Sightsong

自縄自縛日記

「水のかたち Praise of Shapelessness」@アトリエ第Q藝術

2024-08-04 10:28:37 | アヴァンギャルド・ジャズ

成城学園前のアトリエ第Q藝術(2024/7/28)。

Yu Kimura 木村由 (dance)
Yoko Ikeda 池田陽子 (viola)
Ayako Kanda 神田綾子 (voice)

このライヴパフォーマンスのキーコンセプトは自発性と適応性をもつ「水」だと書かれていた。それは物理的、生物化学的な挙動のメタファーでもあって、たしかにこの日のステージにも重なるところがあった。ただコンセプトとは出発点であって、当然ながら、三者の即興表現は水にはとどまらない。

音についていえば、アトリエ第Q藝術の地下セラールームの反響はライヴで大きく、また、音が発せられる場所と聴く場所によって印象がかなり異なる。神田さんは声を放つ向きを変え、たんなる反響だけではなく、それが天井や壁を伝って複層的な効果を出すよう演じた。池田さんの弦は特定の方向に向けて音を発せられるわけではないものの、ポルタメントであるから変化の多様性はまたちがう意味で大きい。そして木村さんはダンサーでありながら音にも関与する。部屋から消えてからしばしの時間が経ち、窓を開けて侵入した。その際外部の音も同時に侵入し、温度変化もあり、音環境は大きく変わる。演者を取り巻く環境だけではなく、椅子を乱暴に動かしたり、自らの動きによって擦音を出したりして、音楽家としても演じた。

動きについていえば、身体表現の木村さんを含めた三者が静かに位置を変え続けたことが、音楽表現としてもトータルのステージとしても奏功した。神田さんの振れ幅の大きさや池田さんの揺れ動きは動き方にも影響したはずである。また音のありようだけでなく、三者それぞれが視認するものも場所によって異なっていただろう。だから、コミュニケーションは演者相互にとどまらず、壁や天井や椅子や脚立や外光といったものもその相手となっていた。その意味では、木村さんが仮面をつけて双方向の視線を変貌させたことにはなにか示唆的だった。

ファーストセットは試行と探索、セカンドセットは相互理解に基づく熟成であり、ずいぶん対照的だった。ということは今後もまた場所や関係性によって変わっていくということだろう。

Fuji X-E2, 7Artisans 12mmF2.8, Leica Elmarit 90mmF2.8 (M)

●木村由
長沢哲+木村由+中山晃子@アトリエ第Q藝術(2024年)
風連@音や金時(2023年)
齋藤徹生誕祭@横濱エアジン(2022年)
長沢哲+矢萩竜太郎+木村由+かみむら泰一+いずるばワークショップ@いずるば(2022年)
Memorial Tetsu@いずるば(2022年)
齋藤徹生誕祭@横濱エアジン(2021年)
秋分の午後@喫茶茶会記(2020年)
三浦一壮+丸田美紀+香村かをり+木村由@なってるハウス(2020年)
『ツ・ナ・ゲ・ル・ヒ・ト』@千歳烏山TUBO(2020年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
庄田次郎トリオ@東中野セロニアス(2018年)
宙響舞@楽道庵(2017年)
河合拓始+木村由@神保町試聴室(2016年)

●池田陽子
KARM日本ツアー・関東編(JazzTokyo)(2024年)
池田陽子、大蔵雅彦@Ftarri(2023年)
Ensemble 響む@入間市文化創造アトリエ・アミーゴ ホール(2023年)
りら~雲を吐き、星を喰う homages to Tetsu~@山猫軒(JazzTokyo)(2022年)
池田陽子+阿部真武+岡川怜央@Ftarri(2021年)
池田陽子+遠藤ふみ@Ftarri(2021年)
asinus auris@Ftarri(2020年)
秋分の午後@喫茶茶会記(2020年)
マクイーン時田深山+池田陽子+池上秀夫 ― 弦弦弦@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2020年)
815展でのパフォーマンス(広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊(2020年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+大上流一+南ちほ+池田陽子@不動前Permian(2020年)
池田陽子、増渕顕史、野川菜つみ、田上碧、メーガン・アリス・クルーン@Ftarri(2019年)
ヒゴヒロシ+矢部優子、プチマノカリス/山我静+鈴木ちほ+池田陽子@なってるハウス(2019年)
ガトー・リブレ、asinus auris@Ftarri(2019年)
Signals Down@落合soup(2019年)
815展でのパフォーマンス(矢部優子、広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊(2019年)
Hubble Deep Fields@Ftarri(2019年)
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
エレクトロニクスとヴィオラ、ピアノの夕べ@Ftarri(2019年)
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
大墻敦『春画と日本人』(2018年)
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』(2018年)
佐伯美波+池田若菜+池田陽子+杉本拓+ステファン・テュット+マンフレッド・ヴェルダー『Sextet』(2017年)
クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(2017年)

