MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『なにはなくとも 全員集合!!』

2017-11-01 00:40:56 | goo映画レビュー

原題:『なにはなくとも 全員集合!!』
監督:渡辺祐介
脚本:渡辺祐介/石松愛弘
撮影:堂脇博
出演:三木のり平/いかりや長介/加藤茶/仲本工事/荒井注/高木ブー/中尾ミエ
1967年/日本

 交通事故とタバコの時代について

 ストーリーの中心は草津を舞台とした、西武バスと草津高原鉄道の間に起こった旅行客の奪い合いである。振興の西武バスに押され気味の鉄道会社は昭和42年7月10日付で草津高原鉄道株式会社社長の大塚周三郎から辞令を受けた白坂栄造を駅長に迎えて起死回生を図る。白坂はしばしば例えば「But let us begin(とにかく始めようではないか)」というアメリカの大統領だったジョン・F・ケネディの言葉を引用するのだが、テレビの学園ドラマ『飛び出せ!青春』(1972年)の合言葉も「レッツ・ビギン Let's begin!」で当時の日本におけるケネディの人気の高さがうかがえる。
 西武バスと草津電気鉄道の競争は実際にあったものだが、1962年に草津電気鉄道は全線廃止になっており、映画が制作された時点ではバスのみ運行されている。不思議なのはこのような映画を制作する目的は地元の観光誘致だと思われるのだが、それにしてはストーリーが粗っぽくて、特にバスが人身事故を起こしたシーンなどもあって、今では考えられない展開なのである。いくら作品冒頭で「この映画は湯の町草津を舞台とした架空の物語であり実在のモデルはありません」と断っていても「西武バス」と実在する名前を使用していることでアウトだと思うのだが、ドリフターズの当時の人気を考えるならばそれでも映画にしてもらえれば良かったのかもしれない。
 さらに酷いシーンはバス会社の社員と鉄道会社の社員が大喧嘩をして留置所に一緒に入れられた際に、一本のタバコを巡って再び大喧嘩になるのであるが、今から見るとまるでマリファナの奪い合いのように見える。このコメディ映画は今となっては全く面白くないのだが、風俗史的な観点から見ると当時のタバコのあり方の描写など興味深いシーンは多々ある。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする