「恋愛力の低下」が少子化に繋がっているとはこれいかにwww

2023-03-05 11:26:26 | 生活

「年収800万の男性は普通」と言っているのは、(希望ならともかく)平均年収のデータを知らない・見れない頭の悪い人だなという話だが、まあそれも個人ならしゃーないわという気がする。

 

とはいえ、これと似たような事を政治家が公の場で堂々と発言しているのを見ると、驚愕を通り越して笑ってしまうのは私だけではないだろう。例えば荒川和久の「『少子化は恋愛力の低下?』 恋愛力を下げても、むしろ出生率は下がる」を見ると、18-34歳の未婚男女で恋人がいる割合を見た場合、1982年では男性が20%強で女性が25%弱、2021年では男性が20%弱で女性が30%弱(コロナ禍なのに!)となっている。

 

正確には、1982年以降多少の上下はあるものの恋人がいる割合は男女とも概ね2005年がピークとなり、それから下がって今は1982年の水準に戻った、という事もできる。そして1982年の出生率は今より高かったし、恋人がいる割合が一時的に増えている時期でも出生率は下がり続けていたので、某政治家の発言は成り立たないと言える。以上。

 

では、当時と今では恋愛と結婚の間にどんな断絶があるのか、という点については、前掲の記事で見合い結婚といった「お膳立て」、あえて言えば「『恋愛弱者』にとっての上げ底システム」が機能しており、そのような環境=前提条件が無くなった今は、恋人のいる割合が当時と同じでも(つまり「恋愛力」という意味では相違が見られなくても)、それが同じ成婚率を意味しないという話である(ついでに言っておけば、経済衰退や賃金の停滞、そして東アジアにおける科挙的競争社会と少子化の話で述べたように、子ども教育費が以前よりかかるようになっているため、結婚しても以前より2人以上産むモチベーションが低くなっているのは、合理的選択の結果という意味で当然の事と言える)。

 

やや飛躍した言い方をするなら、これは所謂「昔は良かった」的発想の変奏と考えることができる。すなわち、当時の犯罪率や公害といった諸々の問題(具体的なデータ)から目を背けつつ、ただ今の不満・不安を元にノスタルジーで過去を理想化して騙るというあのやり口だ(「ALWAYS的なる眼差し」と言ってもいいだろう。そういう幻想を飲み屋の雑談で語るのは個人の自由だが、公の場でするのなら検証が必要だろうという話)。ともあれ、こういう思い込みが政治家レベルで広く共有されているなら、まあ問題が解決しないのはもちろん、解決策もピントがズレているのはむべなるかなと言うべきだろう(ちなみに「男性は女性に奢るべき」という発言をする人間が一定数いて、かつそれが一定の支持を得ているのは、同じ現象の裏表に過ぎない)。

 

私は前に意図して2chのまとめ動画を複数掲載した記事を書き、そこでは根拠のない思い込みや印象論が幅を利かせていると述べたが、冒頭に述べた「年収800万は普通」という認識が(基本情報すら調べていないという意味で)愚かではあると思いながらも無邪気には笑えないのは、こういう幻想がそこここに蔓延っており、かつそれを検証しようという慎重さ・戒めを持っているように思えないケースが大半であることによる(つまり、「その程度しか危機意識を持っていない」とも言える。まあもっとも、根拠なき危機意識は戦前の原理日本社的ヒステリーしか生み出さないので、それはそれでご遠慮願いたいところだが)。

 

その様子を見ると、今毒書会で読んでいるマンハイムの『イデオロギーとユートピア』で述べられている視点が、今でも同じく通用すると強く感じるわけだが、ともあれ現実の大勢は、一度死屍累々にならないと変革は極めて難しいなと思う次第である。

 

ちなみにじゃあどんな方策があるのか?という点について、一つの視点としてシングルマザーや婚外子の保護について述べた宮台真司の動画の切り抜きを掲載して終わりとしたい。

 

 

 

 

なお、動画では「恋愛からの退却」という言葉が出てきて上の話と矛盾するように思えたり、あるいは「恋愛から退却しているのにいずれは結婚するつもりと答える人が多いってどういうこと?」と疑問に思うしれないが、ここに「かつてあったお見合いという上げ底システムと、それが機能しなくなった時代」という要素を組み込むと話が一気にクリアになるし、全く矛盾してもいないことを申し添えておきたい。

 

また、私なりに付け加えるなら、お見合い的システムがすでに復活しようもない以上、現行のシステムで少子化を解消するなら恋愛結婚を増やすしかなく、それは即ち恋愛強者を増やすしかないことを意味するから、「恋愛からの退却」は危機的であるし、それでは少子化は解消しようもないという結論になるのは必定だ(何度も強調しておくが、恋人がいる割合は変化していないという意味において恋愛力なるものは低下していないが、恋人がいない層でも結婚できるシステムの有無が過去と現在の違いを生み出しているのである)。

 

さらに言えば、お見合いシステムの穴をマッチングアプリが埋めるようになった結果、ますますスペック志向に拍車がかかり、それが非現実的な条件設定を促進してそもそもカップリングの成立を阻害することになっていることにも言及されている。これが恋愛力以前の問題で、言葉通り「足切り」という現象を生み出し、結婚という観点においては大勢で見た場合アンマッチと閉塞につながっていると言えるだろう(これまたある種の合理的選択が、却って事態を厳しい方向に向かわせていることに注意する必要がある)。


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