●神田綾子
moments - Mamiko Hosokawa photographed by m.yoshihisa@代々木上原hako gallery(2024年)
神田綾子+楠直孝+吉木稔@東中野セロニアス(2024年)
神田綾子+土屋秀樹@池袋Flat Five(2024年)
KARM日本ツアー・関東編(JazzTokyo)(2024年)
カーステン・キャリー+神田綾子@千駄木Bar Isshee(2024年)
北神田@渋谷Bar Subterraneans(2024年)
イェーナ・チャング+神田綾子@千駄木Bar Isshee(2024年)
神田綾子+田村夏樹+藤井郷子+アンドリュー・ドルーリー@公園通りクラシックス(2023年)
神田綾子+楠直孝@池袋Flat Five(2023年)
吉田達也+神田綾子+伊藤志宏@東中野セロニアス(2023年)
神田綾子+楠直孝@池袋Flat Five(2023年)
林栄一+吉田達也+神田綾子@公園通りクラシックス(2023年)
山本達久+神田綾子@代々木上原Hako Gallery(2023年)
神田綾子+土屋秀樹@池袋Flat Five(2023年)
林栄一+山本達久+神田綾子+ルイス稲毛@下北沢No Room for Squares(JazzTokyo)(2023年)
神田綾子+柳川芳命+内田静男@渋谷Bar subterraneans(JazzTokyo)(2023年)
おーたかずお+神田綾子@大阪堺筋本町ミュージックスポット satone(聰音)(2022年)
吉田達也+神田綾子+加藤一平@中野坂上Aja(2022年)
MMBトリオ with 神田綾子・ルイス稲毛/林栄一@なってるハウス、cooljojo(JazzTokyo)(2022年)
神田綾子+大澤香織+西嶋徹@大泉学園インエフ(2022年)
カール・ストーン+吉田達也+神田綾子 with 小林径@落合Soup(JazzTokyo)(2022年)
米澤一平+神田綾子@日本橋Double Tall Art & Espresso Bar(2022年)
吉田達也+加藤崇之+神田綾子@公園通りクラシックス(2022年)
神田綾子+ルイス稲毛@東北沢OTOOTO(2022年)
日本天狗党と時岡秀雄そして神田綾子@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2022年)
吉田達也+神田綾子+纐纈雅代@公園通りクラシックス(2022年)
シェーン・ボーデン+神田綾子+Rohco@東北沢OTOOTO(2022年)
神田綾子+大澤香織+西嶋徹@大泉学園インエフ(2022年)
神田綾子+三上寛@なってるハウス(JazzTokyo)(2021年)
吉田達也+神田綾子+細井徳太郎@公園通りクラシックス(2021年)
神田綾子+矢部優子+遠藤ふみ@大泉学園インエフ(2021年)
神田綾子+細井徳太郎+岡川怜央@水道橋Ftarri(JazzTokyo)(2021年)
神田綾子+加藤崇之@下北沢No Room for Squares(2021年)
柳川芳命+照内央晴+神田綾子@なってるハウス(2021年)
細田茂美+神田綾子@高円寺グッドマン(2021年)
神田綾子+真木大彰@Permian(2021年)
纐纈雅代+神田綾子@六本木Electrik神社(JazzTokyo)(2021年)
神田綾子+加藤崇之@下北沢No Room for Squares(2021年)
神田綾子+纐纈雅代@下北沢No Room for Squares(2021年)
新年邪気祓いセッション@山猫軒(2021年)
マクイーン時田深山+神田綾子@下北沢No Room for Squares(JazzTokyo)(2020年)
岡田ヨシヒロ@池袋Flat Five(2020年)
神田綾子+森順治@横濱エアジン(JazzTokyo)(2020年)
神田綾子+北田学@渋谷Bar Subterraneans(動画配信)(2020年)


「Camera・Made in Tokyo」展@日本カメラ博物館

2024-08-03 20:57:25 | 写真

日本カメラ博物館で「Camera・Made in Tokyo」展。戦時中から1960年代あたりまで、東京には非常に多くのカメラメーカー・レンズメーカーがあった。図録はそれを23区別にまとめてあり資料価値が半端ない。興奮。

むかしから気になっていたのは旭光学(ペンタックス)や東京光学(トプコン)があった板橋区。それから品川区、日本工学(ニコン)の聖地たる大井町工場にはヘンな屁理屈を付けて仕事で訪問したことがある。かつては光学ガラスのるつぼから出る煙の色で調子を判断したのだとか。特にグッズなどはもらえなかった。

