冒頭ノリオが登場する。若くはない。いや、もうすでに老人である。そこに同じく老人たちが一人一人訪ねてくる、、。ノリオが殺人を犯したのが19歳の時だから、それから数十年経っているのか、と分かってくる、、。
このように面白い設定で、彼の死刑寸前の懊悩状況からこの劇は始まる。
脚本、演出もウイングフィールドという小さな劇場を十分に意識し、これ以上ない出来の劇である。演劇的には本当に素晴らしい出来で、目を見張る思いである。
しかし、僕は昔から、この永山という男が信じられない。
貧困が犯罪を誘引するのなら、当時の多数の貧困者が犯罪を犯してしかるべきだろう。だいたい4人も殺しておいて、(そもそも殺す必要があったのかどうか、換言すればこの秀逸な舞台を観ても、何故ノリオが彼らを殺戮したのかいまだかって分からない。)それに対して贖罪の気持ちのかけらも見いだせないのだ。
とはいえ、演劇的には傑出した深さを持っている。ただ僕は、犯罪を犯した当時の19歳の青年に、女優を配したのがちょっと解せない。やはり男優の方がよかったのではないかと思っている。何故殺戮したのかという問いには、ストレートに男優を配しなければその問いには答えられないと思うからである。
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