結婚していた女が男と駆け落ちし男を捨てる。男は時間の経過を経て自分の寿命が短いことに気づいたとき、ふと逃げた女に会ってみたくなる。そして、、。
夫を捨ててからの女の人生はまさにどぶ水を飲んだすさんだ生活ぶりを呈している。あまりに悲惨なので、少々小説的かなあと思ってしまうほどである。
それでも男の朴訥とした話しぶりにがいかにも女の人生のすべてを受け止めているようで、舞台は和やかな静謐に満ちている。ここは二人の演技力を見せつけているところでもある。
男は余命いくばくもないのに舞台は常に女の語る話が主軸となる。あまりの非道さにひょっとしたら女は虚言壁でもあるのかなあとも思われたが、どうやらそうでもなさそうだった。
何故か、舞台の静かさと女の語る話のギャップが不思議と調和し、それもありなむとでも言いたげに、舞台は二人のいよいよ孤高の世界に辿り着いてゆく。美しい男と女の世界である。幽玄とでもいうべき世界である。
その1時間の詩情に観客は全員酔っている、、。秀作である。
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