MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ウルトラQ あけてくれ!』

2015-07-14 00:14:31 | goo映画レビュー

原題:『ウルトラQ あけてくれ!』
監督:円谷一
脚本:小山内美江子
撮影:内海正治
出演:佐原健二/江川宇礼雄/桜井浩子/西條康彦/柳谷寛/天本英世
1967年/日本

自分の居場所が分からなくなる恐怖について

 主人公の万城目淳と江戸川由利子がドライブ中に道路の真ん中で倒れていたのは会社員の沢村正吉で、「あけてくれ!降してくれ!」と叫びながら走ってくる列車に飛び込もうとする沢村を心配して2人は一の谷博士の研究室に連れていく。
 催眠術療法によると沢村は空飛ぶ列車に乗っており、そこには車掌を初め、主婦、政治家、受験生と共に著名な推理作家の友野健二がいて、列車は自分たちが行きたいところに向かっていると言う。窓の外を見ると沢村は妻のトミ子や幼い娘の恵子がおり、一緒に連れてってくれと懇願していた。思わず沢村は「あけてくれ!降してくれ!」と叫んだのだった。
 しかし現実に戻って自分を迎えに来てくれたトミ子は体裁の悪さを難詰し、既に大人になっている恵子は喧嘩する2人を非難する。退社時間になってから会社に戻ると自分を心配してくれる様子もない上司にも怒られ、ビタミン剤を渡され帰りたまえとつれなくされる。会社でさえもはや入社した当時の居場所ではなくなっており、「お世話になりました」と言って出て行ってしまう。
 ラストで空飛ぶ列車を見つけた沢村は「連れてってくれ!」と叫ぶのであるが、このストーリーの秀逸さは一度は列車に乗っていながら、自分の「正しい」居場所は今の居場所だと思い込んで戸惑ってしまい降りてしまうところで、実は多くの人々は昔の善き日々を重ねながら今を見て知らず知らず我慢して生きているのである。そのことに気がついた時の恐怖は並々ならぬものがあるだろう。この人間心理の絶妙な描写に脚本を担った小山内美江子の才気を感じるのである。


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