入手したのだったが、やはり異常な強度である。おそらくはわたしが触ってもびくともしないであろう、凄まじい強さで張られた弦を、エドワーズは自在に持ち上げ、インプロを繰り広げる。この響きと軋みが隠しようもない強度そのものが音楽となっている。gaiamamooの原口承悟さんがエドワーズの手を触ったところ、岩のようだったという。

一方のオッキュン・リーの唯我独尊にも思えるチェロの奔流。しかしそれは開かれているのであって、エドワーズのコントラバスとの交錯にはエロチックなものさえ感じられる。

つまり、なまやさしさが皆無なのである。

●ジョン・エドワーズ
ユリエ・ケア3、リーマ@スーパーデラックス(2017年)
エヴァン・パーカー+ジョン・エドワーズ+クリス・コルサーノ『The Hurrah』
(2014年)
パウル・ローフェンス+パウル・フブヴェーバー+ジョン・エドワーズ『PAPAJO』(2002年)

●オッキュン・リー
オッキュン・リー+ビル・オーカット『Live at Cafe Oto』(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
アクセル・ドゥナー+オッキュン・リー+アキム・カウフマン『Precipitates』(2011、13年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス+スティーヴ・ベレスフォード『Check for Monsters』(2008年)
オッキュン・リーのTzadik盤2枚(2005、11年) 


メテ・ラスムセン@妙善寺

2017-05-23 08:09:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

西麻布の妙善寺さんのお堂をお借りして、メテ・ラスムセンのソロライヴ(2017/5/22)。

Mette Rasmussen (as)

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●メテ・ラスムセン
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ@Candy、スーパーデラックス(2017年)
ドレ・ホチェヴァー『Transcendental Within the Sphere of Indivisible Remainder』(JazzTokyo)(2016年)
シルヴァ+ラスムセン+ソルベルグ『Free Electric Band』(2014年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ『All the Ghosts at Once』(JazzTokyo)
(2013年)


川島誠+西沢直人『浜千鳥』

2017-05-21 09:45:30 | アヴァンギャルド・ジャズ

川島誠+西沢直人『浜千鳥』(Homosacer Records、-2016年)を聴く。

Makoto Kawashima 川島誠 (as)
Naoto Nishizawa 西沢直人 (perc)

ワビサビとか枯淡とか言うのは容易だが、それは結果である。それに、枯淡と言うよりも身体を反転させた生の感覚がある。

川島誠のアルトは思索するように、間を置いて、微風でも揺れ動きながら、ときに弱弱しく音を発する。ときに田舎の忘れ去りたい音風景でもある。内面への旅というのか、記憶の深奥へと降りていって、何かの残滓を拾い集めてきては、身体の外に出すこと。それを感知しながら西沢直人のパーカッションが音風景に響きを重ね合わせてゆく。

これはそうしたきびしい過程の一断面なのではないか。

●川島誠
川島誠『HOMOSACER』(-2015年)


メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ@Candy、スーパーデラックス

2017-05-21 07:49:58 | アヴァンギャルド・ジャズ

メテ・ラスムセン待望の初来日。これも、日本・デンマーク外交150年を記念した「OPPOSITE」イベントがあってのことである。

■ Candy(2017/5/16)

Mette Rasmussen (as)
Chris Corsano (ds)

クリス・コルサーノは溜息をもらしてしまうほどのスピードをいかんなく発揮した。メテ・ラスムセンはさまざまに音風景を変えながら、身体のダイナミックな動きをフル活用した表現をみせた。実は冗談抜きで素晴らしかったのである。詳細後日。

■ スーパーデラックス(2017/5/20)

Mette Rasmussen (as)
Chris Corsano (ds)
Jim O'Rourke (g)
Akira Sakata 坂田明 (as, cl, vo)

Candyでのデュオにおいては、ふたりとも実に大きなポテンシャルをさまざまな表現の形で垣間見せてくれた。しかしこの日は様子が異なった。

何しろメテさんの横には坂田さんがいて、いつもの調子で飛ばしまくる。メテさんは最初は様子を探る感じで吹いていたのだが、マウスピースをラバーからメタルに取り換えてから明らかに潮目が変わった。とにかく振り落とされず演奏を前へ前へと主導しなければならぬ、そのためのパワープレイだった。貫通する轟音、多彩な音、ダイナミックな動き、それはやはり圧倒的なのだった。

