死神の浮力 （伊坂 幸太郎著）（2013 文藝春秋） 90点

「死神の精度」が素晴らしく、早く続編が出ないかなあと思っていた。そして首を長くして待った甲斐があった。本作は何と、ちょ・長編なんだ。これはファンにとってはとてもうれしいプレゼントであります。とにかく長くじっくり読めるし、短編集とは違う香りが楽しめる、、。

やはり短編と長編とではこんなにも違うんだなあというのがまず感想。当り前のことを身を持って感じた次第。恐らく書く姿勢から始まってすべて違うんだろう、小説の基本をしっかり感じ取りました。

結論からいうと、千葉の仕事からしてやはりこの話は短編に適していると思う。印象度が全く違う。しかも「精度」のほうは終わりにまた時を隔てたリフレインがとてもよかった。

当り前だが今回は一つの話だけ。今回のミッションの対象は超悪人で読むのにほとほと憎しみが湧き起こり疲れて来る。だから一気読みはしなかった。

でも長編でも千葉の相変わらずのアイロニーも素晴らしく、やはり伊坂は一つ突き抜けたね。いい作家だ。

今回は美人女性の同僚も出現したり、超悪人の始末方法もなかなかのもので最後まで楽しめた。１ページ繰るのがもったいないと思える書物はそうそうあるまい。秀作である。

ところで、次作はまた短編でお願いできないものでしょうか。いやいや、死神シリーズであれば何でもいいです。とにかく早く読みたいです。