長い時間をかけてYU-NOのエンディング批評を書いてきたが、そこでは主人公の一貫性が大きな問題となった。今回は、そのような一貫性という視点(問題意識)で「君が望む永遠」(以下「君望」)を批判的に見ていきたい。おそらく長文になることが予想されるので二つに記事を分けるが、今回のものは「君が望む永遠:サブキャラシナリオの害悪」とある程度共通する内容となっている。また、「君が望む永遠~Latest Edition~」は未プレイ、かつ「君が望む永遠~Next Season~」も未見であることを断っておく。
(登場人物)
D=ダンコフ T=テリー
D
この前の記事では「なぜ問題の多いサブキャラシナリオが採用されたのか?」という疑問に対する答えが曖昧なままだったんで、今回はそこから論じていくことにしようか。
T
そうさねえ、「選ぶ快楽から選ぶ苦痛へ」で書いた内容が的を射てるなら、君望は通常の恋愛ADVとは違う特徴を持っているわけだが、そうすると選択肢を増やす、あるいはメインの展開に耐えられない人に「逃げ道」を作る、という目的があるんじゃないかねえ。
D
なるほど、サブキャラシナリオが逃避先であるのは、必ずしも孝之だけではない、ということか。しかしまあシナリオの出来とプレイヤーたちの反応を見る限り、失敗だったんじゃない?
T
どうだろう。製作者の側に立って考えるなら、あれだけシナリオや演技、心理描写に力を入れたことが「重さ」となって逆にプレイヤーを敬遠させてしまうことを恐れたのかもしれんね。今でこそ評価が定着しているけど、発売時はそういうところにも気を遣わなければならなかっただろうし。だから、繰り返しになるけどサブキャラシナリオは(孝之だけでなく)プレイヤーにとっての「逃げ道」として作られたんだと思うよ。
D
そういう事情はわからんでもないけどさ、あのシナリオのひどさはちょっとね…そこでの行動があまりに支離滅裂なんで、鳴海孝之の人物像がとらえにくくなり、結果として鳴海孝之の、いや君望全体の評価を大きく下げてしまっていると思うのよね。
T
そうだねえ。展開に必然性がないことは明白だし、そこでの行動が孝之への苛立ちや不信感を倍加させているのは確かだろうね。ただ、サブキャラシナリオに関しては絶対に忘れちゃいけないことが一つだけある。
D
あくまで本筋じゃないってこと?
T
それとも関係するけど、「選んだのはプレイヤー自身」だってことさ。
D
何でそれが大事なのよ?別に攻略対象を選択することなんて恋愛ADVじゃ普通のことじゃん。
T
そうだね。普通ならそれで済むはずさ。でもね、かつて「選択肢に込められた主張」って記事書いたの覚えているかな?あるいは第一章で遥の告白に際して選択肢が存在していない理由について考えたりした?「選ぶ苦痛」ってのもそうだけど、君望に関しては選択肢の有無についてもちゃんと考えなきゃいかんよ。
D
確かそこでは「選択肢がないのは孝之にとってそうするしかないからだ」とかいう話になったんだと思うけど、それならそれで選択肢の存在は他のヤツを選びうる可能性が孝之にはあることを示すわけだから、やっぱり孝之の行動が意味不明ってのには変わりないんじゃない?
T
うん、そうだね。
D
だったら、プレイヤーが選んだことを問題にする必要はないじゃん。
T
あーちゃうちゃう。俺が肯定したのは、「(メインヒロイン以外を選ぶ)選択肢が存在することそのものがおかしい」って批判ね。孝之が本当に「遥と水月のどっちを選ぶか」で悩んでいるなら、あるいはそこに話を絞り込みたいなら、選択肢を設けることそのものがおかしい(誤解を招く)って批判するなら、全くのところ妥当だと思うよ。まあもっとも、一周目ではサブキャラのシナリオを選べない、っていう演出というか縛りがあることを考慮する必要もあると思うけどな。
D
話がよくわからないんだけど。
T
サブキャラシナリオに行くかどうかを選ぶ時点でメインシナリオを一回終えているわけだから、メインシナリオ、あるいはメインキャラたちがどんな状況にあるかをプレイヤーは把握しているわけだよね。
D
まあそうだね。
T
なのに何でサブキャラを選ぶわけよ?
D
は?
T
メインシナリオで遥や水月が孝之をどれほど必要としているかは明らかになっているわけだよね?なのになんでそれを裏切るような選択をするわけ?
D
いやまあ前とは違う展開を見てみたかったとかそんな理由じゃないかと…ってゆうか別にゲームなんだし選んでみるくらいえーやんw攻略のためにやっていくこともあるわけだしさ。
T
そう、多分そういう軽はずみな気持ちで、もしくは攻略のために選んでいるわけよね。さて、じゃあ話を戻すけどさ、何でサブキャラシナリオって問題なんだっけ?
