前日の「三菱GTO」車の近くに似たような図体のニッサン「セドリック」があった。日本の自動車がアメリカに・世界に追いつこうという意気込みが感じられる名車だ。一般庶民からすれば垂涎の高価な高級車だった。高度成長に奔る1960年に発売され、2004年の販売中止になるまで10代目を更新した。
また、エンブレムには戦前の1910年代から流行した立体エンブレムもある。最近のニッサンのエンブレムはほとんど横文字の「NISSAN」しか見られない。その意味では、往年のエンブレムが個性的で懐かしい。
立体エンブレムは、交通事故のさい危険をともなうとして2001年の法規制により、すっかり路上から消えてしまう。ただし、ベンツやロールスロイスなどでは立体エンブレムに触れると車体内に格納される仕組みが導入され、一部ではまだ生きている。
セドリックのエンブレムはどうやらニッサン「グロリア」のエンブレムを二つに分解して再構成したようだ。グロリアは前皇太子・美智子妃のご成婚記念の鶴マークを採用したようだ。このエンブレムでもアメリカ車デザインの影響がまだぬぐい切れていない。
「セドリック」は、バーネットの『小公子』の主人公の名前だが、ニッサン社長の川又克二氏の命名だという。最近のニッサンは独自のエンブレムがないのが残念でしょうがない。会社の再建でそれどころではないという余裕のなさからだろうか。小さな会社から合併による合理化などを経て巨大企業に成長した裏には失ったものもあるのかもしれない。それの象徴がルノー合併劇や不祥事にも感じられてならなかった。
思い入れや心意気がシンプルに表現できるエンブレムに技術者魂が表現されるのではないかとかねがね思っているのだけれど、ぜひ実現してもらいたいものだ。