原題:『The Monuments Men』
監督:ジョージ・クルーニー
脚本:ジョージ・クルーニー/グラント・ヘスロヴ
撮影:フェドン・パパマイケル
出演:ジョージ・クルーニー/マット・デイモン/ビル・マーレイ/ケイト・ブランシェット
2014年/アメリカ
全く盛り上がらない「争奪戦」について
第二次世界大戦の最中に、ナチス・ドイツ軍によって奪われた大量の美術品を取り戻すために結成された「モニュメンツ・メン(The Monuments Men)」と呼ばれる部隊は戦闘経験の無い美術の専門家の集団であり、そのような部隊が戦場で巻き起こす出来事が面白おかしく描かれるはずなのであるが、全くスリルを感じない。
例えば、ミケランジェロ作『聖母と子供(Madonna and Child)』像を追っていたドナルド・ジェフリーズが呆気なくドイツ兵に銃殺されたり、間違って地雷を踏んだまま動けなくなるジェームズ・グレンジャーを助けようと悪戦苦闘する仲間たちを尻目にしょぼい爆発で全く怪我もなく助かってしまう。ラストもその『聖母と子供』像を見つけたフランク・ストークスたちがソ連兵が来る前に運び出そうとするシーンもショットを重ねてスリリングに演出することがないため、例えば『戦略大作戦(Kelly's Heroes)』(ブライアン・G・ハットン監督 1970年)を観るように観客が手に汗を握ることがないのである。
さらに不思議なシーンは、ドイツ軍によって「退廃芸術」としてピカソや印象派の画家の作品が焼かれるのであるが、何故かその中にラファエロの『若い男の肖像(Portrait of a Young Man)』も燃やされており、演出意図がよく分からない。
このように映画的な面白さも歴史的精確さも中途半端で、『アルゴ』(ベン・アフレック監督 2012年)のように上手くいってはおらず、少なくともジョージ・クルーニーが監督でなければどちらかの価値を備えていたように思う。
(『戦略大作戦』のラストシーン。
何故美術専門家の集団にこのようなユーモアがないのだろうか?)