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Sightsong

自縄自縛日記

MOPDtK『Blue』

2015-02-15 09:42:59 | アヴァンギャルド・ジャズ

Mostly Other People Do the Killing (MOPDtK)の新作『Blue』(Hot Cup Records、2014年)。このあとにも『Hannover』が出ているので録音上の最新作かどうかわからない。デジタル配信中心だったのか、CDがほとんど出回っていなかったのだが、先日ディスクユニオンで1枚だけおいてあるのを発見した。来日したジョン・イラバゴンが持ち込んだものかもしれない(ライヴ会場には並べていなかったが)。

Peter Evans (tp)
Jon Irabagon (as, ts)
Ron Stabinsky (p)
Moppa Elliott (b)
Kevin Shea (ds)

これまでのMOPDtKと違い、ピアニストを含めたクインテット編成である。というのは、マイルス・デイヴィスの「大」が付く名盤『Kind of Blue』(1959年)を演奏するためだ。

『Kind of Blue』へのオマージュとか、『Kind of Blue』にインスパイアされたとか、『Kind of Blue』と同じ曲を演奏しているとか、ではない。『Kind of Blue』を演奏しているのである。そんなこと予想もしていなかったので、聴き始めて仰天した。まるっきり『Kind of Blue』なのだ。何か違うなという違和感すらあまりない。『Kind of Blue』を棚から探して聴き比べる気にならないほど、クリソツである。

つまり、ピーター・エヴァンスのトランペットはまったくマイルスであり、モッパ・エリオットのベースはまったくポール・チェンバース。ケヴィン・シェアのドラムスはたぶんジミー・コブ(たぶん、というのは、あまりコブに注目して聴いていなかったから)。

そして過激なことに、ピアノとサックスのふたりは一人二役である。ロン・スタビンスキーは、「Freddie Freeloader」では軽快なウィントン・ケリー節を披露し、その他の4曲ではビル・エヴァンスの抑制したプレイを行う。ジョン・イラバゴンにいたっては、左トラックでジョン・コルトレーンそのもののテナーを吹いた直後に、右トラックでは哄笑しながら飛翔するようなキャノンボール・アダレイのアルトソロ。

もう見事という他はなく、唖然としてしまうのだが・・・。これまではジャズの歴史をサカナにして遊び、リスペクトなのか不敬なのかよくわからないところが魅力でもあったのだ。それが、即興の1音1音にいたるまでまったくのコピーである。本人たちは愉しみまくっているのだろうし、冗談でないほどの力量がなければこんなことはできない。わたしは無意味とは言わない、過激と言う。しかし、何を考えているのか。

冗談といえば、最近ツイッター上で展開された愉快なやり取り。

マット・ウィルソン「パフォーマンスを説明するときに"killing"なんて言葉を使うのをやめないか?」
ジャズ・ライター「最近は"killing"のかわりに"dope"が使われているよ」
ジョシュア・レッドマン「Mostly Other People Do the Dope」
ジョシュア・レッドマン「Mostly Other People Do the Fuc...」
ウォルター・スミス三世「spin-off bandだっけ?」
ジョシュア・レッドマン「絶対にオーディションを受けようと思っているバンドだ」
ウォルター・スミス三世「もし新しいバンド名なら、"blow"のサントラを一音ずつ再現したらどうだ」
ジョン・イラバゴン「??? 失敬な。時間とエネルギーの無駄だ、まったくバカバカしい。俺が入っているんだよ」
ウォルター・スミス三世「爆笑」
ジョシュア・レッドマン「Mostly Other People Do the Gigging」

●参照
MOPDtK『Forty Fort』
MOPDtK『The Coimbra Concert』
ジョン・イラバゴン@スーパーデラックス
直に聴きたいサックス・ソロ その2 ジョン・イラバゴン、柳川芳命


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