入るともうそこは電車の入り口。劇場は完全に電車の内部となっている。ほとんどの観客は電車の椅子部分の2階・3階に位置することになる。この美術はカネがかかってるなあ(車両部分どうやったんだろうか)。見たことのない設営である。そしてその車内で不思議な物語が繰り広げられてゆく、、。
前作が初演にしては完全作だっただけに、僕にはこの2作目が注視されたわけであります。劇場もHEPからごく小さいSPACE9に変わり、何と俳優の吹き出る大汗が真下の30センチ先に見えている。その迫力というか、超至近距離の魅力。
この劇団はみんな若いのに演劇の基本に気づいている。その精緻に長けている。何が観客に受けるのか、脚本の隅々にまで血を通わせている。それが一つ一つのセリフに昇華している。それが分かる。箱田恐るべし、だと思う。
そしてその箱田に流れる言葉・仕草をタカイの演出を通し、7人の役者が観客に伝える。みんな達者だ。ダントツに新米だったのが山咲和也だったのではないか。でも彼は根っからの役者バカなんだよね。6人と対等の、いや対等以上の演技をやってのける。
ラスト近くの彼の心情を吐露するシーンはすこぶる感動的だ。その、一人の若者に完全に乗り移っている。そこには山咲のかけらもない。100%、芝居に青春をぶっつけた青年の想いがそこにあった(逆にその青年は山咲そのものだったのか)。そこには妖気さえ漂っていた。
そして、ラストのあっと驚く題名通りの収束。これも箱田の観客へのサービスなのである。すべてが計算されている。
いい作品を生むということはもちろん脚本者たる自分のためでもあるが、観客のためでもある、と思う。冒頭で述べた俳優への超至近距離、それもまたとない観客へのリップサービスなのである。その分、俳優たちのプレッシャーも大変なものだとは想像されるが、、。
まあ、かなり褒め上げておりますが、前作『アストライアー』のあの完成度と比較すると、辛めに言うと前半は少々展開がおとなしいかな。また、ちょっと間の合わない部分もあったような気もする。でも、1作、2作目も完璧だとお化けだよ、ネ。
この劇団は箱田、山咲そしてタカイが万全であれば、まだまだ彼らは無尽蔵のものを持っていると思う。それらをファンに提供する必要が彼らにはある。次回も楽しみであります。
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