戦場でワルツを
2008年／イスラエル＝フランス＝ドイツ
アニメーションにする理由
総合
20点
ストーリー
0点
キャスト
演出
ビジュアル
音楽
パンフレットによればこの作品はゴールデングローブ賞やセザール賞の最優秀外国語映画賞など数々の賞を受賞している。事実を元にしていることやドキュメンタリーとアニメーションの融合という斬新な映像表現が評価されているようだが、以下に記す通りに私はこの作品を全く評価しない。
まず私が理解できなかったことはこのドキュメンタリーであるはずの作品が何故わざわざアニメーションにしなければならなかったのか、最後まで観ても分からなかった。一説によるとあやふやな記憶とアニメーションという表現方法の相性が良いということらしいが、アニメーションという表現方法はそんなにリアリティーの無いものだっただろうか？ アニメーションもずいぶんとナメられたものである。原題『Waltz With Bashir（バシールとワルツを）』とあるように虐殺の誘引となったバシール・ジェマイエル（Bashir Gemayel）というレバノンの指導者を、例えばチェ・ゲバラのようにあえて‘偶像化’するための手段としてのアニメーションであるのならばまだ納得もできるが、この作品において作品の質を上げるためにアニメーションにする理由は全く見当たらなかった。
では何故このドキュメンタリーはアニメーション化されたのであろうか？ はっきり言ってしまえばイスラエル出身のアリ・フォルマン監督が現実を直視できなかったからだと思う。９０分も現実を直視できなかったためにラストに申し訳程度に実際のサブラ・シャティーラの虐殺のニュース映像が使われたのである。だから私はこの作品が数々の映画賞を受賞していることが‘ガス抜き’の役割を果たしてしまうのではないのかと危惧するのであるが、申し訳程度であっても実際の虐殺後のニュース映像が少しでも多くの人に観られるだけでも価値があるという苦渋の判断による評価である。
カート暴走のＴＢＳスタッフ、“要注意人物”だった！(夕刊フジ) - goo ニュース
それにしても最近のＴＢＳのカメラマンの傍若無人ぶりには驚かされる。１１月１２日
にも市橋達也容疑者が送検される際に警備の機動隊員を突き飛ばして写真を撮ろ
うとしたＴＢＳ社員情報制作局ディレクターの代田直章容疑者が公務執行妨害容疑
で現行犯逮捕されたばかりである。そして今回もカートを運転したのは大会を中継
するＴＢＳが委託する制作会社の男性カメラマンだった。確かにＴＢＳには危機感が
あるのだろうし、その無謀さがたまにヒットして内藤vs.亀田戦の今年最高視聴率を
たたき出したのであろうが、番組１本の大ヒットのために関係のない他人を危険に
巻き込むような番組作りはいずれ局の存亡にかかわる多大な代償を払うことになる
だろう。
ジェイン・オースティン 秘められた恋
2007年／イギリス
恋愛の‘成就’のあり方
総合
ストーリー
キャスト
演出
ビジュアル
音楽
１７７５年生まれのイギリスの作家ジェイン・オースティンが２５歳の夏に体験した生涯唯一の恋が描かれている。相手は実在した、のちに裁判官で政治家になるトーマス・ルフロイ（Thomas Lefroy）であるが、実際の２人の関係はこの作品で描かれているような情熱的なものではなかったようである。ジェイン・オースティン自身の生涯が派手なものではなかったので、描くことが難しいのであるが、ジェインの願望のフィクションとしてよくできていると思う。１８０２年にジェインにプロポーズした唯一の実在の人物、ハリス・ビッグ＝ウィザー（Harris Bigg-Wither）の名前がミスター・ウィスレー（Mr. Wisley）と変えられている理由は、フィクションであることを示すためであろう。
３人の関係は正にジェイン・オースティンの小説のように上手くかみ合わず成就しないまま終わってしまうが、結果的にそれぞれ功成り名遂ぐのであるから、恋愛の‘成就’のあり方というものを考えさせられた。