台東区も渋くて、三共光機がコムラーレンズを作っていた。広角レンズを使ったら歪曲がものすごくて笑った記憶がある。それも含めて人間くさいプロダクツの数々。コムラーにいた阿部さんという人が独立してアベノン光機を立ち上げた。わりと最近まで操業していたはずだが、いつの間にかなくなっていた。いまもアベノンレンズを1本持っている。


ファビアン・アルマザン+リンダ・オー@武蔵野公会堂

2024-08-03 19:20:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

吉祥寺の武蔵野公会堂(2024/8/3)。むかし武蔵野市の仕事で市民ヒアリングをやったことがあるが音楽を聴くのははじめて。

Fabian Almazan (p)
Linda May Han Oh (b)

ファビアンは9年前に、リンダは10年前にニューヨークで観て以来。ふたりともそのときの演奏よりも華やかになっていた。ピアノは場を支配できる力をもった楽器だが、その権力にもたれかかることなくいい距離感。ファビアンの<Jaula>は、かれがテレンス・ブランチャードのバンドメンバーとして訪れた南アにおいてネルソン・マンデラが収監されていた場所を見たときの記憶から書いたものだという。アパルトヘイトの暗い歴史とは対照的に夢見るようなフレーズもあり、とても印象的だった。

●ファビアン・アルマザン
ファビアン・アルマザン『This Land Abounds With Life』(2018-19年)
マリア・グランド『Magdalena』(2018年)
アダム・ラーション@Smalls
(2015年)
ジャスティン・ブラウン『NYEUSI』(2015年)
ジム・スナイデロ『Main Street』(2014年)
テレンス・ブランチャード『Magnetic』(2013年)

●リンダ・オー
ファビアン・アルマザン『This Land Abounds With Life』(2018-19年)
ジム・スナイデロ『Main Street』(2014年)
ジェリ・アレン、テリ・リン・キャリントン、イングリッド・ジェンセン、カーメン・ランディ@The Stone(2014年) 
パスカル・ルブーフ『Pascal's Triangle』(2013年)
サラ・マニング『Dandelion Clock』、『Harmonious Creature』(2009、13年)


ジョエル・レアンドル@バーバー富士、+大友良英@神田POLARIS

2024-08-01 08:06:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

上尾のbarber Fuji(2024/7/29)、神田のPOLARIS(7/30)。

Joëlle Léandre (contrabass)
Otomo Yoshihide 大友良英 (g) (6/30)

それにしてもジョエルさんのコントラバスは繊細だった。バーバー富士では左手が猫のように柔らかく歩き、馬のように疾走もした。弓が入る瞬間はこれしかないと言わんばかり、新鮮な刺身の切り付けのよう。倍音もまた繊細。最後の演奏は齋藤徹さんに捧げられたものだった。僕もまたジョエルさんとWhatsAppで話したのが3年以上前、徹さんの話を聴くためだった。
ポラリスでは大友良英さんの強度に呼応してジョエルさんの弓弾きもまた強い。アタックは緊張の糸を保つというよりはびりびりとした音の擾乱で緊張を与えるもの。ふたりであそぶ音空間が愉しさに満ちていた。
 
 
Fuji X-E2, 7Artisans 12mmF2.8

●ジョエル・レアンドル
タイガー・トリオ『Map of Liberation』(2018年)
イレーネ・シュヴァイツァーの映像(2006年)

●大友良英
大友良英+類家心平@水道橋Ftarri(2024年)
ONJQ@新宿ピットイン(2024年)
大友良英+イヌイジュン+西村雄介@大久保ひかりのうま(2024年)
大友良英@水道橋Ftarri(2024年)
大友良英 X 田中鮎美 "session"@公園通りクラシックス(2024年)
TRY ANGLE/大友良英+川島誠+山崎比呂志@なってるハウス(2022年)
大友良英+川島誠『DUO』(Jazz Right Now)(2021年)
大友良英+川島誠@山猫軒(2021年)
リューダス・モツクーナス+大友良英+梅津和時@白楽Bitches Brew(JazzTokyo)(2018年)
大友良英+マッツ・グスタフソン@GOK Sound(2018年)
阿部芙蓉美『EP』(2014年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』(2011年)
ジョン・ブッチャー+大友良英、2010年2月、マドリッド(2010年)
井上剛『その街のこども 劇場版』(2010年)
『その街のこども』(2010年)
大友良英+尾関幹人+マッツ・グスタフソン 『ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置展 「with records」』(2009年)
サインホ・ナムチラックの映像(2008年)
大友良英の映像『Multiple Otomo』(2007年)
『鬼太郎が見た玉砕』(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)
テレビドラマ版『クライマーズ・ハイ』(2003年)