クリス・コルサーノもここではまるでフリージャズのドラマー。繊細な表現手段を開陳するフィールドではなく、やはりパワープレイ。後半なんてほとんどエルヴィン・ジョーンズかというくらいの叩きっぷりであり、後頭部が熱くなった。

それでも、全部4人でやるよりは、当初予定通りにデュオの部をいれたほうが良かった。素晴らしくても「全部があの感じ」になってしまうから。

●メテ・ラスムセン
ドレ・ホチェヴァー『Transcendental Within the Sphere of Indivisible Remainder』(JazzTokyo)(2016年)
シルヴァ+ラスムセン+ソルベルグ『Free Electric Band』(2014年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ『All the Ghosts at Once』(JazzTokyo)
(2013年)

●クリス・コルサーノ
クリス・コルサーノ、石橋英子+ダーリン・グレイ@Lady Jane(2015年)
コルサーノ+クルボアジェ+ウーリー『Salt Talk』(2015年)
アイスピック『Amaranth』(2014年)
エヴァン・パーカー+ジョン・エドワーズ+クリス・コルサーノ『The Hurrah』(2014年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ『All the Ghosts at Once』(2013年)
ネイト・ウーリー『Seven Storey Mountain III and IV』(2011、13年)
ネイト・ウーリー+ウーゴ・アントゥネス+ジョルジュ・ケイジョ+マリオ・コスタ+クリス・コルサーノ『Purple Patio』(2012年)
ロドリゴ・アマド『This Is Our Language』(2012年)


リチャード・グルーヴ・ホルムズ『Spicy』

2017-05-20 14:23:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

リチャード・グルーヴ・ホルムズ『Spicy』(Prestige、-1967年)を聴く。LPオリジナル盤。

Richard "Groove" Holmes (org)
Gene Edwards (g)
"Boogaloo" Joe Jones (g)
Richard Landrum (conga)
George Randall (ds)

多くの人が愛しているに違いないリチャード・グルーヴ・ホルムズ節。イケイケでオルガンの和音を、一、二の三と重ねてゆき、高みに持ち上げたかと思えば潔くリリースして、また旋律を弾きまくっている。しかも、「A Day in the Life of a Fool」(=カーニバルの朝、黒いオルフェ)、「Work Song」、「When Lights Are Low」、「Old Folks」といった有名曲の数々もすべて独自サウンドに塗り替えられている。いやー、イイなあ。

ここでブーガルー・ジョー・ジョーンズが登場するのだが、まだ実は「Boogaloo」の綽名は付いていない。当時のライナーには「ドラマーではない」と書かれていたりする新人なのだった。まだ個性むんむんではないが、やはりかれの太いギターの音。

●ブーガルー・ジョー・ジョーンズ
ブーガルー・ジョー・ジョーンズ『What It Is』(1971年)
ブーガルー・ジョー・ジョーンズ『Right on Brother』
(1970年)


ユリエ・ケア3、リーマ@スーパーデラックス

2017-05-20 08:20:57 | アヴァンギャルド・ジャズ

デンマークとの国交150年を記念した音楽イヴェント「OPPOSITE 2017」。終盤になってようやく足を運んだ。

■ ユリエ・ケア3

Julie Kjær 3:
Julie Kjær (as, fl)
John Edwards (b)
Steve Noble (ds)

闊達なユリエ・ケアのアルトも、シンプルな形で攻めるスティーヴ・ノブルのドラムスも良いのだが、サウンドの主役はとにかくジョン・エドワーズである。弦を凄いテンションで張っているのだろうか、剛のコントラバスをたいへんな力とスピードで操っている。そのビチビチの弦からはまるでオルゴールのような音さえも聴こえた。笑ってしまうほど予想を遥かに凌駕する驚愕の演奏(いやホント)。

■ リーマ

Liima:
Tatu Rönkkö (mpc sampler, perc) (FIN)
Mads Brauer (elec, syn)
Casper Clausen (vo, syn)
Rasmus Stolberg (b, syn)

快適なエレポップ。観客が何人もクラゲのように踊っていた。

●ジョン・エドワーズ
エヴァン・パーカー+ジョン・エドワーズ+クリス・コルサーノ『The Hurrah』(2014年)
パウル・ローフェンス+パウル・フブヴェーバー+ジョン・エドワーズ『PAPAJO』(2002年)

●スティーヴ・ノブル
ジョン・ダイクマン+スティーヴ・ノブル+ダーク・シリーズ『Obscure Fluctuations』(2015年)