和宮様が突然「二年前に作った渋皮煮がまだあるはずじゃが」と言って、ゴソゴソ食器棚の奥に手を入れていた。そして「久しぶりに見つけたのでそちに下賜することにする」というわけで、恐れ入りながら固い蓋を開けていただくことにする。
いやあ、びっくり。二年前なのにもかかわらず、味は全く落ちていなかった。ついついお代わりをしてしまう。それもそのはず、何しろ『日本書紀』に出てくるほどの歴史ある献上物なのだ。朝廷や幕府はことのほか喜んだのに違いない。有名な丹波栗が参勤交代などで全国に普及。贈答品などに使われる高級マロンとなった。
それもそのはず、これを作るには覚悟が必要なのだ。渋皮を傷つけないよう外の鬼皮を剥いていく。さらになんども煮込んだりの慎重な手間が次々続いていく。和宮様も「今年は体調がいま一つなのでやらない」とおっしゃっていたが、相手の喜ぶ顔をみるとついはじめてしまったようだ。
渋皮はポリフェノールが豊富であるのが明らかにされ注目されてきた。しかし、質量ともに優れた丹波の栗は1500t(昭和54年)から60t(平成18年)くらいまで生産量が下がってきていると報告され、生産量が激減している。手間がかかるので担い手不足が深刻となっている。わが山の栗も老齢な丹波栗なのでしかと賞味したいと思った次第だ。