森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

オオウバユリ

2014年12月03日 | 自然観察日記
栂の森駅に降り次のゴンドラに乗るまでの平坦な道は亜高山の植物を観察するにはもってこいの場所。針葉樹を交えた混交林でたっぷりとした時間があれば思い切り散策したい場所でした。残念ながら同行所もおられましたから私のわがままは通用しません。歩き始めて真っ先に目に飛び込んできたのがオオウバユリのしっかりとした個体。均整の取れた草姿は立派な芸術品に匹敵します。このときはまだつぼみが微かにわかる程度の成長段階で「姥」どころか「乙女」といった風情です。

オオウバユリの花

2014年12月03日 | 自然観察日記
三週間後再び栂の森駅に立ちました。先日見たオオウバユリは立派な花を咲かせていました。ユリの花は「美人」の代名詞的存在なのですがオオウバユリはどうもその範疇には入っていないようで山野にあっても幸か不幸かあまり乱獲されることがない存在です。きっとオオウバユリにとっては都合のいいことなのでしょう。あまりあでやかでない花が存続の危険を免れています。とはいっても私にとっては興味深い種です。ユリ属ではなく開花株は次年度花を持ちません。毎年開花するわけではないのです。里山でもたくさんの個体が見られますが、感覚的な話ですがこの開花するまでの開花年数は実生なら5年は必要な気がします。
ところで、オオウバユリは太平洋側低山に産するウバユリの変種で日本海側に生育するもので、花数は多く大型の種と位置付けられます。多くは高海抜の地域に自生するという捉え方ですが、新潟などでは低地にも普通に自生しています。つまり、日本海側の種は低海抜から高海抜まで垂直分布範囲が広いのが一つの特徴のように思います。同じように感ずるのはユリ属のクルマユリでこの種も新潟などでは低海抜でも結構普通に見られます。

オオウバユリの花拡大

2014年12月03日 | 自然観察日記
派手さはないのですが、横向きの大きな花は人目を引きます。山菜として食べた人がいて、「不味かった!」とおっしゃっておられました。ユリ根のようにはいかなかったようですが、文献では救荒植物として挙げられていていざというときに根からでんぷんを取り出して食料にできるようです。決して増殖力の旺盛な種ではありませんので人気化すると一気になくなるような存在です。里山ではあまり人が寄り付かないような環境下で静かに暮らしています。