
アメリカでは有名な事件なんだろうが、日本ではあまり話題にされなかったイラク大量破壊兵器に関するCIAの内輪もめ事件の全容である。映像が簡潔でスピーデーな展開。まるで秀逸なサスペンス映画の典型のような演出ぶりだ。
内容はともかく(私的には話が分かるのにずいぶん時間がかかった。)、とにかくワクワクする切れのいい描写・映像で、この重いテーマをいかにエンターテインメントに昇華させるか、といった工夫が十分感じられた。
まさにコピー通り「イラク戦争を巡る謀略、権力に立ち向かうCIAエージェントの孤高なる戦い」なのである。CIAたることを隠してビジネスウーマンとして世界各国を闊歩する【ナオミ・ワッツ】。しかし都合が悪くなると国家が彼女の身分をマスコミに流してしまう漫画のような事実。
名前を明かされたために近所の主婦たち、タカ派のマスコミたちに精神的にも追い込まれる彼女の苦悩。これが後半の主なテーマなのだが、前半の彼女のCIAの活動ぶりがすこぶる小気味よかったので(さすが「ボーン」シリーズも撮ったことがある監督だ)僕には彼女に同情はすれど、彼女のCIA活動で犠牲になったイラク人協力者たちへの彼女の思いがあまりに冷淡であることに、何だか白けてしまったのも事実である。
身分が明かされてしまい生活自体がボロボロになったのも事実だが、彼女の政治活動で命を落とした人たちが実際いるのである。利用するだけ利用し、用無しになった暁には雑巾のようにポイ捨てする彼女もそういう冷酷な組織の一員だったのである。同志としての夫の存在も頼もしい彼女、全然犠牲者でも何でもないと思います。
と個人的な彼女への私見は置いといて、作品的には随分映画テクを駆使して立派、秀逸。何しろこういう間違った国家への指摘を堂々と映画作品にしちゃうアメリカはやはりすごいと思います。
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