これはすごいわ。書き込みにとてつもなく力があり入魂の文章。無駄が全くない。半端じゃない。一字一字から横山の信念がふつふつと伝わってくる。
警察の、換言すれば官僚同志そして官僚と記者とのエネルギーのぶつけ合い、なすりつけ、消耗合戦に、途中ではもはや読む気にもなれない時もあったほどで、官僚たる彼らは日本を背負っているのに、ただ単に我らの税金をむさぼっているだけではないのか、とも思えたが、そんな批判精神をよそに字間から伝わる人間の熱気に魅入ってしまう。
広報官としての責務の目覚め、ブン屋たちと心を割って話し込むくだりは珍しく涙が流れてしまった。映画・演劇では号泣はよくあることだが、僕は小説で泣いてしまうことは珍しく、確か10年ぶりぐらいではなかったか、と思う。
ラストの100ページは伏線も立派、ミステリーとしても格段秀逸でここ10年に一冊と言っていいほどの完成度を保っている。横山にしてももはやこれ以上の作品を書くことは今後ないのではないだろうかと思わせるほどの出来である。
単行本で640ページ(これもロクヨン)。全頁渾身の文章。脱帽。