(画像はDrillspinより)
朝から終日雨となり、近くの県道が通行止めとなる。これ幸いと早坂暁のドラマ「夢千代日記」5話を一気に観る。早坂暁は先月88歳で亡くなったが、彼の市井の優しいまなざしがいつも感動を呼ぶ。
ドラマは原爆後遺症に悩む主人公夢千代に吉永小百合、訳あり芸者の秋吉久美子・樹木希林、刑事の林隆三・中条静夫などそうそうたる配役。ケーシー高峰のニセ医者も泣かせる。
雪と寒風、日本海の荒波を背景とした温泉町に寄り添う訳ありの人生。それぞれの境涯を知っていくにつれ、涙腺が緩んでいく。早坂暁の共感力は、爆心地広島の死の地獄を見たこととそこに赤ん坊の泣き声という生命の誕生を聴いたことにある。
エンターテインメント重視のドラマが横行する現在のドラマのなかで、ひたひたと人間のもの哀しさとおかしさを奏でる早坂流ドラマツルギーはブラウン管?からすっかり喪失してしまった。
演出した深町幸雄が手掛けるドラマもそうした人間の葛藤と共感とを共有させる深さがある。彼もすでに他界してしまい、彼を引き継ぐ演出家がいなくなってしまったのは、時代なのだろうか。