TAGRO『マフィアとルアー』の感想

2007-01-27 12:07:28 | 本関係
前に紹介した『マフィアとルアー』についての感想を簡単に書いておく。というか、この作品の特徴の一つは印象的な言葉にあるので、それらを列挙することにしよう。


<モノレエル>…趣味でカメラを撮っている男の話
自分の人生に是非をつけれる人間がいるか?そんなものは死ぬまでわからないし 死んだ後はどうでもいいことだ。皆があやふやに生きている―死以外に何一つ決定的なもののない人生を。だが作品には是非がある。決定的に存在し続けられる。それを求める事を俺は躊躇いたくないのだ。

(感想)
人生観については全く同感。ついでに言っておけば、「終わった後に始めてその全体像を定めることができるもの」としてはこのブログもそうだと思っている。これからどんな記事が増えていくかわからない。そして増えた記事の内容によって、すでに書かれた記事の位置づけ・意味づけも変化せざるをえない。だから、確かに現段階でも全体の特徴などについて論じるは可能だが、変化し続けている以上それほど生産的とは思わない(ちなみに、今までの記事内容をこれから書くことにに生かす、というのは全く別の話だ)。このブログが活動を停止した時、始めてその全体像を論じる契機が生まれるだろう。


<R.P.E>…小さな出版会社に勤める男の話。
「オレ君をバカにしてるんだって!正直言って君との待ち合わせなんて忘れてたし。さっき話した女にフラれてそれで…おあつらえ向きの女がいるじゃんってそれで来たんだぜ?」
「そんな女にもこんなまどろっこしい言い方したんですか。自分のことをダメだダメだって言って気を引こうとしたんですか?」(中略)
「…いや…ダメだ…最悪…あっでもこれは気を引いてるんじゃないからな。へ…そーゆーわけでさ。今回はご縁がなかったということにしましょうや。あ~も~なんだっこりゃ?ホントオレって痛がるの得意な!痛がっているだけなんだけどさっ。ココロが痛いなんてウソっぽいよなぁ。パンチの一発ももらえばきっとブルって泣いて謝るくせにさ。」

(感想)
自己憐憫の言葉の数々から受ける不快感は、次の衝撃的なシーンによって反転する。特に俺は自己憐憫というものが死ぬほど嫌いなので、その反転で強いカタルシスを得ることができた。


<Livewill>…自殺願望のある女とその彼氏の話
「遅かったね。帰ってきたら死んでればいいなと思ったでしょ。だから遅く帰ってきたんでしょ。あたしはあんたにとってあの魚と同じ。釣り上げてほおっておいて、死んだら埋めるだけ…」

(感想)
それまで彼氏は、無気力というか冷めた人間として描かれているのだが、それだけにこの後に来る感情の爆発が強く印象に残る。


以上の三つだけでも、この本の特徴や魅力は十分に伝わると思う。あとは、こういった言葉の鋭さとそぐわないかわいい絵が、プラスに作用するかマイナスに作用するかで大きく評価は変わってくるだろう。そして俺の場合後者だったわけだ(絵が乖離していればしているほど、言葉が浮き上がってくるような感じ)。まあ好き嫌いは結構出ると思うが、一度読むことを勧めたい本である。


※あとは、とりあえず「DRUG SCORE」のイっちゃった姉ちゃんがエロかわいすぎってのは特に書いておく価値があるだろう(特にろれつが回ってない感じがよひ)。

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