ホロライブを運営するカバー社の手掛ける新プロジェクトとして、esportsなどを扱う新ブランドの「ホリゾンタル」、そして音楽アーティストグループとして「ReGLOSS」を発足させる・・・というニュースに関して、男性ライバーとの絡みを気にした書き込みやら、既存のホロライブとは毛色が違う(確かに冒頭の火威青などは明らかに今までいなかったタイプのライバーだ)だのといった批判的な書き込みが散見されたが、よく見るとbad評価も多いので、まあノイジーマイノリティーのそれなのかもしれない(書き手がファンの中の杞憂民か、はたまたファンに見せかけたアンチかはともかく)。今回はそれについて少し書いてみたい。
単刀直入に言えば、すでにレッドオーシャン化しつつあるVtuber界と、登録者数ではトップを走るホロライブの現状を考えれば、この拡大戦略自体は当然のことと言える(ホリゾンタルは、にじさんじに比べて箱レベルでのゲームの企画力や広がりが弱い部分を補う意図もあると思われるが)。そもそも、にじさんじを運営するANYCOLOR(旧いちから)はとにかく様々なタイプのライバーを男女関係なくデビューさせるドミナント戦略を取っているが、それに比べホロライブは女性ライバー中心で異性とのコラボに積極的でないといった方向性を取っており、一定層には強いが、反面ファンのレンジが狭いという弱点を抱えている(なお、これははっきり書いておくが、異性ライバーとのコラボに拒否反応を示すコメントはしばしばモラハラ・毒親的な他者をコントロールしようとする人間たちのそれと類似しており、なるほど世の中でそういう現象が広く起こるのは当然だなと思わされる)。
今まではそれでも増え続けていたから良かったが、すでに業界は成長限界が見え始めており、このままいけば似た方向性の新人をどれだけデビューさせても既存ライバーとパイを食い合うだけで停滞・先細りする未来がすでに見えてしまっている。
ならば、最大登録者数を抱えるというブランドイメージと(=採用などでも優秀な人材を集めやすいしスポンサーがつきやすい)、さらに上場を果たして資金を動かしやすいこのタイミングで、他方面に打って出る=ドミナント戦略に舵を切るのは当然であって、むしろやらない理由がないとさえ言える。
まあ既存の方向性が好きで見ている人にとっては変化=不安・悪と映るのかもしれないが、だからこそわざわざ新プロジェクトは「別枠」を設けるという措置をしたわけで、そこを考慮せずに否定から入るのは余りに狭量なエゴイズムと言えるのではないだろうか。
まあ少なくともEN3期のフワモコ(双子のライバー)とかを見る限り、「アイドル的要素を持った愛される芸人」とでも言うべきタレント発掘の戦略は相変わらずキレッキレであり、全く心配する必要はないように見える(双子+古のオタク文化に詳しい+外国人+小動物のようなキャラクター性を持っているとか、属性モリモリ過ぎてよくこんなん見つけたなと素直に感心したw)。
だから今の状況を喩えて言うならこんな感じだ。自分の行きつけのラーメン店が順調に拡大しており、これから別で寿司屋を出店するらしい。だけど、寿司は嫌いなんだよな・・・って状況。それなら無理に寿司屋へ行く必要はないわけで、引き続きラーメン(だけ)を楽しめばいいし、寿司屋のことをとりわけ否定的に捉えて発信することは、自分にとっても他人にとってもマイナスしかないので止めた方が賢明じゃない?てこと。まあ性急に評価せず、お手並み拝見といこうじゃありませんか、て話である(あ、ちなみにそれで万一にもラーメンの質が下がるようなら、俺はそのラーメン店に行くことをすぐに止め、別のとこに乗り換えますw代わりはいくらでもあるんでね)。
以上。
【もう少し掘り下げた話として】
ホロライブがドミナント戦略に乗り出した理由は様々あると予測されるが、ここではその一つをあげてみたい(あるいは想定はしていないかもしれないが、結果的として中長期的に成長へ繋がる要素とでも考えてもらえれば)。
これまでの戦略的に、ホロライブはにじさんじに比べ相対的にマルチタレント化せざるをえない環境だった(その代表格は星街すいせいだろう)。これは一人が処理できる合理的な範囲で仕事が増えるうちはいいが、今では「強制的に休ませてでもライバーをサステナブルに活動させる」という対応を取らざるをえないほどオーバーワークの状態になっており、言い換えれば仕事のチャンスをそれだけ失い続けているとも言える。となれば、様々な強みを持ったグループを複数作って分業した方が、個々人の負担減はもちろん、ビジネスチャンスを逃すことも減るというわけだ。
これは目先の利益を追っているだけに思えるかもしれないが、実は結構長期的で深刻な問題につながっている。例えば、ホロライブ所属ライバーの平均年齢が概ね20代後半から30代前半と仮定すると、今のハードワークぶりが続けば5年はともかく、10~20年先は危うい。そもそも40代になると急速に体調を崩しやすくなる&声の維持が難しいという現実的な問題がある一方、配信という形で娯楽を提供し、かつ高い頻度で継続的にそれを続けなければすぐに他のコンテンツに埋もれてしまう状況を踏まえると、年齢に合わせて多少は調整をかけていくにしても、極端に活動時間を減らすことは難しいからだ(まだ若い業界なので、セカンドキャリアの道筋などが出来上がっていないといった事情もあるだろうが)。
となれば、ライバーたちは現在の配信スタイル維持が難しくなり、こぞって10~15年後には卒業するという状況になった時、新しいライバー発掘の大変さや予測困難さはもちろん、既存のファンがどんどん離れるリスクが当然考慮される(箱推しでない限り、代替となる娯楽はいくらでもあるのだから)。要するにそれは、安定的成長が見込めないことを意味するわけで、上場企業が提示する成長戦略としてはいかにも心許ない(とすれば株主たちを納得させるのは難しい)と言えるのではないか・・・そのような意味においても、一種の「多チャンネル化」による分業化・負担減は、長い目で見て重要な施策であるように思う(前にも書いたが、すでに業務量はオーバーフローしているので、分業化でオファーされる案件などの総量が減ったとしても、多くのライバーにとってはむしろ適量になるだけで、大きく利益を損なうことになるとは考えにくい)。
その他にも、Vtuberのネックの一つになっているYou Tubeというプラットフォームへの依存度を減らすための他のメディアへの進出(例として凋落著しいが現状まだ利用価値が残っているテレビ)なども、やはりもっと企業体力をつけていかないと厳しいが、そこも歌番組に関して言えば星街すいせいが孤軍奮闘するのではなく、そこで切り開いた道を新グループが整備・拡張していくといったことなども挙げられるだろう。
以上。
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