D
だから内容だけでなく孝之の行動が支離滅裂なんで、それが孝之の人物像を見えにくくし、その結果君望全体の評価を下げるから、だろ。
T
「支離滅裂」って例えばどうゆうの?
D
あれだけ遥のことを気遣ってたのに面と向かって「あの子(=まゆ)は重荷にならない」とか言い放ったり、蛍の意味不明な誘いに乗ってラブホに行ったり、○○った(自主規制)口を穂村に吸いださせたり(このへん記憶が完璧じゃないが)といくらでも例は挙げれるぜ。
T
後の二つってそうしたのは誰だ?
D
ハァ?孝之に決まってんじゃん。
T
じゃ聞き方変えようか。その展開は強制的なものですかね?それとも選べたんですかね?
D
そりゃ両方とも選べるわな。こんなのが強制だったら終わってるよw
T
選んだのは誰?
D
そりゃプレイヤーでしょ。
T
そうだよ。「ありえない」と思うような選択肢を選んだのはプレイヤー自身なのさ。だったら、ありえない選択の後にありえない展開が待ってるのは必然じゃないの?まさかとは思うけど、穂村に汚物のついた口を彼女の口で綺麗にまでさせといて、さあそれは忘れて遥や水月のことを考えよう、なんて展開になると思ったのかね?だとしたらはっきり言ってやるけどそいつは頭がオカシイよ。だって自分でオカシイと思ったことを選択したのにオカシな方向に話が進まないって考えてるんだもの。ちなみに言っておくと、孝之のそういう突飛な行動をおかしいと思わないならサブキャラシナリオの批判は成立しないし、逆におかしいと思うならその選択を自分自身が選んだって事実をちゃんと考えるべきじゃないのかね?
D
回りくどくてよくわからんのだけど…
T
サブキャラシナリオにおける孝之の行動が支離滅裂だって言うけど、そういう行動を選んだのはプレイヤー自身で、レビューとかではそういう「共犯関係」が不思議に思えるくらいに綺麗さっぱり忘れられているのはどうしたことだろうね?って言ってるのさ。
D
そりゃ各々のシナリオがある以上きちんとした展開とか必然性を求めるからじゃん?
T
今回はメインテーマじゃないけどさ、何で孝之って「ヘタレ」って言われるんだろうね?
D
遥か水月か選ぶ決断力がなくてうじうじと悩んでいるからじゃないの?
T
てゆうことは、どちらかをきっちり選ぶことが「正しい」って認識しているんだよね?とするなら、それと相反するような選択をすれば、話がおかしな方向に行くことぐらい薄々わかってんじゃねーの?だったら、サブキャラシナリオに疑いも無く必然性を求めること自体がそもそもおかしい。「孝之=ヘタレ」の認識と矛盾しているよ(そこから逃げることを自分で選んでいるのに、選べない孝之をヘタレと言ってるんだからね)。あと念のため言っておくけど、蛍シナリオ以外は全てのサブキャラシナリオがバッド扱いになっているから、製作者側がメインシナリオをあるべきものでサブキャラのそれを本筋から逸脱したもの(こういうのもアリだろ、というようなマルチエンドの一つではない)としてきちんと演出していることも考慮に入れるべきだね。
D
要するに、批判が一方的だと?
T
というか身勝手だよね。まあそんなんだから君望のレビュワーが時々書く「共感」とか「感情移入」とか全く信用しないわけだけど。お前らそう言うけど、それってオカシイと思いながら、どうせやり直しはできるんだしとサブキャラを選べる程度のものでしょ?それのどこが孝之の(罪悪感や責任感を含めた)想いに寄り添っているんだろうねえ、ってね。何でこうも「わかっていないことがわかってない」のか不思議でしょうがないよ。
D
まあその話題は次回やるとしてさ…そろそろまとめようぜ。
T
そうだな。
サブキャラシナリオは内容的に非常に問題が多いのは否定できない事実。ただし、プレイヤーが共犯関係にあること、蛍や穂村シナリオのように異常な選択肢を入れることでプレイヤーへの(おそらく)忠告を行っていること、エンディングは基本的に全てバッドエンドにしてあること、なども含めれば単純に否定できるものではない。ただ、そういった意図がプレイヤーに伝わりにくい構造になっているので、あゆ・まゆシナリオはなくし、穂村・星乃の懲罰的エンドと「望まぬ死」という重要な要素を含む蛍シナリオのみにする、というのが俺の提示する代案。まあこれは前に言ったことの繰り返しだけどね。
D
とすると、追加するよりはむしろ削る方が大事なわけね。
T
そうそう。だから、買ったはいいけどLatest Editionは進まないわけど…w
D
あーね。で、次回は「感情移入」の問題だよね?
