亜高山の植物という感じの植物で樹林帯の林床で見かけるユリ科の小さな花です。竹の葉に似ていて筋が縞模様に見えるから「タケシマ」なのだそうです。ユリ科の植物はしばしば「ラン」と表現されるのですがこの種もその類なのだろうと思っていますが、なぜユリ科の多くが「ラン」と言われるようになっているのかについては分かりません。秋に赤い実をつけるころになると目立つかもしれませんが、花は下向きで小さく色も人の目線から見れば白っぽくとても控えめ。でも、この花に出会うと日常から離れて異次元の世界に踏み込んだ気がします。
控えめな花を見るためにちょっとひっくり返してみました。結構おしゃれな花で白緑を基調にしながらも濃紫の斑点模様と葯の白さが印象的です。1節ずつ花柄は素直に伸びて先端に1つの花をぶら下げます。花弁の反り返りが面白いですね。それに、葉は茎を抱かないのが特徴とされます。
花弁は幾分丸みを持っています。4数性の花には違いありませんが、柱頭の形が「棍棒」ではなく「球」に近い構造で、この性質を持つのはイワアカバナだけなのだそうです。柱頭の形が決め手ですね。栂池自然園にはいくつかのグループで似た種が混在するエリアになっていて、高山帯だから「○○」と決めてかかると大きな間違いが起こってしまいます。
実は昨日のミヤマアカバナと区別がつかなかったアカバナを見ていました。このアカバナは湿原内に生育していたものです。家で調べて、イワアカバナと判断。一見同じようでもまず雰囲気が違います。葉の形状も明らかな差異があります。ミヤマアカバナよりは生育範囲は広い種で山地の湿地などに自生するとありました。
楠川の河原にアカバナの一種が花を咲かせていました。家で調べミヤマアカバナと判断しました。全体的に小型の種で可憐さを感じさせます。筋の入った薄い桃色の花も自生している周りの岩などと調和していかにも高嶺の花の風情。タネツケバナのような長い果実になります。
4数性の花です。花弁の中央に切れ込みがあります。アカバナの仲間の多くが柱頭の形が「棍棒状」をしているのが特徴ですが、この種も棍棒状でした。花の大きさな終りに柱頭の存在が異様に目立つ変わった花なのです。高山帯の湿気の多い場所に生育する種です。
池の中に見慣れない草が生い茂っています。すぐには種名を思い出さなくとも大体の見当はつけられるという思い上がりがありましたが、この時だけは皆目見当がつきませんでした。複葉の草本、それも水の中に生えている水草・・・。頭の中の図鑑を、どこをめくっても該当するものが出てきません。まったく行ったこともない地域の話ならよくある話でいいのですが、栂池自然園はそれでも過去に訪れている場所。まだまだ知らないことが多すぎるということを痛感した次第です。
二度目に訪れたときの様子です。雪解けの水も落ち着き葉も茂りさすがに水面は見えなくなっていて3週間前の様子が一変していました。この間に正体を調べておきましたから、今はクロバナロウゲと分かります。しかし、まだ葉ばかりの季節で花はもとよりつぼみも見つけられません。もう少し近くに寄れれば探したのですが、如何せん人目のある木道で、湿地に降りて数メートルは進まなければなりません。近くに観察できそうなところはないかと探したものの断念せざるを得ません。脇にある青い小さな花はタテヤマリンドウです。
せめてできることは倍率をあげての写真撮影。バラ科の草本で湿地に適応した高山種。花は8月に入ってからで、赤黒い魅惑的な花が咲くのだそうです。見たい~!次回はこのクロバナロウゲの花の季節にここを訪れることにしようと決めました。
山でつまむと最も美味しい実はノウゴウイチゴではないでしょうか。亜高山帯以上の比較的水はけのいい斜面に群生していることが多くい野生のイチゴです。登山にいそしんでいたころは重い荷物を背負っていたもので、このノウゴウイチゴ自生する場所に差し掛かると荷を下ろし何度となく実をついばんだものです。実の季節に登山する機会が多かったので、花の季節はほとんど知りません。今回はそれほど大きな群落ではなかったものの花を観察できたのは幸運でした。
花を見ればイチゴの花と分かります。しかし、どこか違います。花弁が多いのですね。バラ科の花の基本形は花弁は5枚なのですが、このノウゴウイチゴの花弁は7枚もあります。花弁が多いところがノウゴウイチゴの大きな特徴になっています。果実は7月下旬から熟します。小粒でもとにかく甘味が強く美味しいイチゴです。私の一押しですね。
栂池自然園に入るまでの道路わきにはテングクワガタがたくさん咲いていて、さぞ訪れた人を歓迎してくれているような風情です。高山植物の図鑑などで取り上げられる花ですが、ここまで多いとどうでもいい雑草の感覚です。そう言ってしまうと大変失礼な気がするのですが、それほど多いのにあきれてしまった次第です。オオイヌノフグリを連想するような青く小さな花です。
小さいけれど近くで見ればなかなか美しくいい花です。でも、幾分地味ですがオオイヌノフグリとよく似た花です。両種ともゴマノハグサ科で同じ属ですから当然と言えば当然です。しかし、テングクワガタは純粋な在来種で高地に自生する種です。