goo blog サービス終了のお知らせ 

MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『リトルプリンス 星の王子さまと私』

2015-11-29 00:41:14 | goo映画レビュー

原題:『The Little Prince』
監督:マーク・オズボーン
脚本:イリーナ・ブリヌル/ボブ・パーシケッティ
撮影:クリス・カップ
出演:ジェフ・ブリッジス/マッケンジー・フォイ/レイチェル・マクアダムス/ジェームズ・フランコ
2015年/フランス

「Werth」が「Worth」でない理由について

 主人公の女の子と彼女の母親の2人がワース・アカデミー(Werth Academy)の入試に失敗した原因は、彼女たちが予想していた質問と違うことを選考委員に訊ねられたためなのであるが、その「What will you be when you grow up?(大きくなったら何になりたい?)」という質問は何故か2人が待っている廊下の壁に書かれており、その模範解答である「Essential(不可欠な人間)」まで書かれている。その前に、冒頭で主人公の女の子が住んでいる街並みが上空から映し出されるのであるが、その配電盤のような精確性や、その後、女の子の母親が娘のために作ったスケジュールボードの「美しさ」に無駄なものを徹底的に排除しようとする社会の傾向を感じる。
 ではその「無駄」なものとは何かと考えると、例えば、女の子の隣に住んでいる老飛行士だったり、彼のポンコツの飛行機だったり、動物のキツネだったり、いずれ枯れてしまうバラだったり、何よりもまだ社会の役に立たない女の子自身が役立てるようになるために学校に行くのである。
 「大切なものは目に見えない」という有名な言葉の真意は、人は社会をより良くしようと目に見えるものを改善して価値を高めていくのであるが、そこには必ずふるいにかけられ捨てられてしまうものが出てくる。しかしそれは目に見えないため人は気がつかないまま見逃してしまうのである。
 老飛行士が語った物語の悲しい結末に納得できなかった女の子が飛行機でたどり着いた場所は「大人の星」であり、そこには大人になってしまっていた星の王子が清掃員として大人にびくびくしながら働いていた。女の子は星の王子と、ビジネスマンが一人で貯めこんでいた星々を解放する。星の王子が愛したバラは枯れたものの、太陽の中でバラのイメージを見いだした星の王子は再び子供に戻る。
 そしてラストは女の子がワース・アカデミーで学んでいる姿が映される。既に質問と答えが壁に書かれてあったように実は全ての受験生に門戸は開かれていたのである。「Werth」が「Worth(価値)」の「なり損ない」であるとするならば、女の子は「無駄」なものを学んでいることになり、「Essential」とは「不可欠な無駄なもの」と捉えられ、そのストーリーのひねり方が上手いと思うのである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする