森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

シキミ(シキミ科)

2006年04月07日 | 自然観察日記
 鎌倉の古刹の庭で見つけた、非常に懐かしい思い出のある樹木である。以前、静岡に住んでいたことがあるのだが、ちょっとしたお寺や照葉樹の森にはときどき見かけたからなじみの深い樹木である。
 当時は常緑のモクレン科の植物で照葉樹林の構成種くらいの感覚で理解していた。確かにかってはシキミはモクレン科に分類されていたが、最近はシキミ科として独立させているようである。分類の科学的な進歩があって考え方が統一されたのだろう。
 シキミは「悪しき実」からきたこととか、常緑のモクレン科の植物で極めて有毒な植物であることは認識していたが、今回少し調べてみたら、いろいろなことが判り、今までの勉強の浅さを反省している。
 まず、シキミを炙ると独特な臭いがして(「抹香臭い」とはシキミの臭い)、死体と一緒に焼いてその臭いを消すのに使ったという。今の世のように消臭剤というものがなかった時代の生活の知恵であろうか。そう聞けばお寺に多いのも頷けるというもの。連想で、越後などのシキミが自生しない地域は何で臭い消しをしていたのかも気になりだした。機会があったら調べてみることにしよう。
 それから、実が香料の八角に似ているため、欧米人が日本のシキミの実を集めて持ち帰り多くの中毒事件が起こったこともあったとか。そういえば、以前日本でもこのシキミの実を口にして中毒事件が起こったということがあったはずである。品のいい花にしてはそぐわない猛毒を持つ実なのである。