ヒッチ夫妻の小さな愛の物語風に取り込んではいるが、やはりこの映画は「サイコ」の裏話に尽きるでしょう。テレビでヒチコック劇場を観ていた人たちならば、気持を当時に戻し、ふんだんに映画そのものを楽しめる作品となっている。
ヒッチが主演する女優に人一倍強い思慕の念を抱いていたというのは何となく分かっていた。やはりグレース・ケリーからティッピー・ヘドレンに至る金髪女性崇拝は当時子供だった僕でも同慶の至りであり、自分自身、ませた子供だったなあと認識させるに充分であった。
そんな感覚が所々撮影所風景で見られる。例えば恐らく名もない女優であったテッピィーにヒッチが気になる様子などとても面白く拝見する。また、スカーレット・ヨハンソンのジャネット・リーは、現代であれば美女はこうだという設定だと思うんですよね。だから似ていなくてもいいんだ。
ヒッチがラッシュで「サイコ」は駄作だなんて言っていたことも驚くと同時になかなか面白い。そしてサイコのあのシャワーシーンが、当初ヒッチが無音で映像だけで撮ろうとしていたというのも興味深い。
妻のアルマがシャワーシーンの、あの鋸切り音を持って来たというのは初めて知った。うーん、これは何ともスゴイ。それでは「サイコ」は編集のたまものであり、ヒッチの言うところの駄作から秀作に変身したというわけだったのだ。
この映画をヒッチ夫妻の物語にしちゃったのは、「サイコ」の裏話だけではこの映画は持たないと思ったんだろう。それこそこの映画に出て来るユニバーサル上層部と同じで、会社経営者と製作部門とは昔から水と油なんだろう。
いやあ、僕は熱烈なヒッチファンというわけでもないが、映画そのものを楽しめる面白い作品となっていると思いました。好きですよ、この映画。出演している俳優全員も何かしら余裕を感じました。
それこそこのヒッチ夫妻のホプキンスとミレンはまだまだ新鮮な演技を披露している。みんな映画愛を求めているんですよ。
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