冷凍うさぎ「ロックンロール」（作・演出 森岡拓磨）（於・オーバル） 85点

この劇団は今回で3回目だ。最初が「We are~」で度肝を抜かれた。一気に突き抜ける躍動感とそのあとの残滓の様相の見事さ。練間の一人舞台とでもいうべき膨大なセリフ。とにかくすごかった。僕が演劇を加速度をつけて見始めたのはこの作品からだった。

そして力作だが意外とまとまりすぎた「ペチカとエトランジェ」を経てこの作品である。

この作品はまさしく森岡拓磨の脳裏をそのまま語っていますね。オーバルのあの変則的な席の配置もどの位置からも森岡の脳内を見てくれと言わんばかりである。ひょっとしたら森岡は見られたい妄想が強いのか、もしくは露出狂かもしれません。

劇の方は一人の女性から見た様々な人間をのたまわせている。けれどそれらは当然ながらどこまでが真実で、どこまでが虚構か分からないのである。イマージネーションの連続そのものがこの劇の神髄である。すなわち私たちの脳と同一だ。

面白い。実にいい。好きだなあ、こんな演劇を見たかったのだと僕はほざく。

俳優陣も、実にみんな森岡を意識して、彼の意識像を強弱付けて、連ねてゆく。そう、この演劇は私小説ならぬ私演劇なのである。僕たちは森岡の脳裏を、内面から外面から徘徊しつつナメクジのようになめつくす。でもその感触のいかに自分と近いことよ。

いよよ、やっと森岡は会心の作品を作ったのではなかったか。自分自身と演劇をこれほど対等に感じられる作品も稀有である。実に快感と不快が交互にどくろを巻いております。これぞ秀作。