T
むしろ「孝之の受容の仕方」と言うべきかな。「サバイバーズ・ギルト」「ベタな受容」「マリー=アントワネット」あたりをキーワードに進めていくことにしましょ。
(登場人物)
D=ダンコフ T=テリー
D
この前の記事では「なぜ問題の多いサブキャラシナリオが採用されたのか?」という疑問に対する答えが曖昧なままだったんで、今回はそこから論じていくことにしようか。
T
そうさねえ、「選ぶ快楽から選ぶ苦痛へ」で書いた内容が的を射てるなら、君望は通常の恋愛ADVとは違う特徴を持っているわけだが、そうすると選択肢を増やす、あるいはメインの展開に耐えられない人に「逃げ道」を作る、という目的があるんじゃないかねえ。
D
なるほど、サブキャラシナリオが逃避先であるのは、必ずしも孝之だけではない、ということか。しかしまあシナリオの出来とプレイヤーたちの反応を見る限り、失敗だったんじゃない?
T
どうだろう。製作者の側に立って考えるなら、あれだけシナリオや演技、心理描写に力を入れたことが「重さ」となって逆にプレイヤーを敬遠させてしまうことを恐れたのかもしれんね。今でこそ評価が定着しているけど、発売時はそういうところにも気を遣わなければならなかっただろうし。だから、繰り返しになるけどサブキャラシナリオは(孝之だけでなく)プレイヤーにとっての「逃げ道」として作られたんだと思うよ。
D
そういう事情はわからんでもないけどさ、あのシナリオのひどさはちょっとね…そこでの行動があまりに支離滅裂なんで、鳴海孝之の人物像がとらえにくくなり、結果として鳴海孝之の、いや君望全体の評価を大きく下げてしまっていると思うのよね。
T
そうだねえ。展開に必然性がないことは明白だし、そこでの行動が孝之への苛立ちや不信感を倍加させているのは確かだろうね。ただ、サブキャラシナリオに関しては絶対に忘れちゃいけないことが一つだけある。
D
あくまで本筋じゃないってこと?
T
それとも関係するけど、「選んだのはプレイヤー自身」だってことさ。
D
何でそれが大事なのよ?別に攻略対象を選択することなんて恋愛ADVじゃ普通のことじゃん。
T
そうだね。普通ならそれで済むはずさ。でもね、かつて「選択肢に込められた主張」って記事書いたの覚えているかな?あるいは第一章で遥の告白に際して選択肢が存在していない理由について考えたりした?「選ぶ苦痛」ってのもそうだけど、君望に関しては選択肢の有無についてもちゃんと考えなきゃいかんよ。
D
確かそこでは「選択肢がないのは孝之にとってそうするしかないからだ」とかいう話になったんだと思うけど、それならそれで選択肢の存在は他のヤツを選びうる可能性が孝之にはあることを示すわけだから、やっぱり孝之の行動が意味不明ってのには変わりないんじゃない?
T
うん、そうだね。
D
だったら、プレイヤーが選んだことを問題にする必要はないじゃん。
T
あーちゃうちゃう。俺が肯定したのは、「(メインヒロイン以外を選ぶ)選択肢が存在することそのものがおかしい」って批判ね。孝之が本当に「遥と水月のどっちを選ぶか」で悩んでいるなら、あるいはそこに話を絞り込みたいなら、選択肢を設けることそのものがおかしい(誤解を招く)って批判するなら、全くのところ妥当だと思うよ。まあもっとも、一周目ではサブキャラのシナリオを選べない、っていう演出というか縛りがあることを考慮する必要もあると思うけどな。
D
話がよくわからないんだけど。
T
サブキャラシナリオに行くかどうかを選ぶ時点でメインシナリオを一回終えているわけだから、メインシナリオ、あるいはメインキャラたちがどんな状況にあるかをプレイヤーは把握しているわけだよね。
D
まあそうだね。
T
なのに何でサブキャラを選ぶわけよ?
D
は?
T
メインシナリオで遥や水月が孝之をどれほど必要としているかは明らかになっているわけだよね?なのになんでそれを裏切るような選択をするわけ?
D
いやまあ前とは違う展開を見てみたかったとかそんな理由じゃないかと…ってゆうか別にゲームなんだし選んでみるくらいえーやんw攻略のためにやっていくこともあるわけだしさ。
T
そう、多分そういう軽はずみな気持ちで、もしくは攻略のために選んでいるわけよね。さて、じゃあ話を戻すけどさ、何でサブキャラシナリオって問題なんだっけ?
D
だから内容だけでなく孝之の行動が支離滅裂なんで、それが孝之の人物像を見えにくくし、その結果君望全体の評価を下げるから、だろ。
T
「支離滅裂」って例えばどうゆうの?
