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劇団四季『この生命誰のもの』(作ブライアン・クラーク 演出浅利慶太)(於自由劇場) 85点

2013-01-25 13:40:05 | 演劇遍歴

ミュージカルで名高い劇団四季にも本流たるストレートプレイが存在する。そしてこれはそもそもテーマが硬質で人間の尊厳を問う愛と死の物語である。観客数も少ないのではないか、と思っていた。ところが平日の昼間。ほぼ満席である。

2時間、主人公はベッドに括り付けられたかのようにずっと寝かされている。観客は2時間それを見続けていることになる。しかし鍛えられた抑揚のあるセリフ捌き、内面からほとばしる心の叫び、彼を見守る周囲の病院関係者、そして訴訟関係者。見事な演劇だ。

彼らのこの上ない無駄のない完ぺきな演技と演出に僕は驚いてしまう。普段小演劇を見てセリフのトチリも良しとする性向に慣れている僕は、はっと固まってしまうのだった。劇の上に立っている俳優陣は完ぺきの演技を要求され見事それに応えている。動きの一つ一つまで完ぺきな演技なのだ。

劇団四季の出演者にとってそれは(完ぺきであることは)当り前のことなのだろう。でもこの演技を大きな舞台で演じるということは血のにじむような努力を毎日なさったに違いない。それが分かるだけにびしびし観客に跳ね返る見応えのある舞台であった。

そのまま人間の人間たる尊厳を選ぶがために主人公が病院を去るのかなあと思っていたら、見事うっちゃられた。素晴らしいラストが僕らの前に待ち構えていていい意味で裏切らすこぶる感動をもらった。まさに最後に人間賛歌を持って来て、いつまでも心に残る演劇となった。超秀作。

 


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