多人数の劇。そのほとんどが養鶏場の鶏の役である。環境はものすごくいいが、当然卵を産まなくなったら、廃棄させられる運命。でも彼らは日常を生きている。しかし、1人の異分子が紛れ込んだことから、彼らはおのずと自分自身のことに入らざるを得なくなる、。
もう設定から分かりやすい演劇である。鶏の世界から人間を見るという少々罪の意識にさい悩まされる倒錯的な設定である。ニワトリだって生きているんだ。卵を産まなくなって、何も人間どもに食べられるために生きているのではない。
これは閉塞感の感じられる若者の現代状況を暗示しているのだろう。ある日、一羽のニワトリは空に向かって、飛び立ってゆき、この養鶏場から脱出することに成功する。そこで舞台は終わるのだが、さてそれから彼らはどう生きるのだろうか、、。
そしてふとこの現代の日常に観客たる我々一人一人が戻るわけである。
あの狭いカナリヤ条約の劇場を最大限に生かした舞台と、そして勾配の高い観客席。スタッフの努力が窺われる。
あまり見慣れない俳優も多かったが、セリフ回しはみんな立派だった。練習量が十分なんだろう。一人一人が個性的で、見ているだけで楽しかった。
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