D
あれだけ遥のことを気遣ってたのに面と向かって「あの子(=まゆ)は重荷にならない」とか言い放ったり、蛍の意味不明な誘いに乗ってラブホに行ったり、○○った(自主規制)口を穂村に吸いださせたり(このへん記憶が完璧じゃないが)といくらでも例は挙げれるぜ。
T
後の二つってそうしたのは誰だ?
D
ハァ?孝之に決まってんじゃん。
T
じゃ聞き方変えようか。その展開は強制的なものですかね?それとも選べたんですかね?
D
そりゃ両方とも選べるわな。こんなのが強制だったら終わってるよw
T
選んだのは誰?
D
そりゃプレイヤーでしょ。
T
そうだよ。「ありえない」と思うような選択肢を選んだのはプレイヤー自身なのさ。だったら、ありえない選択の後にありえない展開が待ってるのは必然じゃないの?まさかとは思うけど、穂村に汚物のついた口を彼女の口で綺麗にまでさせといて、さあそれは忘れて遥や水月のことを考えよう、なんて展開になると思ったのかね?だとしたらはっきり言ってやるけどそいつは頭がオカシイよ。だって自分でオカシイと思ったことを選択したのにオカシな方向に話が進まないって考えてるんだもの。ちなみに言っておくと、孝之のそういう突飛な行動をおかしいと思わないならサブキャラシナリオの批判は成立しないし、逆におかしいと思うならその選択を自分自身が選んだって事実をちゃんと考えるべきじゃないのかね?
D
回りくどくてよくわからんのだけど…
T
サブキャラシナリオにおける孝之の行動が支離滅裂だって言うけど、そういう行動を選んだのはプレイヤー自身で、レビューとかではそういう「共犯関係」が不思議に思えるくらいに綺麗さっぱり忘れられているのはどうしたことだろうね?って言ってるのさ。
D
そりゃ各々のシナリオがある以上きちんとした展開とか必然性を求めるからじゃん?
T
今回はメインテーマじゃないけどさ、何で孝之って「ヘタレ」って言われるんだろうね?
D
遥か水月か選ぶ決断力がなくてうじうじと悩んでいるからじゃないの?
T
てゆうことは、どちらかをきっちり選ぶことが「正しい」って認識しているんだよね?とするなら、それと相反するような選択をすれば、話がおかしな方向に行くことぐらい薄々わかってんじゃねーの?だったら、サブキャラシナリオに疑いも無く必然性を求めること自体がそもそもおかしい。「孝之=ヘタレ」の認識と矛盾しているよ(そこから逃げることを自分で選んでいるのに、選べない孝之をヘタレと言ってるんだからね)。あと念のため言っておくけど、蛍シナリオ以外は全てのサブキャラシナリオがバッド扱いになっているから、製作者側がメインシナリオをあるべきものでサブキャラのそれを本筋から逸脱したもの(こういうのもアリだろ、というようなマルチエンドの一つではない)としてきちんと演出していることも考慮に入れるべきだね。
D
要するに、批判が一方的だと?
T
というか身勝手だよね。まあそんなんだから君望のレビュワーが時々書く「共感」とか「感情移入」とか全く信用しないわけだけど。お前らそう言うけど、それってオカシイと思いながら、どうせやり直しはできるんだしとサブキャラを選べる程度のものでしょ?それのどこが孝之の(罪悪感や責任感を含めた)想いに寄り添っているんだろうねえ、ってね。何でこうも「わかっていないことがわかってない」のか不思議でしょうがないよ。
D
まあその話題は次回やるとしてさ…そろそろまとめようぜ。
T
そうだな。
サブキャラシナリオは内容的に非常に問題が多いのは否定できない事実。ただし、プレイヤーが共犯関係にあること、蛍や穂村シナリオのように異常な選択肢を入れることでプレイヤーへの(おそらく)忠告を行っていること、エンディングは基本的に全てバッドエンドにしてあること、なども含めれば単純に否定できるものではない。ただ、そういった意図がプレイヤーに伝わりにくい構造になっているので、あゆ・まゆシナリオはなくし、穂村・星乃の懲罰的エンドと「望まぬ死」という重要な要素を含む蛍シナリオのみにする、というのが俺の提示する代案。まあこれは前に言ったことの繰り返しだけどね。
D
とすると、追加するよりはむしろ削る方が大事なわけね。
T
そうそう。だから、買ったはいいけどLatest Editionは進まないわけど…w
D
あーね。で、次回は「感情移入」の問題だよね?
T
むしろ「孝之の受容の仕方」と言うべきかな。「サバイバーズ・ギルト」「ベタな受容」「マリー=アントワネット」あたりをキーワードに進めていくことにしましょ。
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