ある山里にゾンビ映画の撮影隊が駐留する。村にあるのは大木と川とそして人の心。たまたま映画のエキストラに参加することになってしまったことにより村人と撮影隊との今や都会では消滅した心の交流が始まって行く、、。
あらすじと言えばそれだけなんだが、2時間強、映画を持続させる息吹は確かだ。そこには人の呼吸がある。自然の恵みと暖かさがある。何より人として生きてゆく確かな歩みがある。
一本の木が目の前にある。それは100年を超えている。それを考えれば人間の歩みの何とのろいことか。じっくり構えればいいのである。目先のことよりこの大自然に埋もれ、木々のうごめき、声を聴き一日を過ごせばいいのである。
ちょっとした8・1/2でもあるんですね。撮影の途中で逃げ出そうとする情けない監督ですが、産みの苦しみを味わうのは作家たるもの、作品の出来如何にかかわらず一緒だ。
監督が、ずぶの素人から映画の助力を得、どんどんたくましくなっていく様子が素晴らしくいいですね。ふたりの、シンメトリータッチの浴場シーンや、車の中で初めて映画を語るシーンが今でも印象に残りますね。全体のタッチもいいけれど、シーンごとの間が特に秀逸。俄然観客を映像に引き寄せてくれます。
ちょいシーンだけれど、【山崎努】のどんどん本物の演技を発するまでのあの過程は面白い。映画全体の中でも秀逸。
でも役所広司という役者はすごいですね。どんな役でも素になることができる。臭さがない。男優で例えば名優【ロバート・デ・ニーロ】なんかも最近は臭うようになってきてからちょっと魅力がなくなってきましたからね。スゴイです。
自然と人とのつながり、それを通して人間同志の関係性を構築していくと言ったごく素朴でありきたりのテーマなんですが、映画自体のみずみずしさと相まって素晴らしい訴求力を持つ作品だと思います。日本映画の今年の収穫の一つです。
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