フィンランドのピアニストとベーシストに、ゲスト的にヴェテランのバリー・アルトシュルが加わる形。なんとカーラ・ブレイ集である。
Iro Haarla (p)
Ulf Krokfors (b)
Barry Altschul (ds)
バリー・アルトシュルの小気味よく音を散らす感じのドラミングは健在であり、豪華ゲストとしての意味がある。
それはともかく、やや凝ったアレンジである。ベースを中心としたイントロがしばらく続き、おもむろにピアノが「Vashkar」の旋律を弾きはじめるところなんて嬉しいものだし、スローにピアノとベースが絡み合う「Ida Lupino」も知的だ。またハールラが思索的なピアノでリードする「Utviklingssang」も悪くない。
しかし、ちょっとでも独自のテンポや変化でカーラ曲を解釈したり、ちょっとでもスイングしたりすると、それはどうしてもカーラではなくなるという不思議を感じる。それは逆に、カーラが自分の曲を淡々と弾くことでカーラ色が溢れることの魔術をも思い出させるものである。また、アルトシュルがかつてポール・ブレイと組んで「Ida Lupino」を演奏したときの、ポールゆえの自己愛的な色とも、やはり異なっている。カーラ曲をわがものとすることはものすごく高いハードルなのかもしれない。
●カーラ・ブレイ
カーラ・ブレイ@ケルンStadtgarten(2019年)
カーラ・ブレイ『Andando el Tiempo』(2015年)
チャーリー・ヘイデンLMO『Time/Life』(2011、15年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Trios』(2012年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ(1988年)
スティーヴ・スワロウ『Into the Woodwork』(2011年)
ポール・ブレイ『Homage to Carla』(1992年)
ポール・ブレイ『Plays Carla Bley』(1991年)
ゲイリー・バートンのカーラ・ブレイ集『Dreams So Real』(1975年)
ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ(1968年)
スペイン市民戦争がいまにつながる
●バリー・アルトシュル
バリー・アルトシュル『The 3Dom Factor』(2012年)
デイヴ・ホランド『Conference of the Birds』(1973年)
ポール・ブレイ『Festival International De Jazz Lugano 31 August 1966』(1966年)
ポール・ブレイ『Bremen '66』(1966年)