まさに映画的な映画ですね。映画の持つ素材を極限にまで活用し自分の映画世界を構築しようとしている。そのテクはそれほど斬新でもない。しかし、こういう撮り方は最近なかったかなあ。その分かなり目立つ作品でもあり、映像的作家映画として野心作と言える秀作となった。
原っぱに呆けたように立ち尽くす老女から映画は始まる。不思議なことに微笑むことなく女はダンスをし始める。映像は変わり、薬草を裁断するその老女のしぐさを見せる。女の目線は路上で談笑する息子に注視する。下を見ていないで裁断する老女。指一つぐらい落としちゃうんじゃないか、と観客はひやひやする。そこに車が突っ込み息子が轢かれてしまう。その時女は一瞬裁断機に力を入れる。怖い。ホント怖い。これぞサスペンスだ。
すぐ息子に駆け寄る女。息子は何を思ったか車を追いかける。そして血が付いていることに気づく。自分が事故によって出た血なのか。しかし息子は気付く。これは母の血なのだ、と。
この映画には実にところどころ液体が不気味に描写される。先ほどの裁断機で出血した母親の血液。息子が立ち小便で流す液体。泥と雨を靴がぬぐう。ペットボトルが倒れて徐々に液体が広がり、眠っている男の指先に辿り着こうとする。男の指先が震える。すべて意味ありげである。そして、第二の殺人の体内から噴出する血液の流れの描写。被害者の女子高生から急に噴出する鼻血。
いたく映像的であり、いわんやむしろ思わせぶりでさえある。最近では実に珍しい映画だ。
自分が行った行為を忘れているのに、ふと過去に自分に降りかかった出来事を思い出す息子。まず友人が自分になすりつけたサイドミラー傷害の1件。そして20年以上前と思われる母親が自分を巻き込んだ心中事件。
母親は心中と言っているけれど、本当は自分を殺そうとしたのではないか、と無意識に疑っている息子。母親は実はこの事件が悪夢である。トラウマとなっている。だから、一つ布団で今でも息子と寝起きしている。近親相姦をも思わせる描写である。就寝の際、不思議なことに女子高生事件の後は息子はパンツ一枚で寝ていたのに、他の描写では衣服を身に着けている。この辺りも【ポン・ジュノ】のことだから何か意味があるのかもしれない。
母親の体内を流れる体液。特に胎児は羊水につかり体内で育てられ、出血を伴ってこの世に生れてくる。このように母親と子供は一心同体なのである。2個の人間ではあっても母親からすれば1個の人間なのである。だから子供を殺すことも女にとっては自分を殺すようなことと同じなのである(心中未遂)。だから、第二の殺人も子供を守るために殺したのでなく、一心同体である自分自身を守るために行った行為なのである。
主題からするとミステリーの味付けはしているものの嘘の真犯人を出現させたり、被害者が浮かばれないのではないかというヒューマン性からは逸脱しているが、いかにも【ポン・ジュノ】らしい映画である。(『殺人の追憶』と感覚的に似ているような、、)このちょっと思わせぶりなところがこの作家の好き嫌いを分ける分岐点なのかもしれない。でも、楽しい映画作風であります。
原っぱに呆けたように立ち尽くす老女から映画は始まる。不思議なことに微笑むことなく女はダンスをし始める。映像は変わり、薬草を裁断するその老女のしぐさを見せる。女の目線は路上で談笑する息子に注視する。下を見ていないで裁断する老女。指一つぐらい落としちゃうんじゃないか、と観客はひやひやする。そこに車が突っ込み息子が轢かれてしまう。その時女は一瞬裁断機に力を入れる。怖い。ホント怖い。これぞサスペンスだ。
すぐ息子に駆け寄る女。息子は何を思ったか車を追いかける。そして血が付いていることに気づく。自分が事故によって出た血なのか。しかし息子は気付く。これは母の血なのだ、と。
この映画には実にところどころ液体が不気味に描写される。先ほどの裁断機で出血した母親の血液。息子が立ち小便で流す液体。泥と雨を靴がぬぐう。ペットボトルが倒れて徐々に液体が広がり、眠っている男の指先に辿り着こうとする。男の指先が震える。すべて意味ありげである。そして、第二の殺人の体内から噴出する血液の流れの描写。被害者の女子高生から急に噴出する鼻血。
いたく映像的であり、いわんやむしろ思わせぶりでさえある。最近では実に珍しい映画だ。
自分が行った行為を忘れているのに、ふと過去に自分に降りかかった出来事を思い出す息子。まず友人が自分になすりつけたサイドミラー傷害の1件。そして20年以上前と思われる母親が自分を巻き込んだ心中事件。
母親は心中と言っているけれど、本当は自分を殺そうとしたのではないか、と無意識に疑っている息子。母親は実はこの事件が悪夢である。トラウマとなっている。だから、一つ布団で今でも息子と寝起きしている。近親相姦をも思わせる描写である。就寝の際、不思議なことに女子高生事件の後は息子はパンツ一枚で寝ていたのに、他の描写では衣服を身に着けている。この辺りも【ポン・ジュノ】のことだから何か意味があるのかもしれない。
母親の体内を流れる体液。特に胎児は羊水につかり体内で育てられ、出血を伴ってこの世に生れてくる。このように母親と子供は一心同体なのである。2個の人間ではあっても母親からすれば1個の人間なのである。だから子供を殺すことも女にとっては自分を殺すようなことと同じなのである(心中未遂)。だから、第二の殺人も子供を守るために殺したのでなく、一心同体である自分自身を守るために行った行為なのである。
主題からするとミステリーの味付けはしているものの嘘の真犯人を出現させたり、被害者が浮かばれないのではないかというヒューマン性からは逸脱しているが、いかにも【ポン・ジュノ】らしい映画である。(『殺人の追憶』と感覚的に似ているような、、)このちょっと思わせぶりなところがこの作家の好き嫌いを分ける分岐点なのかもしれない。でも、楽しい映画作風であります。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます