主役が手垢のついていない俳優で新鮮である。けれどその他主要な脇役がオールドで、それはそれで演技的にも安心できるのだが、ストーリー的にも凡庸で少々盛り上がりに欠ける感がした。
10年ほど前、家老クラスの一人が濡れ衣を着て城を守ったという武士の美徳がこの話の礎なのだが、今回さらにその無念の死をもって殉じた息子を騙し殺戮しようとすることなかれ主義の藩首脳部のノー天気さは現代にもつながるところは確かにある。けれど、肝心の話に甘さがあるのが気になるのだ。
あまりにも当時のコンプライス感もない武士道を否定しつつ首脳部を騙す平のラストの展開は確かにグッとくるものもあるが、でもこんなことが露呈しては因幡藩はお取り潰しになるのではないか、とも思う。どうもスカッとしないのがこの映画の欠点のようにも思えてくる。
だいたいご公儀からの指南役をどういう理由にせよ殺してしまえばそれだけで徳川に反抗しているとみなされるのは必定。そんなことを城代家老が分からぬわけがないと思う。そしてその直接的な理由がただのへそくりだと言うのだから開いた口が塞がらない。
製作人の執拗な熱意は映像の隅々まで感じられた。国境まで追い詰め無駄な斬り合いをする哀しいシーン。全面雪景色のロケは美しく、太鼓の音の強さとともにこの映画のハイライトであろう。
最近珍しい時代劇で、2時間だれることのない映像は褒められて然るべきではある。
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