年の終わりにあたって

2005-12-31 19:22:34 | レビュー系
仕事を終える気持ちで、最近読んだ本の感想を書きつくしておこうと思う。酔いどれているので、手短にしよう。

『新注 鏡の国のアリス』
チェスのルールを知らないため『不思議の国のアリス』ほどは楽しめなかった。だから、安易に批判はしたくない。とりあえず注のおかげでかなり助かった。

『アンの青春』
 『赤毛のアン』の続編。学校の先生をしながら引き取った双子の世話などもするアンの話である。教育方針などはちょっと理想主義的すぎる気がしたけど、同僚のジェーンとの意見の食い違いや理想の挫折という描写によって相対化してるので、「そういう考え方もあるね」という風に受け流せたように思う。
 また風景描写は相変わらずすばらしい。それほど自分は空想家ではないと思うが、それでも家や庭園、自然の描写は思わずアンの横で景色に見とれているような錯覚を覚えさせる。おそらくこれが、アンの年齢が変わっても「アン・ワールド」の魅力が褪せない理由の一つだろう。

『パレアナの青春』
途中まで面白かったが、パレアナが成人してからは微妙。そもそも「喜びのゲーム」が無邪気にできるものでないということは、前作でのパレアナの事故にまつわるエピソードでしっかりと示されており、それについて改めて書いても蛇足という印象を受けるのだ。せっかく成人させるなら、もう少し綿密な描写がほしかった。

『ベロニカは死ぬことにした』
 紹介文を見て単なる感動モノかと思って敬遠していたのだが、読んでみると非常に面白かった。医療的な部分は知識がないので置いておくとして、「狂気」というものに正面から取り組み、曲がりなりにも解決策を模索しているのは好感が持てた。そして重要なことは、その際の視点が「狂気」の側に置かれているというということ。もしこれが外部から見た話であったなら、どこまで行っても「矯正」という観念が付きまとったことだろう。
 宗教的な話もけっこう出てくるので眉をひそめる読者がいるかもしれないが、そこには唯物史観による宗教を排した考え方の限界や、俗世間から隔絶していることで「我々こそ真理に近い」とうそぶくグループへの鋭い批判が含まれていることを念頭に置くべき。
 また、「普通という基準による有形無形の抑圧こそが『狂気』の源泉なのだ」という主張はまことに含蓄があり、私にとっても非常に納得できるものだった。もちろん、器質性の「狂気」が数多く存在し、精神医学そのものが未知の領域の入口付近で穴を広げている段階(しかもそれは失敗することが少なくない)であるという認識に基づいた上でこの言葉を受け取らねばならないのだが。


結局長くなってしまった。この部分は変えようがないのかもしれない(苦笑)とりあえず、この長さで書くだけの価値がある本ということだけでもわかってもらえたら、それに勝る喜びはない。

アン達があなたの人生をよりよきものにすることを祈って。

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