興業的には難しいクラシックを題材にした作品である。しかも声楽なので勇気が要ったと思う。冒頭から堂々たるオペラシーン。全体的にお金を十分かけており、その意気込みと勇気は映像の隅々にまで及んでいる。製作者にまず拍手を送りたい。
ユ・ジテもオペラ歌手になり切っている。こんなに鋼鉄を感じる俳優だったか、若い時から見ているが随分と役者的に大きくなった気がする。彼ももう39歳なんだ。外国の役者って、一流人は何にでも挑戦し立派だね。
対する伊勢谷友介。ユ・ジテを前に、互角勝負とまではいかないけれどよくやったと思う。音楽、国境を越えた人間と人間との絆というものをしっかりと見せてくれた。北乃きいもさすがいい味わいを出していた。演技力のある女優です。
この映画から僕たちが学ぶところは多い。
天性の声量からアジアを飛び越えヨーロッパに君臨しようとしたベー・チェチョル。彼でさえその時本当にハートから発声していたわけではなかった。自分自身に声をなくすという悲劇が襲ってはじめて彼は歌を歌うことの意味を思い知る。
この話は誰の人生にも降りかかることである。挫折を経験しない人はいないであろう。逆境の時にその人を助ける人、逃避する人。それもそのひとの人生なのだが、絆を持てるということはとてつもなく大切なことだ。
ラストは近くに人がいなければ号泣していただろう。それほど僕にとっては強い感動を与えてくれた作品となった。ユ・ジテにますます大きくなる素質を見たことと、逆境に陥っても人に救いを差し伸べる気持ちをいつの時も持てるように思えたこと。素晴らしい映画であった。
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